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「ユースタス屋ぁ」


特に遠出をしたい訳でもなく、手近なところで済ませようとたまたま立ち寄った酒場が異常に騒がしい。何かと思って中に入れば聞き覚えのある声が耳をついて、気付けば体に張りつく低い体温。滅多に見れないふにゃりとした笑顔と甘く上がった語尾にため息を吐いた。

「お前…どんだけ飲んだんだよ」
「ぜんぜん飲んでない!」
「べろべろに酔ってるくせに」

酒臭ェんだよ、と引き剥がせば、酔ってねぇもん、と拗ねたように腕にしがみつかれる。嘘つけとは思ったが、ここで終わらない押し問答をしても仕方がないので適当に返事をしながら椅子に座ると、どかりと向かい合うようにして膝の上に座られた。

「…隣に座ればいいだろ」
「命れーすんな」

ふふ、と笑いながら擦り寄るトラファルガーに再度ため息を吐きつつもその頭を撫でる。
普段なら絶対にしないだろう、何せこいつも一人ではないし俺も一人ではないのだ。少し離れた場所ではトラファルガーんとこの奴らが盛大に酒を飲みあっていた。だがそれは俺のところも同じで、早々にこちらにやってきたトラファルガーに、キラーたちに勝手に飲んでろと言ったのだ。案の定二海賊団が混ざり、酒場はよりいっそう騒がしいものとなった。

「珍しく飲んでどうしたんだ?」
「んー…ベポがな、おれのために注いでくれたんだ」

かわいくて何回もやらせた、と笑いながら言うトラファルガーになるほどと思う。こいつは下戸で、それを自分でも分かっているからこんな風に酔っ払うほど酒を飲んだりはしないのだ。
だが目に入れても痛くないほど可愛がっている白熊のこととなるとそうもいかないらしい。にこにこ上機嫌に笑うトラファルガーに分からないよう、少しだけ眉根を寄せた。

酔ったこいつはあまり好きじゃない。
違うな、酔ったこいつを俺以外の誰かに見られるのがあまり好きじゃない、だな。
今も見れば分かる。うっすらと頬には赤みがさしていて、目はどことなく潤んでいるし、ふにゃりとした笑顔は普段のこいつからは想像出来ないほど可愛らしいもので思わず抱き締めたくなる。頭を撫でれば素直に擦り寄ってくるし、甘く上がる語尾には情事中のそれを思い出すほどで。

「ユースタス屋」
「あ?」

トラファルガーの顔をじっと見つめながらつらつら考えていたら不意にコートをくいくいと引っ張られて意識を呼び戻される。何だ?と言おうとして押し付けられた唇に少しだけ目を見開いた。

「ん、ぅ…んっ…」

呆気にとられていたのほんの数秒だが、その間にトラファルガーは開いた唇から自ら舌を入れていた。反射的にその舌を絡めると鼻からぬけたような甘い声が耳をつく。それに周りの喧騒から取り残されたような気分になった。
恥じらいもなく激しく絡みつく舌に二人きりでいるような錯覚さえ覚える。酔ったこいつはやっぱり珍しいことをしてくれるとその舌に緩く噛みついた。

「ふ、はっ…やっぱ、ユースタス屋がいちばんいいな、キスすんの」

ちゅ、と唇を離すと蕩けた瞳でトラファルガーが見つめてくる。どことなく舌足らずに、気持ちいい、と呟かれて下半身に重い熱を感じた。
もっかい、と珍しく自分から唇を強請るトラファルガーにいますぐでもその唇を塞いでやりたいのを堪えて、頭の中でゆっくりと先程の言葉を咀嚼した。

一番いい、だなんて俺以外ともしたことがあるような言い種じゃないか。

じっとトラファルガーを見つめると不思議そうに首を傾げられる。その頬に触れて指先で耳裏をなぞり、首筋まで滑らすと擽ったそうに身を捩った。

「…俺以外の奴ともこうやってキスしたのか?」
「んー…でも舌いれるのはユースタス屋だけだぞ?」

ペンギンとシャチがダメだってひっぱるから。
そう言ったトラファルガーにぷつりと頭の中の何かが切れる音がした。





「ユースタス屋?どうかしたのか?」

トラファルガーを肩に担いで二階の宿に無理矢理連れ込んだ。さすがにいきなり担ぎ上げたときは暴れられたが、今は何も言わない俺に不安げにこちらを見つめているだけで。

「お前いつもキスとかしてんの?」
「っ、ぁ、いつも…?し、てない…」
「じゃあ…酔ったときだけか」

耳の縁を舐め上げながら吹き込むように囁いた俺の問いに、トラファルガーはふるふると首を振った。それにもしかしたら酔うとキス魔になるタイプなのかもしれないと思う。そのことを今まで知らなかった自分にイライラしながら、耳朶に噛み付くとびくりとトラファルガーの肩が震えて。
するときはキスだけか?と聞けばこくこくと頷かれる。それでもまだ腹はムカムカしていた。俺の独占欲の強さはこいつだって知っているはずだ。例え故意はなくとも自分のものが他人に触れていい気はしない。それをきちんと分かっていないトラファルガーにも腹は立っていた。だから、

「…お仕置き、だな」
「ふ、っ、ユ、スタ、屋…?」

トラファルガーには立場を弁えてもらわないとな。毎回酔う度にこんなことをされていたらこっちだって堪ったもんじゃない。
不安そうにこちらを見つめるトラファルガーにぼそりと呟くとベッドに押し倒し、服の上から乳首に触れる。まだ柔らかなそこを見つけ出し、きゅっと抓んでやると小さく体が震えた。押し潰し、指に挟んでぐりぐりと刺激してやれば、もどかしいのか、トラファルガーはより強い刺激がほしいというように腰を揺らす。それを無視して服の上からという中途半端な愛撫を続けていると、その瞳にじわりと涙が浮かんだ。

「ぁっ、あ…それ、ゃだ…」
「お仕置きっつったろ?」
「な、で…ゃっ、さわって、よぉ…」

酔っているせいか感度も高く、それに対する緩い刺激が堪らないのか、終いにトラファルガーはぼろぼろと泣き出してしまった。
だがもちろんこんなので許すはずもない。お前が俺以外とキスするから、とトラファルガーを責めるよう囁けば、もうしないからと泣きながら首を振って懇願するようにこちらを見つめられる。元々酔っている上に敏感な体を焦らされて意識も明瞭ではないのだろう。
そのいつもとは違った様子に先程までの怒りよりも愉しさが上にでてきた俺は、どうせならとことん虐めてやろうとくつりと笑いながら服の上から乳首に吸い付いた。

「あっァ、ゃ、んっ!ユ、スタ…ゃだぁ…っ」

逃げるように捩る体を押さえて服の上からという以外はいつも通りの愛撫をしてやる。幾分強めに吸い付き、緩く歯を立てて舌で優しくなぞるとトラファルガーはびくびく体を揺らした。
それでも厚い布越しでは刺激が足らないのか、トラファルガーはふるふると首を振って涙を溢す。その涙を舐めとるとするりと服を捲り上げた。

「はっ…すげェやらし…」
「ぁ…っ」

服に擦れて真っ赤に腫れた乳首にふっと息を吹きかけるとびくんとトラファルガーの体が揺れる。触ってほしい、と顔にはありありと書いてあって、それに笑うと真っ赤になったそこには触れずにゆっくりとその周りをなぞった。

「ゃあっ、ユ、スタ…っ、ふぇ、さわっ、て、おねが…っ」

触ってもらえると思っていたのか、焦らすように周りをなぞる手つきにトラファルガーの顔がくしゃりと歪む。

「触ってほしいのか?」
「ふ、ぅん…っねが、ぃ…」
「どんな風に?」
「ぁ、さっき、みたいに…」
「それじゃあ分かんねェよ」

ちゃんと言ってくれなきゃな、と周りをなぞっていた手すらも引っ込めると途端にトラファルガーの瞳に新しい涙が浮かんだ。意地悪だ、と呟かれたので、お仕置きなんだから当然だろ?と囁いて。

「ふ、ぇ…ユースタス屋ぁ…」
「どんな風にしてほしいか言ってみ?」
「っ、ぁ…指、で…いっぱい、ぐりぐりって…」
「こうやって?」
「ひっァ!…んっ、ゃ、もっと、さわってぇ…っ」
「指だけでいいのか?」
「ゃっ…口も、して…」

クネクネと腰を揺らしながら涙目で強請るトラファルガーに息を飲む。乳首を少し弄っただけでこんなにまで乱れる体に俺がしたのだと思うと、堪らないほどの優越感とそれに見合う支配欲が満たされていくのが分かった。

「も、ほんと、に…っ」
「…しょうがねェな」

じっとトラファルガーを見つめていればどんどんと頬が赤く染まって俯き様になってしまう。快楽を強請るのが恥ずかしいのか、それでも疼く体にトラファルガーはぼろぼろ涙を溢しながらも結局はどうにかしてほしいと縋りつく。
可愛いところも見れたしとりあえずはまあいいか、と思うとその頬にキスをしてきゅっと乳首を直に抓んでやった。

「あっぁ!ひっ、ぁ、んー…っ!」

途端にびくりと揺れるトラファルガーの体。待ち望んだ刺激に顔を赤くして快楽に浸る様子が可愛くて、焦らした分を気持ちよくするようにぐりぐりと強く押し潰し、弄ってやる。もう片方も口に含んで吸い付くと、そのコリコリとした感触を楽しむように幾らか強めに歯を立ててやった。

「ふっ、ぁあ!ゃあ、そ、なしちゃ…ひっ!」
「そんな気持ちいいのかよ」

わざと蔑むように呟くと途端にトラファルガーの目尻に涙が浮かぶ。それを尻目に愛撫を激しくしてやるとその体がびくびくと大きく震えて、ぼろぼろ溢れる涙ににやりと笑った。ここだけでイきそうなんだろ?淫乱、と呟くとトラファルガーは必死で首を横に振った。だけども抱き慣れた体だ、すぐにでも達しそうなのは一目瞭然だった。

「ぁ、あっ!ふっ、だめぇ…ゃだ、ゃ、ゆ、たす、…!」
「だからイっていいって」
「ゃ、ひっあ――……っ!」

乳首だけでイけんだろ?と呟くとトラファルガーは涙を溢して嫌がったが体は正直だった。ぎゅっと強く抓み、歯を立ててやるとトラファルガーの腰がびくびく揺れる。次いで一際高い声を上げて弛緩した体に顔を上げると、トラファルガーは眉根を下げてぐずぐずと泣いていた。

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