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(犬×飼い主)


俺の家に手違いで犬が来てから一ヶ月と少し。
送り主を間違えて届けられた犬は何をどうしてか俺になついてしまい、即行で送り返す予定が崩れに崩れて今こうして飼って(暮らして?)いたりする。

実際間違えて届けられたということで通常より安上がりで買えたってのもあるけど、こいつを飼うのも悪くないかなって思わせるものがあったから。


この犬が来てからのメリットといえば、俺の生活が健康的になったことだと思う。
何だかんだ言っても一般家庭に流通するだけあって、これがなかなか便利で普通の人間と何ら変わりない。
多分そこら辺は性格なんだろうけど、手先は器用だし家事とか全部やってくれるし、強いて言えば犬耳と尻尾が生えた家政婦みたいな。男だけど。


こいつがいるかいないかじゃ全然違う。
とか思ったり。





「……あれ……?」

ぱちり、と目を開けると何故か辺りは薄暗く、いつの間にか俺はベッドの上で熟睡していた。多分うたた寝していた俺を見つけてキッドがここまで運んでくれたんだろう。
それはそれで嬉しい、けど。

「…は?二十時…?」


どうりで暗い訳だ。
…じゃなくて!


「キッド!何で起こさないんだよ!」

ベッドから飛び起きるとこんな時間までのうのうと寝かせつけた張本人を呼び寄せる。…だが反応はない。

いつもなら名前を呼べばすぐに来るのに今日に限ってそれがない。
不思議に思って首を傾げると階段を降りた。


「キッドー…?」

聞こえないはずもないだろうに何も反応しないキッドに眉根を寄せる。
ご主人様の呼びかけを無視するだなんていい度胸じゃねぇか。

「キッド…?いるんだ、ろっ?!」

リビングのドアを開けると同時に腕を引かれて物凄い力強さで床に押し倒される。
いきなり反転した視界に訳が分からなくて目の前の男(犬?)を睨み付けた。

「痛…っ、いきなりなにすんだよ!」

俺の嫌がるようなことは絶対にしないキッドによって、思いっきり打ちつけた背中はかなり痛かった。眉根を寄せてキッドを怒鳴りつけるが、こいつは何も言わない。
その代わりぐったりとしたように肩に顔を埋めてきた。

「おい…?どうかしたのか?」

いつもと様子が違うことに不安を覚えながらも、何も言ってくれないので何も分からない。困ったよう眉根を下げるとその赤髪をそっと撫でた。


「………熱い」
「…熱い?熱でもあるんじゃねぇの?」

漸くキッドが口を開いて言った言葉は、熱い。
こんなことは初めてなのでよく分からないが、この犬も人間と同じく風邪を引くのだろうか。

だとしたらどっちに連れていけばいいんだ?普通の病院でいいのか?


「ロー……」

息苦しそうに名前を呼ばれて、どこか熱をもった瞳が俺を見つめる。

額に触れると確かに熱い。というかすでに触れ合った肌が熱い。
とりあえずキッドの下から出ようと上体を起こすと、それを遮るように肩を押されて逆戻り。それを不審に思って首を傾げた。

「なんだよ?…とりあえず――」
「抱いていい?」
「………は?」

退けよ、と言おうとして、キッドの唇から発せられた言葉に目を丸くした。




抱く?誰を?


……え?俺を?





「ま…待て待て待て、キッドお前熱で頭がやられたんじゃないのか?」
「俺は普通だ」
「普通の奴はそんなこと言わないだろ!…ああ、あれか?抱き締めたいとか、そういうことならまだ…」
「違ェよ、ローの中に入りたい」
「直球すぎんだろお前!」

キッドの放つ言葉があまりにも予想とかけ離れていて、くらくらと目眩がする。
どうやってこのでかい犬を俺の上から退かすか、必死に思案していたら不意に首筋を這った生温かい感触に、思わずびくりと肩が跳ねた。

「っ、キッド!なにして、」
「悪ぃけど我慢できない」

ローは何もしなくていいから、と耳元で囁かれた言葉に思いっきり首を振った。
だけどキッドがそれで止めるはずもなくて、たくしあげられた服に徐々に焦りが生じていく。

「キッド、やめ…っっ!」

否定の言葉を吐くと同時に乳首を口に含まれて息を詰める。
その温かな感触に、ぞくりとした何かが背筋をかけ上がった。

「っ、ぁ…や、キッド…っ」

含まれたそこを強く吸われて舌で嬲られ、時おり思い出したように甘噛みされる。
腰に触れていた手が肌を滑るともう片方を指先で摘ままれた。ぐりぐりと押し潰すように刺激され、自分の意思とは無関係に体が熱を持っていく。

「ロー…気持ちいい?」
「んゃ…っ、知らな…っ!」
「嘘、勃ってるぜ」

布地の上から確かめるように触れられて、耳元でそう囁かれると何も言えなくなって顔を伏せた。


このままじゃ流される。
そう思っても体が言うことを聞かない。


「ふっ、ぁ、あ…っ!」
「もうぐちょぐちょだな。…好き?こういう風にされるのが」

下着の中に滑り込んできた手が、直接自身を扱い抜いていく。
耳元で囁かれた言葉に唇を噛み締めると首を振って、洩れる声を必死で堪えた。

ただでさえ訳が分からないのに、声まで出したらまるで自分じゃないみたいでキモチワルイ。
だけどキッドはそれが気に入らなかったみたいで。

「声、我慢すんなよ」
「んっ、あ、ゃだ、ぁ…っ」
「ローの声、聞きたい」

唇をそっとなぞる指先を、首を振って振り払うと顔を背ける。
唇を噛み締めるだけじゃだんだん我慢できなくってきて、手で押さえようとしたら未然に腕を押さえつけられてそれも出来なくなる。そのまま抜く手つきを速められると抑えきれなかった声が溢れ出て、部屋に響く自分の声に涙が滲んだ。

「ひっ、ぁ、あ!やっ、だめ…っ、イく、からぁ、離し…っ!」
「いいから我慢すんなって。…見せろよ、ローのイくとこ」

低く掠れた声が耳元で囁いた言葉に顔が赤くなる。
見られている、と意識すると途端に羞恥が襲ってきて、だけどもう止められなくて。キッドの為すがままに体を高められて絶頂へと追い詰められた。

「…っ、ぁ…は…」

ぐったりと全身の力を抜いて余韻に浸る。
霞がかった頭で荒く息を整えていたら、不意に唇に柔らかい感触が触れた。薄く目を開けば目と鼻の先にキッドの顔。何だか余裕のなさそうな。

ちゅ、ともう一度唇に触れるだけのキスをされて、開いた唇からそのまま舌が滑り込んでくる。
熱くて蕩けそうなぐらい、絡み合った舌が熱を持っている。


「んぅ…んっ、ぁ……はっ、」
「…ロー」

唇を離されると、何だか離れていったそれが惜しく思えて無意識のうちに目で追ってしまう。それに唇を舌で舐めるとキッドの喉が上下して、ズボンに手をかけられると下着ごと取り払らわれてしまった。

そのキッドの行動に我に返ると慌てて足を閉じる。でも無理矢理開かされるとその間に体を割り込まれて閉じれなくされてしまう。

…もう本当、一瞬でも乗り気になった自分が信じられない。

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