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「なぁ、いいだろ?」

ベッドに座って黙々と本を読むトラファルガーの隣に座るとその腰に腕を回して引き寄せる。ぼそりと耳元で囁くとこちらを見上げた瞳と目があった。それににやりと笑うとパシッと腕を叩かれて。

「俺もう帰る」
「…はぁ?」

深く帽子を被っているせいで表情は分からないが、何ともとれる声色でトラファルガーはそう言うとベッドから立ちあがった。もちろん黙って逃がす訳もなく、腕を掴めば「今日は気分じゃないから無理」とやんわり振りほどかれる。なら一体いつになったらいいんだと聞く前に、ひらひらと振られた右手を尻目に呆気なくドアは閉まった。

「訳分かんねェ…」

仮にも恋人同士と言われる間柄、その恋人が自分の部屋に来て何もせず何も話さずに帰るなんてことがあっていいのだろうか。しかもそれでやっと話したと思ったら俺もう帰るはねェだろふざけやがって。そもそも目もあわせねェんだあいつは。いつもどっか違うとこ見てやがる。

今日は珍しく俺の船に自分から来たからいけると思ったのに、やっぱトラファルガーは訳分かんねェ。
…つかだんだんイライラしてきた。俺がどんだけ我慢してんのか分かってんのかあいつは。雰囲気作っても駄目、優しくしてみても強引にしてみても駄目ってじゃあどうすりゃ触れるんだよ。

トラファルガーは元々自分の気持ちをあまり打ち明けないタイプだ。だから余計に何を考えているのか分からない。そう言えば好きだと言ったのも俺からだった。あいつは俺に対して好きだと言ったか?考えるも思い当たる節が見つからず一人焦燥に取り残される。そして自分一人だけがあいつを好きなのかとまたイライラしてこの気持ちに終わりが見えない。
次会ったときにハッキリさせるか押し倒すか、二択。もう待ってらんねェと額に浮く青筋に早々に心の内でそう決めながら、不快感を消し去るように酒瓶を取ると浴びるように飲み込んだ。







またやっちまった。

いつもなら笑顔でキャプテン!とよってくるベポにも何だかその気にはなれなくて、忙しいからと突っぱねるとすぐ自室に引き上げた。ボスン、とベッドに寝転がると、少しシュンとしたようなベポの顔とそれを見て驚いたような顔をしたシャチを思い出した。確かに俺がベポを突き放すなんてことは滅多にない。でも今はそれどころじゃなくて。最近やっと二人きりでいることにも慣れてきて、今日は珍しく俺の方からユースタス屋の船に行った。なのに俺ときたらまともに話すことはおろか目をあわせることも出来ないで、結局なんにもしないで帰ってきたもんだからアホかと自分に自分でため息を吐いた。これじゃあいつもと同じだ。いや、いつもより悪いな。さすがに話さないなんてことはない。何もしないなんて会いに行く意味がないから。だけど二人っきりという空間に結局負けてしまって。
やっぱりまだ俺に二人っきりってのはハードルが高かったのかも。俺だってユースタス屋と一緒にいたいのにな。あーあ、こんなんならいつも通り酒場とかにしときゃよかったんだ。そしたらもっとユースタス屋といられたし話せたし何よりユースタス屋に不審な印象を与えなかっただろうし。ホント馬鹿。

ちらりとテーブルに置いてある本に視線を投げるとベッドから起き上がってそれを取る。パラパラとページを捲りながら気分が沈んでいくのが分かった。
ユースタス屋の自室から本を持ってきてしまったことに気づいたのは船を出てから暫くのことだ。最初は緊張を解そうとそこら辺にある本を捲っていただけで、内容自体に別に興味ない。それよりも視界の端に映る赤が気になってそれどころじゃなかった。ページを捲って文字の羅列を追っても内容はこれっぽっちも入ってこない上にちらちらと視線を動かしてはユースタス屋を盗み見ていた。

(そういや今日も危なかったな…。)

最近ユースタス屋は何かとことを進めたがる。そりゃ男として当然だけど。しかも狙われたら即日頂かれそうなユースタス屋とまさかのキス止まりで、その事実が余計急かしているような。
だけど、だけど正直言って俺は…男との経験とか(当たり前だけども)ない、し。愛とか恋とかくだらないとか思ってたからそんな心から好きになれる奴もいなくて、セックスだってしてもすごく冷めてて気持ちいいのかさえも微妙だったのに。
今更になってユースタス屋のこと、すごく好きになって、そんな人が出来たことが嬉しくて、ユースタス屋に抱き締められてキスされればそれだけで俺は満足なんだけど、とか思うぐらい。でもやっぱりユースタス屋はそうはいかないらしい。俺だってユースタス屋が好きだからするのが嫌な訳じゃないしユースタス屋がシたいって言うなら頑張りたい。だけどやっぱり恥ずかしいし、恐いし、怖いし。

「これ、やっぱ…返しに行かなきゃ、だよな」

正直言ってあんまり行きたくない。ユースタス屋と二人きりの空間は俺にとって毒だ。何でもないような表情を装うのだってすごく大変なのに隣に座られて腰に手を回されたり何かしたらそれだけでもう何も考えられなくなる。だけどユースタス屋はそれを平気でやってくるから俺が堪えられなくなってしまいそうになるんだ。だからその前にいつも逃げ出してしまう。

「…返しに行くか」

別にこんなの返さなくてもユースタス屋は何も言わないだろうし返すにしたって明日でも明後日でもいつでもいい訳だ。
だけど行きたくないとか言いつつ本を片手に部屋を出るのは、やっぱりそれ以上にユースタス屋に会いたいからだと自分でも分かっていた。








ソファの上に寝転がるように座って自堕落に酒を飲んでいたら、唐突に部屋の扉が開いてそちらに視線を向ける。ガチャリと開いた扉から入ってきたのはほんのさっき帰ったばかりのトラファルガーだった。

「これ、間違えて持ってきちまったから返しに来た」
「それだけか?」
「…ああ」

トラファルガーは素っ気なく頷くと本をそこらにあったテーブルの上に適当に置いて本気で帰ろうとしたもんだから、それにまたイライラが募って、当に我慢の限界を超えていた俺はソファから立ち上がるとトラファルガーの肩を掴んで壁に押し付けた。

「な、!っ…ぅ、っ」
「お前さ、意味分かんねェよ。俺のことどう思ってんの?」
「ぃっ…ユ、スタ…離し、」
「答えろ」

ギリギリと握り締める肩はそのままに、俯くトラファルガーの顎を掴むと無理矢理顔を上げさせた。限界だった。落ち着いて座って話し合うことも出来ず、痛みに眉根を寄せるトラファルガーを睨み付ける。一瞬ちらりと合った視線にまたイライラ。
何だよ、俺が恐いのか?

「…言いたくねェってんなら別にいい」
「ユ、スタ、…っ」
「その代わり吐かせてやる」

視線をそらしたまま黙ってしまったトラファルガーに我慢が利かない。話し合いもそこそこ、結局後者を選んだ俺は低く呟くと、するりと服の中に手を入れた。小さく震えたトラファルガーの肩は見ないふりをしたままで。

暴れるトラファルガーを押さえ付けるとパーカーを首元まで捲り上げた。途端露になる浅黒い肌と不健康に細い体。そのラインをなぞり、浮き出た肋に指を這わせばトラファルガーの肩がびくりと揺れる。

「っ、ちょ、ホントに…ユースタ…ぁっ!」

咎める声を無視してそのまままだ柔らかい乳首にそっと触れた。クニクニと弄ってやれば、淡いピンク色をしたそこは淫らな赤色へと色を変えていく。そんな過程も楽しみながら、きゅっと指先で抓んでやるとトラファルガーの肩がびくりと跳ねた。

「んぁ、ふっゃ…」

だんだんと硬くなっていくそこに口端をつり上げながら、一方で必死に声を殺そうと唇を噛み締めるトラファルガーには面白くない訳で。快楽を感じ始めたのか、力の入らなくなった体をいいことに好き勝手弄ぶ。クッと時折爪を立てながら、ぷくりと腫れた乳首を押し潰すように虐めてやってはびくびくと震えるトラファルガーの体を楽しんだ。

「声出せよ」
「っ、んん…ふっ、…っ!」

なかなか強情で、声を出そうとしないトラファルガーの耳元でそっと囁く。そのままゆっくりと耳に舌を這わして、耳裏にキスを落とした。次いで中へと舌を這わし、わざとらしく音を立てながら責め立てる。トラファルガー、と低く囁くと、腰が震えて、堪えきれないと言ったように手で唇を塞いだ。赤い顔をしながらぎゅっと目を瞑って必死に堪えようとする姿が堪らない。

「強情だな。…あとが酷いぜ?」
「っ!ゃ…」

ぼそりと呟けば涙目になったトラファルガーがふるふると首を振る。それでも俺と目があうとやはりすぐにそらしてしまった。それにまたイライラして、どうしようもないドロドロした感情が胸の中を渦巻いていく。するりと手を下に滑らせるとズボンの上から熱をもったそこに触れる。布越しに触れただけでびくりと大袈裟に反応して揺れる腰。それに口端をつり上げながら赤く腫れた乳首を弄った。

「ここしか弄ってねェのにもう勃ってんぞ。そんなに乳首弄られんのが気持ちいい?」
「ひぅ…ゃ、ちがぁっ…」
「このどこが違うって?言えよ、乳首弄られて気持ちいいんだろ」
「ゃっ…そ、な、こと…っ!」
「へェ。じゃあこれ何?」

ズボンの上から自身に触れるとやわやわと揉みしだく。途端にトラファルガーは顔を真っ赤にして俯き黙り込んでしまった。黙ってねェで何か言えよ、と言っても反応はなく。はぁ、とわざとらしくため息を吐くと先程弱いと知った耳に唇を寄せてそっと呟いた。

「俺の言う通りにすれば楽にしてやるのに」

びくっと震えた肩に口端をつり上げながら、ここ、気持ちいいんだろ?と聞けばトラファルガーは泣きそうになりながら頷いた。その堪らなく加虐心を煽る表情に、思わず当初の目的を忘れそうになる。暴走しそうになる自分に歯止めをかけつつ乳首に唇を寄せるとジュッと強く吸い付いた。

「ひっ、ぁ…!」
「ほら言えよ、早く」
「ふっ、ゃ……っ、きもち…んんっ!」
「どこが」
「ひっ、く…ち、くび、きもち…っ!」

泣きそうになるのを堪えながら必死に言葉を紡いだトラファルガーにゾクリとした何かが背筋を這う。顔を真っ赤にして羞恥を堪える様に、そんなにいいのかよ淫乱、とさらに煽るようにして言えばもう嫌だと言うように首を横に振られて。

「まあ、でも…ちゃんと言えたし楽にしてやるよ」

そう言ってにやっと笑うと制止の声を無視して下着ごとズボンを下ろす。現れ出た自身はすっかり反応していて、先走りをだらだらと垂れ流していた。つつつ、とゆっくりなぞればやらしい液が指を汚す。
「すげェぐちゃぐちゃ…」
「ゃあっ、言わな、っ…!」
「じゃあ聞かせてやろうか?ほら、」
「ひっ、ああっ!」

やんわりと自身を握り込むと上下に緩急をつけて抜いてやる。途端に響く、くちゅ、ぐちゅ、という卑猥な音。それをわざとトラファルガーに聞かせるようにしてやれば、じわりと目尻に涙を浮かべながら聞きたくないと言うように首を振った。それに追い詰めるように、やらしい、と耳元で囁いて。びくびくと震えるトラファルガーが可愛い。

「おい、ちゃんとしっかり立ってろよ?」
「ふ、ぇっ…?ん、ひっやぁっ!」

すっと自身から手を離すとその場に膝をつく。トラファルガーの震える腰を掴んで一応の忠告を施すと、何のことか分からないと言わんばかりに虚ろな瞳でこちらを見つめるトラファルガーに口端をつり上げて自身を口内へと導いた。途端、びくんと震える腰と上がる矯声。もう声を堪えることは諦めたのか、ひっきりなしに喘ぐ声が聞こえる。

「ひっ、ゃだぁ…はなし…っ、ぁあっ!」

トラファルガーの指がくしゃりと髪を掴んで、引き剥がそうとしているらしいが全く意味をなしていない。奥深くまで咥え込んでやって吸い付いたまま顔を前後させるとトラファルガーの腰がびくびくと跳ねた。

「ふっ、ぁ、あっ!」
「ちゃんと立ってろって言ったろ」
「ゃあっ、むりぃ…ひっ、たてな…んぁあ!」

刺激に絶えられずガクガクと脚が震えだしたので仕方なく腰をしっかり掴んで支えてやる。ぎゅっと俺の肩を掴みながら喘ぐトラファルガーをちらりと見やれば、辛そうに眉根を寄せて喘ぐ姿にごくりと喉を上下させた。

「あっ、ぁ、ゆ、すた…ゃっ、だめぇ、も、たてな…ひっあ、いっちゃ…っ!」
「いいから、イけよ」
「あっ、だめっ、あ――…っ!」

限界を訴えたトラファルガーに、先端にきつく吸い付くと射精を促すようにぐりぐりと舌先で刺激してやる。そうすれば一際高い矯声が聞こえて、びくんっと背が大きく撓ると同時に口内に白濁が吐き出された。ガクッと崩れ落ちそうになったトラファルガーをすんでのところで支えながら、荒く息をするその唇に口付けた。

「んっ、ふぅっ?!んー!」

先程トラファルガーが放った白濁を舌に乗せてこいつの舌に絡ませてやれば、抵抗するようなくぐもった声が洩れる。でも横は向けないようにしっかりと顔を固定してやって、白濁を擦り付けると口内をたっぷりと舐めとってやった。そうすれば息苦しさに負けたトラファルガーがこくこくと喉を上下させて。ちゅっと場に似つかわない可愛らしい音を立てて唇を離すと咳き込むトラファルガーに口端をつり上げた。

「どうだ?自分の精液の味は」

溢れた唾液を拭ってやりながら聞けば、ここで初めてキッとトラファルガーに睨まれる。先程の行為がひどくお気に召さなかったのだろう。もちろんそんな涙目で睨まれても支配欲だとか加虐心を煽るだけで。

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