親愛なる浮気症へ | ナノ

「浮気やめるか別れるか、二択」
「浮気やめます」

ソファに座りながら携帯を弄る俺の足元でユースタス屋が頭を下げて即答した。へーやめれんの?と嫌味ったらしく言うとお前がそう言うなら、なんて。こいつ俺をおちょくってんのか?ちらりとユースタス屋に一瞥くれながらこの携帯折ってやろうかと握り締めた。

好奇心で覗いたユースタス屋の携帯には俺を奈落の底に突き落とすようなものしかなかった。見なきゃいいだろと言われたらそれで終わりだがこんな浮気性の恋人を持っていて携帯見るなと言う方が無理だろ。案の定出てきたのは百件は軽く超える女の子のメアドとふぅんこんなメールしてんだと思える内容と、

「…俺じゃ魅力足らないってこと?」
「んな訳ねェだろ!違くて、それは…」

大量のハメ撮り動画。
どう考えても撮ったのはユースタス屋。位置的にも動画の女が呼ぶ名前的にも。でもそんなことで俺は動じない。ちょうど寝室でお楽しみ真っ最中だったユースタス屋に出会したことのある俺は動じない。ただ腸が煮えくり返るほどの怒りはあるので、それでも、最終日付を見て決めようかなと考える俺の優しさには神様も吃驚だ。何たって俺、半分は優しさで出来てるからなと思って見た最終日付は一週間前。殺そうと思った。

「いーよもう別れよ。んで死ぬほど女とヤって腹上死すりゃいいじゃん」

本望だろ?と聞けば俺は腹上死はお前って決めてるんだと訳分からんことをやけに真面目な顔で宣言される。んなこと聞いてねェよとそう言えば何故か悲痛そうな顔をされた。

「頼むから別れるとか言うなよ…」

メアドも動画も全部消していいからと言ったユースタス屋に当たり前だと全消去してやった。でもそれでユースタス屋許してやるぞ!と言えるほど俺は大人じゃない訳で。大体その顔したいのは俺の方なのに何でお前がその顔してんだよ。

「なんでハメ撮りなんかしてたんだよ」

これで抜いてんのか?そうじゃなくたって最低なことには変わりない。

「…そりゃ俺は男だし女みたいに柔らかくないし固いし可愛くもないしお前よりも餓鬼だけど、」


でもそれって酷くねぇ?

あ、やべ、泣きそうと思ったときにはもう遅くて頬を涙が一筋伝っていた。あーもうマジ格好悪い。これじゃあ被害者(実際そうだけど)ぶってギャーギャー喚く女と同じだ。ユースタス屋と付き合うって決めたときに絶対女々しいことはしないって心に誓ったのに俺情けなすぎる。
気合い入れて何とか涙を止めようとゴシゴシ目を擦る俺にユースタス屋の手が優しく触れる。擦ると腫れるぞ、とゆっくり手を退かしたユースタス屋に瞼にキスされた。糞野郎。そんな誰彼にも愛を囁く唇なんて。でもやっぱりユースタス屋のキスは優しくて甘くてそれにまた泣きそうになった。

「お前が男とか女とか関係ないぐらい俺はお前に惚れてるしずっと傍にいたいと思うのはお前以外は考えられない。お前はそこら辺の女よりも何倍も可愛いし俺が愛してるのはお前だけだ」

だからロー、泣くなよ、と優しい顔したユースタス屋に言われても涙は止まらなかった。じゃあお前が連絡取り合ってる女は全員俺の何十倍も可愛いって言ってるようなもんで全然嬉しくない。愛してるのはお前だけだも聞き飽きた。
でも顔中に降る優しいキスは相変わらず拒めなくて。本当俺ダサいなと思いながら鼻を啜った。ユースタス屋の女癖の悪さなんて把握済みだし分かってて付き合ってんだから俺も相当物好きだ。だからいつでも強気な態度でお前の浮気には、今後の関係も円滑にするためには怒るけど、そんなことに一々捕らわれない広い心で望むつもりだったのに、実際問題俺は相当ユースタス屋に惚れてるらしい。

「…じゃあもう二度とするな」
「ん、お前がそう言うならしない」

ちゅっ、と額にキスを落とすユースタス屋に今だけは女々しい言葉も許してほしいと思った。





その後、ずっとお前としたかったんだけどお前がやらせてくれないから他の女を代わりにしてた、とか言い訳聞かされてハンディカム持って俺の上に乗ってきたユースタス屋の鳩尾に蹴りを一発いれてやった。でもそれもどうかと思い結局惚れた弱味で嫌々ながらに付き合うと本当にユースタス屋は満足そうであれから携帯を見ても女のハメ撮りは一つもなかった。代わりに一気に俺のが増えて複雑な心境になった。




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