なんて無謀な恋をする人 | ナノ

そこからはキスの嵐で、自分でいうのも何だけど、ものすごく甘ったるい空気。
ユースタス屋は俺がすき(かも、だけど)と言ったことにひどく機嫌をよくしたらしく、いうなればいつも通りのユースタス屋に戻っていた。
それはもちろん俺も同じで。
べたべたと引っ付くユースタス屋に暑いから離れろと肩を押す。それでも離す気配のないユースタス屋に諦めたようなフリをして、でも内心ではちょっと嬉しかったりして。俺もなかなか現金な奴だ。

ちゅっと、額に、頬に、瞼に、そして唇に触れるユースタス屋の唇は擽ったくて、でもどこか甘くて気持ちよくて、ずっとこうしていたいような気持ちにさせる。少しお互いの気持ちが分かって触れる態度が変われば拒みもしない、なんてやっぱり俺は現金なやつだなと思った。

「なぁ、ユースタス屋」
「ん?」
「なんで急に触らなくなったりしたんだ?」

これを聞くのは少し恐いけど、でもやっぱり理由を知りたくて、俯くと小さく呟いた。それにユースタス屋は唸るだけであまり答えようとはしない。やっぱりはっきりしない俺に呆れて、とかマイナスな方へ行きかけている思考回路を知ってか知らずか、ユースタス屋はまるで安心させるみたいにしてキスをくれるものだから、敵わないなとその瞳をじっと見つめた。

「それは…」
「なに?」
「…お前が嫌がるなら触れないでおこうと」

どこか言葉尻を濁して言ったユースタス屋に、一瞬理解できなくて目を瞬かせた。だって俺はてっきりあの俺の態度に呆れたものだとばかり思い込んでいたから。あの押すことしか知らなさそうな強引なユースタス屋がそんなこと出来るなんて。そう思ったときには思わず噴出していた。

「笑ってんじゃねェよ」
「悪い…っ、でも、まさかお前が…そんなこと考えてたなんて…っ」

ふるふると肩を震わせて言葉を紡ぐとユースタス屋はムッとしたように唇を尖らせた。
お互いの思いの行き違いに馬鹿だなと思いつつも、でも俺はそんなユースタス屋の押して駄目なら引いてみろ(ちょっと違うかもしれないけど)にまんまと引っ掛かった訳で。やっぱり馬鹿だと一頻り笑うと笑いすぎだろとユースタス屋に怒られた。


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