至極真面目にそう聞くと、ユースタス屋は、え?今更?みたいな顔をしてみせた。
…いや確かに自分でもいまさら感はあるけれども。でも本当にふと、いま疑問に思ったんだからしょうがない。逆に今まで普通に受け入れてた自分がちょっとよく分からないぐらい。
「…お前やっぱり知らないんだ」
「は?なにが?」
「いや、こっちの話。…つか俺、お前と同じ大学なんだけど」
あ、もう死んでるから、だったんだけど、か。
テレビを見ながら暢気に言ったユースタス屋の横顔をまじまじと見つめる。
…え、嘘。マジで?
「嘘だろ」
「嘘吐いてどうすんだよ」
「え、だってお前…頭良かったの?」
失礼だけどそうは見えません。
だって俺の通ってる大学って結構頭いい方の大学。だからこんな不真面目そうな奴が入れるとは思えない。(ちょっと失礼すぎるなこれは。)
明らかに驚いたような顔をしてみせると、ユースタス屋は眉間に皺を寄せて、失礼な奴だな、と言った。や、それは俺も重々承知してるけどさ、だって信じられないから。
「嘘…じゃあ医学部ってことか?」
「いーや、法学」
あっけからんと言い切ったユースタス屋に、嘘、ともう一度言ってしまう。それに、だから嘘吐いてどうすんだよ、とさっきと同じことを言われてしまった。ああ、人は見かけによらずってこういうことを言うんじゃないのか。
とりあえず信じることにして、と呟くと、ユースタス屋は再度、失礼な奴、と眉根を寄せた。だって本当に疑わしいんだからしょうがない。
「キャンパス違うのになんで俺のこと知ってんの?」
「…お前いつもさ、図書館で勉強してただろ」
そう言われて、こくりと頷く。
試験前とかはよく利用してたし、そうじゃなくてもレポートとか書かなきゃいけないときは大抵そこでやっている。
…あ、嘘。
「…俺お前のこと知ってるかも」
「おせーよ」
唇を尖らせたユースタス屋に、必死になって記憶をかき集める。
そうだ、俺集中してるときは回りに気がいかないから気づかなかったんだ。俺はいつも窓際の同じ席で勉強していて、そうすると大抵、気がついたら斜め向かいに誰かが座っていて。でも顔上げないから気配で感じるだけだけど、立ち上がるときにいつも視界に入る、あの赤髪は目立つし印象的だから、覚えていて。
…もしかして。
「あれお前だったの?」
「やっと気づいた」
いつ気づいてくれんのかと思った、と言ったユースタス屋は不満そうに拗ねていて、少し子供っぽい。
…知らなかった。あれ、ユースタス屋だったのか。