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(学パロ)


俺の気に食わないヤツ五箇条。


屁理屈ばっか言って自分を正当化しようとするヤツ。

ヘラヘラ笑うだけで何考えてるのか分かんねェヤツ。

素直の「す」の字もみえねェヤツ。

自己中心的なヤツ。

トラファルガー・ロー。



つうかこれもう全部トラファルガーだわ。全部あいつに当てはまる。虫酸が走るぐらい当てはまる。
マジで消えてなくなればいい。それが無理ならせめて俺の視界から消えろ。



「ユースタス屋いまめちゃめちゃ恐ぇ顔してるぜ?もっと笑えよ。こう、にこって」
「うぜェ……」

突如現れたトラファルガーは何の躊躇いもなく俺の目の前に座ると開口一番そう口にした。
大体一体誰のせいだと思ってんだこの野郎。お前が来た瞬間から眉間の皺は着実に深くなってんだよ。
そもそも「ほら、にこって」とかふざけたこと言いながら擬音と同時に笑うトラファルガーを殴りたい。何だその胡散臭い笑顔は。

「ユースタス屋って笑ったことあんの?」
「あるに決まってんだろ」
「俺、ユースタス屋が笑ったとこ見たことない」
「てめェに見せる笑顔はねェよ」

それだけ言い捨てるとトラファルガーはユースタス屋ひどーいと間延びした声でにやにや笑った。てめェのぶったその態度のがよっぽど酷い。

「ユースタス屋の意地悪」
「ぶんな気色悪ぃ」

辛辣、と笑ったトラファルガーに眉根を寄せる。誰かこいつを引き摺ってでもいいからどこかにやってくれ。何なら掃除用のロッカーとかに閉じ込めておいてもいいと思う。特に問題はないだろうから。

なんて、そんなくだらないことを思ってる間もトラファルガーは喋り続け、俺の苛々も募る。シャーペンがへし折れるんじゃないかと思うぐらい握りしめて、そのとき漸く授業終了のチャイムが鳴った。こんなことなら自習であるよりもまともに授業する方が何倍もマシだ。

「あ、終わった。行こ」
「は?どこに?」
「次の時間、集会だから」

会議室に集まってどうの、と話すトラファルガーに次の授業は潰れてなくなったことを思い出す。そう言えば進路だか何かの指導が入ってるんだっけか。かったるいことこの上ない。

面倒くさいのでサボろうかとも思ったが、その前にトラファルガーに腕を引かれたので止めた。でもとりあえずその腕は引き剥がして(そうしたら不満そうな目で見つめられたがシカトした。)、面倒くさいが歩を進める。
その間もトラファルガーは何かとベラベラ喋り続け、それを相槌を打つこともなく聞き流した。つうか何でこいつと一緒に行ってるんだ、俺は。



黒板に貼り出された座席表に口元がぴくりと引き攣る。対してトラファルガーはにこりと笑った。糞野郎。こいつと一時間も隣の席に座るとかマジでツいてない。しかも一番後ろとか。こいつ絶対ウザいだろ。

だが予想に反して席に座るとトラファルガーは急に大人しくなった。一時間も煩いこいつの相手をしなきゃならないと覚悟していた分、拍子抜けだ。
でもまあ、楽でいい。そう思った矢先だった。

起立、の号令がかかり、席を立つ。隣に立ったトラファルガーがふらりと倒れ込みそうになった。放っておけばいいのに何故か腰に手を回して支えてしまう。これでまた何かとウザいことを言われるんじゃないかと想像に顔を顰めたが、予想に反してトラファルガーは何も言ってこなかった。
その代わりぐいっと胸を手で押し退けられて、平気だから、と素っ気なく呟かれる。そう言った顔色はどことなく青ざめていて、とてもじゃないが良さそうには見えなかった。

「具合悪ぃなら保健室行きゃいいだろ」
「だから平気だって」

そんなに俺のこと心配してくれてんの?と言ったトラファルガーはやっぱりウザかったので、それだけでこいつ大丈夫だなと判断してしまった。
実際こいつは俺の予想通り話始め、こっちが聞いていようが聞いていまいが関係ない。さっきのは何だと言いたくなるような能弁さ。誰かこいつの唇を縫い付けろ。

だからトラファルガーが俺の肩に頭を預けたときもふざけてやっていると思っていた。ひっつくな離れろ、と言おうとして、そこで漸く異変に気付く。
多分さっきの平気だとかベラベラ喋ってたことだとか、全部痩せ我慢した結果だったんだろうなってことにも今気がついた。俯いた顔を覗き込めば赤く火照っていて息も荒い。

「熱でもあるんじゃねェの?」
「だから、平気だって」

それよりも顔が近いと笑われて、人がせっかく心配してやってんのに、と顔を顰める。
このままだとトラファルガーはまた平気だと見せかけるために話始めるのだろうし(それはそれでウザい)、このままじゃ埒が明かない。

だから。


「先生、トラファルガーが具合悪いらしいんで保健室連れて行きます」

我ながらいいアイディアだ。かったるい進路指導を抜け出せて、おまけにウザいこいつを黙らせることができる。

ちょ、ユースタス屋、と若干戸惑いを見せたトラファルガーの腕を引いてその場を後にする。後ろから何かと声が聞こえたが全部聞こえないフリをした。

「だから別に平気だって、」
「我慢する意味が分かんねェ」

数歩遅れで連れられて歩くトラファルガーを見やると、別に我慢してねぇし、とまたぶつぶつ返される。そんな顔してよく言う。
半ば呆れて保健室の扉を開くと中には誰もいなかった。仕方がないので勝手に体温計を拝借するとトラファルガーに投げ渡す。

ピピッ、と機械的な電子音が聞こえて、トラファルガーはそれを一瞥すると元に戻した。

「熱は?」
「平熱。平気だって何回言わせんだ」
「は?お前嘘だろ」

分かりやす過ぎる嘘に、それでもこいつは大丈夫だと言い張るので、面倒くさくなってベッドに投げ倒した。起き上がろうとするその肩を押し返して、いいから寝てろとベッドに押しつける。
そうすればやっと諦めたのか、不本意そうな顔をしながらも大人しく横になった。

これで俺の役目は終わり、あとは面倒くさいからサボって…とこれからを考えつつ保健室を出ようとすれば不意に歩みを止められる。
振り返れば俯いたトラファルガーが制服の裾を引っ張っていた。

「何だよ」
「………行くな」
「は、」
「お前が行ったら完全に暇になる」

俺は暇になんのが一番嫌いなんだよ、と言ったトラファルガーは顔を上げると眉根を寄せた。それにひくりと頬が引き攣る。一瞬でも萎らしげな態度に揺れ動いた自分を殴りたい。
大体こいつは最初からそういうヤツなのだ。分かっているのに素直になりゃちょっとはマシじゃねェかとか思っちまった。俺の感慨を返せ。

「病人は大人しく寝てやがれ」
「つまんねぇからヤダ」

腕を引き剥がそうとすれば握る手にも力がこもる。俺の制服、こいつの手の中で絶対しわくちゃになってるだろ。
離せとか離さないとか、餓鬼みたいに繰り返されるそれに、そろそろ本気でキレるぞ、と口を開こうとすれば不意に腕が離れてやっと体が自由になる。そして一言。

「あーもうユースタス屋のせいで疲れた。寝るから、帰りたきゃ帰れば」

てめェ…!
と出かかった言葉を何とか飲み込み、ぐっと拳を握り締める。
何つうふてぶてしい態度だ。マジで可愛いくねェ。

握り締めた拳を解くとくるりと背を向けてため息を吐いた。

「…何してんだよ」
「気が変わった。一緒にいてやるよ」

そこらに置いてあった簡易椅子を持ってきて、ベッドの横に置くとそこに座る。
暫く黙ってそれを見つめていたトラファルガーは、目が合うとふいっと顔を背けた。

「俺もう寝るんだけど」
「別に寝りゃいいだろ」

寝たら帰るから、と言えばその肩がぴくりと動く。
何で、と小さく聞こえる声がどことなく弱々しくて、それに思わず黙って耳を傾けた。

「ユースタス屋って訳分かんねェ」
「あ?」
「何で俺のこと嫌いなのに優しくする訳?」

嫌いなら優しくしなきゃいーじゃん。
そう言ったトラファルガーの口調はどこか自棄を含んだもので、その内容も相俟って益々意味が分からなくなる。普段はそんなこと口が裂けても言わないくせに、今日に限って何だかおかしい。

そもそもそんなこと、俺だって知りたい。どうしてお前なんかに構ってしまうのかなんて。



「放っておけないから」
「は?」
「放っておけないかだろ、多分」

どうしてか、なんて考えたわりに答えは簡単に見出だせた。
放っておけないから、多分そうだ。それでどこかしっくりくるものがある。

「大体嫌いって何だよ」
「なにって、」
「俺はてめェにそんなこと言った覚えはないぜ」

確かに気に食わない野郎だしムカつくしウザいけれども。嫌いだなんてそんなこと、言った覚えは俺にはない。
だから、とそこまで考えて、自分の考えに眉根を寄せた。

何考えてんだ俺は。入学当時はこいつのこと、大嫌いだったはず。それが“嫌いじゃない”なんて、どうかしている。
だが予想に反して、俺の気持ちは“嫌いじゃない”で落ち着いてしまっていた。それがいつからそうなったのかなんて知りもしないが、今更心境の変化に気付くということは一体どういうことだろうか。

そもそも“だから”何なんだ?
…俺はあのあと一体何を考えていた?



「ユースタス屋?」

小首を傾げたトラファルガーに名前を呼ばれて、不意に意識を引き戻される。じっとこちらを見つめるその瞳を黙って見つめ返した。

「ユースタス屋さ」
「あ?」
「嫌いじゃないってことは俺のこと好きなの?」

先程の態度も何処吹く風、トラファルガーはにやりと笑うとそう言った。
それがいつもなら馬鹿言ってんじゃねェとか寝言は寝て言えとか。適当に返してそれで終わり。

でも今日は違う。訳の分からない自分の感情にトラファルガーの言葉が混ざり合って。



「そうかもな」
「え、」
「好きなのかもしんねェ、お前のこと」

にやにや笑ってまた何か言われるのかと思えば、一呼吸おいて赤く色づいていく頬が印象的で、交わっていた視線も慌てたようにそらされる。

何だこいつ可愛いじゃんとかふざけたことを思う辺り、きっと俺は本当にこいつが好きなんだろう。





(けど、まだ間に合う。)






企画参加してくださった凛様に捧げます!
とても素敵リクだったのに…!何だか微妙な仕上がりになってしまいました…!
改めて自分の文才のなさを痛感するという。こんな駄文ですみません(^^;
宜しければどうぞ!リク有難うございました!





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