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不意に指を引き抜かれて、ぐったりと息を吐いた。気を抜けば膝も折れてしまいそうで、位置の低くなった腰をキッドの腕で再度持ち上げられる。そのまま覆い被さるようにして抱き締められると、入り口に宛がわれた熱に肩が震えた。

「んゃ、きっど…ま、て…っ」

いますぐ挿れられたらそれこそおかしくなりそうで、首を振ると回された腕をぎゅっと掴む。でもこんなことは文字通り無駄な抵抗に終わるだろうと思っていた、のに。

「ぁ…きっど…?」

いつもならそんなの無視して挿れるくせに、宛がったままキッドはぴくりとも動かない。不審に思って首だけ振り向くと意地悪そうに笑った瞳と目があった。

「まて、って言っただろ?」

だから待ってる、とキッドは飄々として言った。ゴシュジンサマの命令は絶対だから、とかこの期に及んでぬかしやがる。

くちゅ、と不意に腰を動かされて宛がわれた先端がすこしだけ中に入る。でもほんの少しだけで、それもまたすぐに出ていってしまうのだから残るのは焦れったさだけ。そうして挿れることはせずにただ押し付けられて、その度にぴくりと腰が揺れた。

「ロー」

何の前触れもなく耳元で名前を囁かれて、その鼓膜でさえも犯されるような熱を孕んだ声に、背筋がぞくりとする。まだ“まて”?とも囁かれて、我慢出来ずに首を横に振った。
なのに、それだけすれば分かるはずなのに、キッドが言わなきゃ分からない、なんて言うから。

「…れて」
「聞こえない」
「っ…ふっ…も、はや…いれ、てよ…」

恥ずかしくて、顔は見られないように俯くと小さく呟く。でもキッドは何も言わないし、動かないから、また聞こえないとか言って何かこれより恥ずかしい言葉を言わされるのかと思った、ら。

「ひっあああ!」

不意に腰を引かれると一気に奥まで挿れられる。突然与えられた強い刺激に目の前がチカチカして、気付いたら達していた。
なのに余韻に浸る間もなく腰を動かされて、すぐにきた次の快楽に逃げようとするけれど、腰をしっかり押さえつけられてしまっていて逃げられない。逆に律動を速くされて、訳が分からなくなって首を振った。

「ひん、ふゃぁっ!あっあ、きっ、ど、やぁあ!」
「っ…可愛い、ロー」

耳元で掠れた声が響いて、それに思わずぎゅっと内部を強く締め付けてしまう。
ぐんぐんと抉るように突き上げられて、まともな言葉も出てこない。その代わり涙と嬌声は止まることを知らず、いつもより深くて強い刺激に泣きながらソファに爪を立てた。

「あっ、やぁ、も、だめ…ひっあ、いく、いっちゃ…!」
「もう、か?」
「だ、て…きっど、きもちい…ぁあ!?ひっやああ!」

気持ちいいと素直に口に出せば途端に律動が激しくなる。それに堪えきれなくなって、白濁を吐き出した。



「んぁ…は…は……んやぁっあ?!」

突然ぐるりと体を反転させられて、達したばかりの内部を強く擦られてびくんと体が震える。
ギリギリまで引き抜かれた自身をぐちゅっと奥まで挿れられて、緩やかに、だけど確実にいいところを突いてくるキッドの動きに首を振った。

「ふゃあっ、まっ…!」
「もう待てねェよ――…いっぱい気持ちよくしてやるから」
「ひっああ! んゃ、きっ…あっ、あぁっ!」


そのあとはキッドの宣言通りめちゃくちゃに抱かれて、五回ぐらいイったところでふわふわとした感覚が途切れて、あとは何も覚えていない。








つい先程のことなのに、遥か昔に取り上げられたような気がする雑誌を再度手に持つとぺらりとページを捲る。条約六つ目を読んだ辺りで水を取りに行ったキッドが戻ってきた。

「だからそんなん読んでどうすんだよ」
「お前を躾する」
「いやいや、無理だろ。それ普通の《犬》用じゃねェか」

キッドは当たり前のようにそう言うと、コップをテーブルの上に置いた。かけられたその言葉の訳が分からなくて、は?と顔を上げれば、何?と怪訝そうな目で見つめられる。

「普通ってなんだよ。お前は異常ってことか?」
「いや、違ェし正常だし。ってか、え?分かってて買ったんだよな?」

隣に座ったキッドが少し驚いたような顔をして、相変わらず何のことかも分からないのでとりあえず首を横に振る。分かって買うも何も犬は一種類だけであとは特に…いや、種類とか何かそういうものがあったのだろうか。

「じゃあ何でお前俺を買ったわけ?」
「え、別に…最近犬を飼ったやつからいいもんだって聞いて試しに」

聞けば犬はほぼ人間と同じでしかも自我があるくせに主人の言うことには絶対で、愛情(?)をきちんと注げばそれなりの見返りをもって返してくれる、というじゃないか。家事もしてくれる(これが最重要)らしいし、飼って邪魔になることもなさそうなので(主人に絶対服従らしいから)、なら試しに飼ってみようと思っただけだ。

不思議そうにそう言うとキッドは怪訝そうな顔をして。

「お前…何か勘違いしてるぜ」
「なにが?」
「お前の言ってる犬は一般家庭用の犬だ」
「は?じゃあお前はなんなんだよ」
「俺は性的用途で使われる犬」
「…つまり?」
「セックスするための犬」

あくまでさらっと言われたその言葉にコップに口つけた状態で体が固まった。恐る恐るキッドの方を見れば、マジで知らなかったのか?と呟かれて、頭が与えられた情報に追いつかないでいる。
とりあえずくらくらする頭を押さえると眉根を寄せた。

「…どういうことだよ」
「そりゃこっちのセリフだろ。お前さ、よく読んで買った?」
「よく読んで買うもなにもそんなのどこにも書いてなかったし。長ったらしいアンケートに答えたらお前がきた」
「そもそもお前…そのアンケートが何か知ってて答えたのか?」
「そんぐらい知ってるからな。それに答えるとむこうが相性のいい犬を勝手に選んでくれるってやつだろ?」
「ああ。でもそれ、性格じゃなくて、体の相性だから」

知ってたよな?と聞かれておもいっきり首を横に振った。そんなのいま初めて聞いたというか、とにかく知らない。てか体の相性ってどういうことだ。俺は男だぞ。

とりあえずいろいろと思うことはあるがおいといて、よくよく考えてみれば納得のいかないことはない。
だってこいつはとにかく我儘で自分勝手で絶対服従はおろか言うことを聞いた回数の方が少ない上に人の都合も知らないで毎日毎日隙あらば押し倒してくるし犬は主人に対してそういうことはしないって書いてあったのに初めて家に来たその日の夜に訳分かんないままヤり倒されて今じゃ失神させられることもざらで抵抗しても無視ときてる。
これがセックスするためだけの犬だから、って言われればこいつの今までの行動も納得できないことはない気もしないでもない。

「何だ。ああいうプレイが好きなのかと思ってた」
「…は?」
「お前するとき絶対嫌がるじゃん。だから強引にされるのが好きなのかと」
「んな訳ないだろ!」
「だって無理矢理押し倒しても嫌がらないし」
「嫌だって言ってもキッドが聞かないから…!」
「本当に嫌がってるなら俺だって止めるぞ」

ローが絶対だから、と呟かれて、見たこともないような真剣な顔をされる。
でもさっきの言い方じゃ、まるで俺が本気で嫌がってないような。いやでも本気で嫌なわけではないけど所構わず盛ってくるところとか毎日強要してくるところはいただけないから嫌なことには変わりない。
…いや、でも、これじゃあ俺はキッドとすること自体が嫌な訳じゃないってことにな、る。

「送り返すか?」
「え?」
「返品可だぜ」いつでもな、と言ったキッドの言葉にはっとする。そう言えば犬って循環性なんだっけか。
俺がキッドを手放せばキッドはまた違う飼い主の元へと行くことになる。そうして俺は普通の、一般家庭用の犬を新しく飼いなおせばいいだけだ。それでうまくいくと多分キッドは思ってるし、俺もそう思う。案の定、ローの好きにすれば、とキッドは言った。

「…じゃあ好きにする。言っとくけど拒否権ないからな」
「ああ」
「俺と契約しろ」
「…お前契約の意味分かってんの?」
「分かってるに決まってるだろ」

眉根を寄せるとキッドを睨みつける。当の本人はどこか間抜けな顔をしていて笑えた。
循環性の犬は契約を交わすことで私的所有物となる。つまりこれをすると、キッドは本当に俺の犬になるってこと。

「返品不可になんぞ」
「返品なんてしないし」
「…嫌じゃないのか?」
「なにが?」
「お前のためになることなんて多分何もできないぜ」

普通の犬と違うから、とキッドは言った。
だからどうした。別に俺はお前のことが嫌いな訳じゃないんだから。(よくよく考えてみると嫌だったらあのとき即行で返品してるしな。それをしない辺りキッドのことは嫌いじゃない。)

「…さっきも言ったけどお前に拒否権ないから」

ふいっと顔をそらすと小さく呟く。だってこんなこと言ったって、キッドが嫌がってたらこの言葉はただの強制でしかない。だから恐くて顔が見れない。
そしたら不意に腕を引かれてぎゅっと強く抱き締められた。

「そんなこと言って、あとで後悔すんなよ」
「…そんなんしないし」

キッドの肩に顔を埋めると抱き締める腕に益々力がこもる。
何だ、お前だって結局満更でもないんじゃん。




重要なのは愛情です
(愛情がなければ始まりません!)






企画参加してくださった狗姫様に捧げます!
犬パロ前々から二パターン考えていたので、そのうちの一つを書けてとっても嬉しいです!
ちなみにローの嫌いじゃないは好きの照れ隠しです。あとキッド様がローを襲う理由はそういう性質をもっている+ローのことが好きだからです(笑)
確か裏の有無については何も言われてませんでしたよね…?勝手に裏入れてすみません…><
こんなので宜しければどうぞ!リク有難うございました!





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