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怖いもの見たさ、という気持ちも若干あると思う。何にせよ俺はトラファルガーが料理しているところをあまり見たことがない。
いつも帰ってきたら大体用意してあるし、そうでなくともほとんど出来上がっている。休みの日は専ら俺が作るからトラファルガーは何もしない。

だから次の日の夜、つまり今日、お前が料理しているところを見てみたいから作ってと言えば首を傾げたあと、別にいいけどと簡単に頷かれてほっと息を吐いた。手伝うと言うとトラファルガーは不機嫌になるのであくまで見ているだけ。

「今日は何作る気だ?」
「えーどうしよ」
「決まってねェならカレーで」
「食いたいの?」
「食いたい」

嘘。作るの簡単だから。
だってこのままいったらきっとトラファルガーは和食という名の謎の物体を作り出すだろうから、まず先手を打つことにした。カレーなら簡単だしきっと大丈夫だろう、なんて。
とりあえず俺はトラファルガーの力量を舐めていたのだ。




「おま…それ炒めすぎだから」
「え?そう?」
「いやむしろ焦げてる!火止めろ!」
「だってカリカリになるまで炒めるって書いてある」
「それカリカリ越えてんだろ!」

最初は、というか材料を切ったまでは順調だった。だがカリカリをどう思っているのか、強火でとっくに頃合いを超えた野菜を炒め続けるトラファルガーに慌てて火を止める。焦げ目のついた人参や玉葱、きっと肉は炒めすぎて硬くなっているだろう。まだ始まったばかりだというのに何だこれ恐すぎる。ちなみに関与してしまったことで何だか不満そうな顔をされたが受け流しておいた。




「おい待て…何入れる気だ?」
「蜂蜜と牛乳。隠し味にいれるとおいしいって聞いた」
「普通どっちか一つだろ。両方は頼むから止めてくれ」
「んーじゃあ蜂蜜」
「バッ…お前どんだけいれてんだ!」
「だって適量って書いてあるから」
「お前の適量多すぎ!隠し味なんだから少しでいんだよ!」

鍋に炒めすぎた野菜を放り込んでルーを用意し、あとは煮るだけだし問題ないかと思いきやまさかの隠し味。本来の味がまずしっかりと確保されるかどうかも怪しいのに隠し味とか。いや牛乳と蜂蜜を取り出したトラファルガーに嫌な予感はしていたんだけども。つかまず二つ同時に入れるって発想がありえない。だけど瓶にスプーンを突っ込んでそのまま掻き出して垂らすトラファルガーはもっとありえない。
慌てて取り上げれば益々不機嫌になり、何だてめぇさっきから邪魔ばっかしやがって的な視線を寄越される。だけどあんなの見て手を出さない方がおかしい。トラファルガーの料理恐すぎる。



それからは弱火で煮るって書いてあるのに時間短縮とか言って強火で煮ようとしたり、具が柔らかくなるまで、の結果ジャガイモなんかは溶けてでろでろになるまで煮込んだりするしでカレー一つもまともに作れないことが判明した。結果皿に盛られたカレーは何だか…うん。とにかく一つ言えることは異常に甘かったということだ。きっと蜂蜜のせいだろう。だけどもおいしい?と聞かれたのでまた美味いと答えてしまう俺。そろそろただの馬鹿だ。

「…お前さ、この間の現文のテスト、点数いくつだった?」
「94点。何で?」
「いや……」

なるべく味を気にしないように口に放り込むと首を傾げたトラファルガーが簡潔に答える。まあ薄々気付いていたけどやはり読解力というよりは常識の問題か。常識ないとは常々思っていたがこれって俺が何とか出来る範囲か?正直自信がない。だけど腹を壊して過ごしたくないしそもそも俺は美味い飯が食いたい。

「…明日」
「ん?」
「一緒に作らねェ?」
「何を?」
「夕飯」

ならばもう教える他ないだろう。手伝われるのが嫌なら最初から一緒に作ってしまえと思ったが果たして聞き入れてもらえるのだろうか。

「いーよ」
「え、」
「じゃあ明日一緒に作ろう」

何だか機嫌良さそうに笑ったトラファルガーと受け入れられた事実に慌てて頷く。何作る?と今から考え出したトラファルガーにまだ早ェよと苦笑しながら少し明日が楽しみになった。






企画参加してくださったベル様に捧げます!
料理が激下手なローを一度はちゃんと書いてみたかったのでとっても楽しかったです(^^)
この時のローはまだ料理がヘタクソみたいですね。でもあとになるとちゃんとした料理を作ってくれるようになります。キッドのために(笑)
こんなので宜しければどうぞ!リク有難うございました!





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