50000hitリクエスト | ナノ



「んっ、ぁ、っ…ゃめっ…!」
「声抑えんなよ」
「ふっ、うるさ…っっ!」

体のラインをゆっくりとなぞり、吸い付くような肌を存分に堪能する。擽るように腹を撫でながら胸元へと手を近づけるとローは、触るな!とひどく睨みつけたきた。だがその様子が二億にふさわしくなく、怯えた小動物のように感じられてキッドは喉奥で低く笑う。

ローが怯えるのも当たり前の話だ。元からローはそういったことに疎かった。というより興味が無かった。言い寄ってくる女がいても軽くあしらう程度で、抱くことは滅多にしない。ローにとってセックスは気持ちいいよりも面倒臭いの方が上回るただの獣の交わりだった。
その認識は今も変わらず、淡々としてスイトックなローにとってキッドは分からない存在であった。自分と違うものを人は無意識に拒む。ましてや男に迫られたことなどなく、迫られたことがなければセックスをしたこともないローにとってキッドは全てが初めてで、でもそれをキッドは知らない。

「んん…ぁ、ユ、スタス、屋!」
「ちゃんと気持ちよくしてやるから心配すんな」
「ゃめ…ひっ!」

咎めるような声色も指先で抓んだ乳首を押しつぶすようにくりくりと弄られてしまえば甘い嬌声となって消えてしまう。それを見兼ねたキッドがもう片方の乳首に、ふっと息を吹きかけるとローは肩を揺らしながら首を振った。それも無視して舌で舐め上げてやれば唇から悩ましげな声が洩れる。幾分強く吸い上げながら歯を立てるとローは高い悲鳴を上げた。
耳を突くその声が堪らなくて、何度も何度も吸い上げ、押し潰し、指と口を使ってぷくりと腫れたそこを苛め抜く。ローはその初めて、と言っていいほどの訳の分からない感覚に何とか逃げ出そうと身を捩りながら唇を噛み締めた。

「んっく…っ、ん、んんっ!」
「だぁから声抑えんなって」
「ふぁ…ゃ、あぁっ!」

眉根を寄せて顔を上げたキッドが強く噛み締められた唇をそっとなぞる。無理矢理開かせて指を捻じ込むとぎゅっと乳首を抓んだ。開かされた唇から指が出ていき、閉じる前に与えられた刺激にローは小刻みに体を揺らしながら鼻にかかったような甘ったるい声を出す。それにキッドは口端をつり上げた。

「いい声…」
「んぁっ、ゃ、ゃだっ」
「何?耳も感じんのか?」
「ぁ、あっ、んんっ、ゃ…っ!」

ぼそりと耳元で低く囁き、そのままゆっくりとなぞるように輪郭を舐め上げてやればローはびくりと体を震わせて首を振った。それににやりと笑うと、ちゅっと耳朶に吸い付いてやる。中に舌を入れてぴちゃぴちゃと音を立てながら愛撫すれば、恥ずかしいのか、ローは顔を赤く染めながら、じわりと瞳に涙を溜めて反応し出した中心を隠すように脚を擦り合わせた。
もちろんそれをキッドが見逃すはずもなく、柔く耳朶を噛んでから唇を離すとローの脚を掴んで左右に目一杯開かせた。

「っ!ゃ、だっ、離せ!」
「こんなにしといてよく言うぜ。すげ…もうどろどろじゃん」
「ふっ…い、ゃだっ…みる、なぁ…」

キッドはにやりと笑うと下着ごとズボンを剥ぎ取り、閉じられないように脚の間に体を割り込ませて、だらだらといやらしく先走りを垂らす自身にそっと触れた。わざと顔を近づけて、ふぅ、と息を吹きかければそれだけで先端からはこぷりといやらしい液が溢れ出る。

「こんなんでも感じんのか」
「うるさ…ゃだ、ほんと、に、離し…!」
「ここでやめたら辛いのお前だろ?」

乳首と耳しか弄ってねェのに、本当やらしいよなぁ。
言い聞かせるように耳元で囁かれて、つつつ、と自身を下から上へとなぞられる。元々快楽に慣れていない体はそれにこぷこぷと蜜を垂らし、キッドがその様子をまた揶揄ように伝えてくるのだからローにとっては堪らない。
こんな風に体を触られるのが初めてであれば、また自分がいかにも淫乱な生き物であるかのように言葉で苛まされるのも初めてだった。その慣れない快楽と責苦に堪えられるはずもなく。

「ふっ、も…や…」

ぽろり、と涙が頬を伝う。
どうしようもなく悔しくて恥ずかしかった。あんなくだらない賭けに乗った自分を恨んだ。いろんな気持ちが交じり合って、泣き顔だって本当は見られたくないのに腕を縛られて隠すことも出来ない。羞恥に体を震わせながら唇を噛み締めるローは小さな嗚咽を洩らしながらぎゅっと強く目を瞑った。
それなのに、


「いまさら純情ぶんなよ。…別に初めてとか言う訳じゃないだろ」

キッドはその頬を伝う涙に面食らったような顔をすると、流石に罰が悪いのか、どこかぶっきらぼうな口調で視線をそらすとぼそりと呟いた。
その言葉にローは目を見開くと強くキッドを睨みつけた。そんなことを言うキッドが許せなくて腹立たしくて悲しくて、いろんな感情が交じり合ってもう何がなんだか分からないほど。

「ばっかじゃねぇの…っ!」
「は?っ…もしかしてお前、」
「も、これ外せよ、っ」

それでもやはり許せないという感情が大きくて、こんな姿を見られるなんて、とぼろぼろと泣いている自分に恥ずかしく思いながらも縛られた腕をギチギチと動かした。強く縛られたそこは動けば動くほど痛みが増すだけだとは分かっていたが、それでも動かさずにはいられない。
力の入らない腕で必死に、泣きながら、それでも自分を睨みつけてくるローに今度はキッドが目を見開く番だった。その表情にはもちろん、そんなこと微塵も思っていなかったというのが窺い取れて、ローは顔をそらすと、最低、と涙交じりの声で呟いた。

「っ…悪い」
「うるさい…も、顔も見たくない…」

ローを自分のものにしたいとは思っていたし、そのためになら手段だって選ばない。だけどこうやって泣かせたい訳ではないのだ。傷つけたい訳でもない。
キッドは深く深くため息を吐くとローの頬にキスをした。目尻の涙をちゅっと吸って、溢れる涙を手で、指で、何度も優しく拭ってやる。そうして誤算だったなと密かに思った。その事実を知っていたなら、あんな賭けを押し付けてまで自分のものにしようとはおもわなかったのに。どうせ一夜限りだと自分の欲望をぶつけたりしなかったのに。
そのまま素直に口説いた方がこいつにとっては何倍も良かったのかもなと思いながらローの額に優しくキスを落とした。

「さっきの発言は謝る。だけどそれは外せねェ」
「ふざけっ…!」
「外したら逃げんだろ、お前」
「あ、たりまえだろ!」

きっとこちらを睨みつけてくるローにキッドはその頬をゆるりと撫でた。もう顔も見たくないと言われてしまえば終わりだろう。だけど目の前のこの愛しい存在を手放すことなど出来なくて、どうせ嫌われるなら同じだろうと思ってしまう。

「ユースタス屋…!」
「悪ぃけど、俺はお前を俺のものにしたい」
「な、っ…!」
「……好きだ」

目を見開いたローからキッドは視線をそらすと先ほどと同じようにその体を弄る。瞳の色が嫌悪から怯えに変わってもキッドにローを手放す気はなかった。

逃げるように動いたら押さえつけて、否定の言葉しか出ない唇は塞いで、その体を抱きしめて、好きだと呟く。
一生分の好きを使い果たしたんじゃないかと思うぐらい、唇が腫れるまでキスをして、そうして涙を溢すだけになったローの体を自分の思うままに抱いた。



「あっ、はっぁ、んぁあ!」

ローの細い、乱暴したら折れてしまいそうな腰を掴みながらキッドはローを激しく揺さぶった。自分は利己心の塊だと、揺れるローの背中を見つめて思う。
泣きながら自分を否定するローを正面から抱く気にはなれなくて、無理矢理体を反転させるとバックから責めてやった。無理に暴いてたっぷりと慣らした中はキッドのものをきつく締め付け、それに眉根を寄せながらも見つけた前立腺を抉るように突き上げる。

「ひぅ、んんっ…あ、ゃだ、も…ふ、ひぁあ!」

腰だけを高く上げ、後ろから好きなように突かれるこの体勢にローは泣きながらシーツを握り締めた。頭が真っ白になるほどの快楽を無理矢理体に植えつけられ、唇を塞ぐこともできないで女みたいな高い声を上げて、何度もイかされて揺さぶられて、ローのプライドはすでにボロボロだった。
否定の声を上げればすぐに強い快楽を与えられて全て嬌声に変わってしまう。後ろから強く抱きしめながら好きだと耳元で囁くキッドに最低だとローは涙を溢した。
最低だ、最低…もう顔も見たくない、はずなのに。

「トラファルガー…」
「っ、や、っぁああ!」

耳元で名前を囁かれて、そのゾクゾクとした感触にローはシーツを握り締めながらベッドに頭を擦り付けた。
たったそれだけだ。名前を呼ばれて奥を突き上げられただけなのに体はぞうしようもなく気持ちよくて何度目かの絶頂へと追い込まれてしまう。
それでもキッドにやめる気配はなく、次々と与えられる快楽に自分のこの変化を考える暇も無い。

「あっあ、ゃ、ゃだっ…っ、んん、んぅ!」

まだ達したばかりだというのに、激しく奥を突かれていいようのない快楽に首を振る。もうここまでくると苦痛でしかなくて、眉根を下げてシーツに縋り付いていたら不意に顎を掴まれて後ろを向かされた。そのままキスをされて苦しい体勢に眉根を寄せる。

涙や汗や唾液でぐちゃぐちゃのローの顔にキッドの胸がずきりと痛む。
これが最後のキスになるんだろうとは思っていても、ローを求めてやまない自分がいる。どうしようもなく好きだ。素直に言っておけばよかったとも思う。だがもう遅いのだ。
それならいっそ、自分の手の内に――…。


「ひっ、あぁあ、あ――……っ!」

無理矢理絶頂を迎えさせられて、何度目かの強い快楽の後、ローは薄れいく意識の中で確かにキッドに何かを囁かれた気がした。







朝目を覚ますと一人だった。
当たり前といったら当たり前かもしれない。その代わり乱れたシーツはきちんと直してあって、自分の体も綺麗になっていた。動くたびにだるさを感じるが、あとは裸でベッドの上に寝ている以外来たときとこの部屋の風景はなんら変わらない。
ただやっぱりキッドはいなかった。こういう場合はどういう感情でいれば一番楽なんだろう。怒りか悲しみか諦めか、どれも今の気分にはそぐわなくてローはため息を吐いた。

カーテンの隙間から覗く朝日が眩しくて腕で遮る。そのときふと見た手首は縛られた痕が赤くなって残っていた。その手首をぎゅっと握り締めると起き上がる。
いつまでもこんなところにいたって何も始まらない。

のろのろと服を着替えながら、ローは最後に言われたキッドの言葉を思い出していた。それを思い出すだけでも自然と苦虫を噛み潰したような顔になってしまう。
でもどうせ口からでまかせだろう。きっとこんなことが起こるのも今日限りだ。そう思って無理矢理自分を納得させようとして、不意に自分の帽子が無いことに気付いた。

確かに被ってきたはずなのにどこにもない。
そしてその原因も今は一つしか見当たらなかった。


「…ばっかじゃねぇの」

そんなことまでして俺をどうしたいんだよ。




愛憎メランコリック
(俺はお前を放さない。)






企画参加してくださった璽音様に捧げます!
こんなシリアスっぽい話にする予定ではなかったんですが、キッド→ローを考えたらすんごいキッドのことが嫌いそうなローが…。
話の流れ的にくっつけられなかったのが心残りです。もし甘いの期待してたらすみません><
何だか物凄くリクに添えてない気がするぞ…´`;
こんなので宜しければどうぞ!リク有難うございました!





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