50000hitリクエスト | ナノ



「ひっ、ぐ…ふ、ぁ、あっ…!」

あれから一体どのくらい経ったのだろうか。チャイムが二度鳴ったのはぼんやりと覚えているが、それだけだ。あとどれほど経てばキッドが来てくれるかなんて、皆目検討もつかなかった。それが辛くてしょうがない。本当に終わりのない快楽に身を委ねているようで。

「ふっ、ぁあ…もっ、ゃ…きっどぉ、はや、きてぇ…」

泣いても変わらないのは知っていたが、それでも涙が止まらなかった。声が洩れないようにと噛み締めすぎた唇からは血の味しかしなく、拘束された手足も次第に痺れを伴ってきた。微かに響くモーター音はどうしようもなく、もし誰かがここに来たら、そう思うと頭が真っ白になっていく。
今はまだ、幸いにも誰も来ていない。だが来ないと言い切れる可能性などないのだ。もし誰かがここへ来て、この扉を開けたら。その最悪な事態を想像して、自然とローの唇から嗚咽が洩れる。

「きっど、ぉ…」

乳首にローターをつけられ、バイブやローターを入れられ、大きく脚を開かされたあられもない姿。下腹部を精液で何度も汚し、それなのに萎えずに勃起したままの性器。シャツ一枚羽織っているだけじゃ、何も隠せなかった。こんな姿、誰にも見られたくない。
早く、はやく。何度も繰り返した言葉、けれどキッドは現れない。せめて時計があったら良かったのに。そしたら、きっとこの苦痛はもう少し軽減されたはず。
この状況ではどれも無い物ねだりでしかないと、ぐちゃぐちゃになっている頭でももちろん理解した。だけどそう思うのを止められない。
気絶出来たらいいのに。それも思うけれども、気絶しそうになるたびにバイブの不定形な動きに現実へと引き戻される。最初のうちはそれでも、何とかならないのかとは思っていたが、もちろん縛られた体では何も出来ない。今ではその微々たる抵抗もすっかり諦めてしまっていた。甘受するほかない快楽が、死んでしまいそうに気持ちよくて苦しかった。

「んんっ、ふ…ひっ?!あっぁ!」

でもせめて、少し体勢を変えられたら。長時間同じ体勢を強いられていた体は凝り固まっていて、ローは少し身動ぐ。これぐらいは許されてもいいはずだ、と。
しかしそれが裏目に出た。ほんの少し、のはずなのに、動いたせいでローターなのかバイブなのか、とりあえず中で位置がずれてしまい、先端が前立腺に押し付けられる。目を見開いたのは言うまでもない。

「ひっあァ!やっ、いっちゃ、…またっ、いっ、〜〜ッッ!」

何度も達して敏感になった体に、突如与えられた強い刺激。ただでさえ媚薬を使われているのだ。それだけでローの頭は真っ白になった。
それでも相手はただの機械。ローの都合など関係なしに動き回り、達したばかりのローをさらに追い詰める。ローにとってもそれは酷で、涙を流すとただただ襲い来る快楽にびくびくと背筋を震わせた。
だがそれだけで終わるのならばまだいいほうだ。というのも、何度も達した上にさらなる刺激を与えられ、緩んだ体からは無意識のうちに力が抜けていき、それにつられてずるり、と。自ずとバイブが下がっていったのだ。

「あっ、らめ…おこら、ちゃ…、あ――っ!!」

ずるずると下がるバイブに気づき、ローは半泣きになりながらも、これ以上下がらないようにと力の入らない体でぎゅっと締め付ける。その瞬間、振動をより強く感じてしまい、ローはびくりと体を仰け反らせた。
力を抜けば落ちてしまう。落ちないようにするには力を入れなければならない。でもそうすればその倍感じてしまって。抜け出せないジレンマに陥り、ローは泣きながらも必死にバイブをぎゅっと咥え込んだ。

「はっぁあ!やぁっ、も、いきた、なッ…、あぁっ!」

その瞬間背筋を駆け上がる快楽。これで一体何度目だろうか。
声を押さえるのも忘れ、ローはびくんと大きく体を仰け反らすとまた絶頂へと達してしまう。ぐちゃぐちゃになった下腹部に申し訳程度の精液が吐き出され、それでも続く刺激に萎えることは許されず、強制的に勃起状態が続いていく。
最早快楽を通り越して苦痛でしかない責め苦にローはぼろぼろと涙を流す。とまって、やめて、と何度も呟いても相手は機械。無情に動き続けた。

この地獄から脱する方法はたった二つ。機械が電池切れで動きを止めるか、それとも…キッドが迎えに来るか。

「はやくっ…きっど、ぉ…!」

迎えに来て、お願い、はやく。
今にも飛んでしまいそうな意識の中で、必死にキッドを呼び求める。現実離れしたこの空間に、どこか遠くでチャイムが鳴るような音がした。
このチャイムが、キッドが来てくれる合図だったらいいのに。ぐちゃぐちゃになった頭でそう考えては啜り泣く。緩んだ涙腺に嗚咽を止められずにいると、不意に響くような音がした。カツン、と。

「っ…!」

息を、飲む。胸の奥からじわじわとしたものが込み上げ、早く早くと想いが溢れ出る。
でも、とも思う。もしキッドじゃなかったらどうしよう。絶対にバレてはいけないのに。

静かに響くモーター音に、唇を噛み締めると掌に爪を立てる。どっちにしろ、声は出しちゃいけない。そう思うのに、容赦ない玩具たちに声が洩れそうになる。くぐもったような声が止まらない。これでキッドじゃなかったら、どうしよう…。
足音が止まり、キィと目の前のドアが軽く押される。ローはぎゅっと目を瞑った。


「…ちゃんといいこにしてたみたいだな」

頬を撫でる感触、囁かれる声。目を開ければ視界一杯に広がる赤にぽろぽろと涙が溢れた。

「ふっ、ぇ…きっど、きっどぉ…!」

堰を切ったように溢れ出す涙と何度も名前を呼ぶローにキッドは少しやり過ぎたかと苦笑すると、両手の自由を奪っていた手枷を外してやる。瞬間ぎゅっと抱きついてきたローの頭を撫でるとシュルシュルと脚を縛っていた麻縄も解いてやった。
手も脚も傷がついていないことを確かめ、労るように撫で擦る。未だ溢れる涙を舐めとると体勢を変えてキッドが蓋の上に座り、その膝の上にローを座らせた。

「すっげェぐちゃぐちゃ…何回イった?」
「そ、なっ…わか、な…あっ、ぁ!」
「分かんねェぐらいイったのか。そんなんでちゃんと声我慢できたのかよ」

愉しそうに笑うキッドに、ローは必死でこくこくと頷く。実際問題あれで我慢できたと言えるのかは知らないが、誰にもバレなかったことは確かだ。もちろん、誰も来てないからというのもあるが。
それにキッドは特に追及することもせず、ただえらいなと呟いただけでローの頭を優しく撫でた。じわりと涙の滲んだ瞳でこちらを見つめるローが何か訴えかけているのは明白だったが、何も言わずに言葉を待つ。そうすれば何かを求めるようにローの唇が震えた。

「っ、バイ、ブも…ちゃ、と…」
「ん、あぁ…そうだな。ちゃんと咥えてられたな」
「ふっ、だから…もっ…」
「…外してほしい?」
「ひゃっ…!」

わざと耳に唇を当てて囁けば、ローの体がびくりと震える。洩れ出た甘い声に顔を真っ赤にし、それでも早くと言うように頷いて見つめてくるローにくつりと笑った。
ここで嫌だと言ってやるほどキッドも鬼ではない。目尻に浮かんだ涙を舐めとると、カチリとバイブのスイッチを切った。

「ぁ、ぅっ…ローター、も…っ」
「分かってるって」

バイブを取り、ローターもと強請るローにコードを引っ張るとスイッチは入れたままでゆっくりと引き抜いていく。ただそれだけにも感じてしまうのか、ローはびくびくと体を震わせてキッドにしがみつくと首を振った。

「やっ、とめて…ひぁっ!」
「こんなんでも感じんのか?」
「だって、ぇ…あっ、あぁッ!」
「まだ一個目だぞ」
「あっ、もぉ…やぁっ、はやくぅ…!」

じわじわと目に涙を浮かべ、逃げようとする腰を掴むとちゅぷりとローターを引き抜く。あまりにもローの反応が可愛らしく、キッドは次のローターも殊更ゆっくりと引き抜いた。

「ひっ、んんッ、ふ、ァ!」

最後の一つに手をかけ、それも同じようにゆっくりと引き抜く。途中前立腺に当たったのか、ローの体がびくりと震え、ぴゅくっと少量の精液が吐き出された。

「まだイけんのか…媚薬効果?」
「っ、ぁ…は、あっ…」

最後の一つを取り出し、びくびくと体を揺らすローにぼそりと呟きながら乳首のローターを取ってやる。現れたのは案の定、刺激され続けて真っ赤に腫れ上がった乳首。赤く充血したそこを試しに抓むと、それだけでローはぼろぼろ涙を流した。

「ひっ、そこ、ゃめっ…!」
「大分感じやすくなってるみてェだな」
「ゃらっ、さわ、なっ…ひぁっ!」

両乳首ともに指で抓み、ぐりぐりと潰すように刺激する。そんなキッドの手にローは手を被せると、必死に引き剥がそうとするがもちろん無駄で。引き剥がそうとする度に爪を立てられ、それが嫌でぎゅっとキッドの手を握れば優しく指先で転がされる。触ってほしくないのに、やめてくれない。ローは泣きながら首を振るが、キッドはやめるどころか腰を掴んで逃げられないようにすると真っ赤に腫れたそこを口に含んだ。

「あっ、!?ひっ、ぁあ!」

ぬめりとした舌で撫でられ、ローの体がびくんと仰け反る。けれど逃れることは出来なくて、懲りずにキッドの頭を引き剥がそうとすれば歯を立てられる。ぎゅっぎゅっと犬歯で噛むように何度もされて、ローはぐしゃりと顔を歪めた。やだ、かまないで、何度も懇願してキッドの頭を抱き締めれば宥めるように舌先で嬲られる。時折強く吸われ、舌と指で虐められ、ローが再び絶頂に体を震わすまでそう時間はかからなかった。

「何かすげェイきやすくなってね?」
「んぁっ…」

背中を撫でた際に洩れ出た甘い声を聞きながら、まぁアレだけイってりゃなァ、とキッドは自問自答する。媚薬がなかったら恐らくもう何も出ないはずだ。そうでなくとも量が少なく、薄い精液しかもう吐き出していないのだ。そこは推して測るべきだろう。
荒く息をし、虚ろな目でぼんやりと自分を見つめるローの唇にキスをする。半開きの唇に舌を捩じ込み、ローの舌と絡め合わせて深いキスをした。ぎゅっと強く抱きついてきたローの頭を撫でるとズボンのファスナーを下ろすが、キスに夢中で気付いていないようだ。薄く目を開け、蕩けたような表情をうかがいながら、少し下着をずらして先程までの痴態に張り詰めた性器を取り出すと、ぐずぐずになったそこに先端を宛がった。

「ふっ、んぁ…、んっ! ?んぅーっ!」

そこで漸く気付いたのだろう。目を見開いたローの後頭部を押さえて口付けを深くすると同時に先端を押し入れ、腰を掴むと一気に奥まで突いた。

「ひ、ッ――!!」

口端から悲鳴じみた声が洩れたときにはもうすでにズブリと根元まで飲み込んでいた。先程まで散々バイブやローターに虐められていたから緩いだろうと予想していたが、その予想に反してローの中はぎゅうぎゅうときつく締め付ける。さすが名器、などと言うとあとあと怒るだろうから心の内に留めておくだけにして、塞いでいた唇をそっと離した。

「ふっ、は、ぁッ…ん、やぁっ…ぬ、てぇ…」
「嫌?」
「っ…も、いきた、なぃ…」

唇を離した途端、ぼろぼろと涙を溢したローの涙を舐めとると、じゃあ一回だけ、と頬を撫でる。一回だけ我慢できるか?なんてローが弱い優しい声で囁きながら耳を弄るとびくりと震える体。ロー、と甘い声で強請るように呟けば、ローはじわりと目に涙を溜めて、ほんとに一回だけだからな、と消え入りそうな声で呟いた。

「ん、なるべく早く終わらせるからな?」

ぎゅっとキッドに抱き着き、肩に顔を埋めたローがその言葉にこくりと頷く。辛くてどうしようもないだろうに、自分のために頑張ってくれるローが堪らなく愛しい。ぎゅっと抱き締めて口許を緩めると、頷いたのを合図にゆっくりと律動を開始した。

最初は優しく、だんだん激しくなっていく動きに、控え目だったローの声も甘く鼓膜に響いていく。辛そうな、それでいて気持ちよさそうな声。動きが激しくなるたびに、キッドを抱き締めるローの手にも力が入る。

「ふっぁ、あ!ゃあッ、きっど…ぁっ、いっちゃ…!ッ、ゃらあっ、も、いっちゃう…っ!」
「っ、好きなだけイっていいから」
「やっ、だめ、だめぇっ、〜〜ッッ!」

もともと敏感になった体、何度も前立腺を刺激されればキッドよりも早く限界を迎えてしまう。びくびくっと体を揺らし、耳元で上がる矯声ときつく締まる中にキッドも思わず眉根を寄せる。けれどそこで終わりにするのは勿体無く感じられ、堪えるとそのまま律動を続けていった。続けられるその動きに達したばかりのローが堪えられるはずもなく、動きをやめないキッドに目を見開くとぼろぼろと涙を流す。

そのときだった。賑やかな話し声がこの空間に侵入してきたのは。


「はぁ〜、マジ体育あちぃー!」
「俺らのクラスだけエアコン壊れてるからこのままだとガチで死ぬよな」
「ホントだよなー!早く修理してくんねぇかなぁ」

たった一枚の薄い壁を隔てて繰り広げられる、何てことのない会話。それだけでドクン、と大きく心臓が跳ねる。
キッドの動きもピタリと止まり、ローは見知らぬ声に全神経を傾けた。そうだ、ここは学校のトイレで、誰がいつ来るのかなんて分からなくて。まるで急に現実に引き戻されたようで、それに理不尽さすら感じられる。
早く、早く出ていけ。
そう心中で唱える度に心臓の音が激しくなり、もしや聞こえているのでないのかと思ってしまうほど。唇を噛んで落ち着けと呟く一方で、どうかこちらには気づきませんように、と。それだけを祈った。

ふっ、と洩れたような息がかかる。堪えていたが、思わず洩れたといったようなそれに顔を上げれば、口端をつりあげるキッド。ドクン、と心臓が跳ねる代わりに、背筋に冷たい汗が伝った。
ここを出ていく前にしたように、白い指が赤い唇に当てられる。静かに、な?
ただそれが当てられたのはローの唇だった。

「ッ――!!」

ぐちゅりといきなり腰を動かされ、ローは自分の両手で口を塞ぐ。信じられない、と思った。ただ抗議しようにも、いま口を開けたら出てくるのは確実に矯声だ。前立腺ばかりを狙ってくるキッドを涙目で睨み付けながらも、ローは必死に声を抑える。

「……なぁ、何かいま声しなかった?」
「別に。なんも」
「何か啜り泣きっぽいやつ」
「はぁ?おまっ、怖いこと言うなよ!ただでさえここ使う奴少ねぇのに…」
「ははっ、わりぃわりぃ。多分気のせいだわ」

繰り広げられる談笑、笑い声。聞こえてきた「誰かの声」という言葉。
バレたくない一心で、ローは塞いだ手の中でぎゅっと唇を噛み締める。そんなローの様子をキッドは目を細めて見つめていた。前立腺を突く度に泣きそうな顔をして、必死に声を抑えようとする姿が可愛くてしょうがない。もう少しその姿を見ていたかったが、男子生徒たちの声はだんだんと遠くなり、最後にはバタンとドアが閉まった。

「ふぁっ、さいあく…!」
「、のわりにはぎゅうぎゅう締め付けてきたけどなァ?」

人がいる方が感じるのか、と言えば鋭い視線をそらされ、ローの頬が羞恥に赤く染まっていく。違う、と言いかけた言葉はずくんと奥を突かれてすぐに消えてなくなった。

「あッ、ああぁ!」
「我慢してるお前も可愛かったけど…やっぱこっちの方がいいな」

ガクガク揺さぶられてだらしなく喘ぎながら感じ入るローの姿にキッドは満足そうな笑みを洩らす。腰をしっかり掴んで何度も揺すれば、先程の態度は影を潜め、すっかり快楽に感じきって泣き出したローをぎゅっと抱き締めた。

「ひっぁ、きっど…ぁ、また、いくっ、いくぅ、!」
「っ、あぁ、イけよ」
「ゃだ、やッ…きっど、も、いっしょにっ…!」
「…っ!あんま可愛いこと、言うなって」
「ふっ、だってぇ、…ひっ、ぁあ、も、こわれちゃ、っ!あっ、やぁッ、でちゃ、いっちゃ…!」
「ロー…中に出すからな、っ」
「んっ、ちょーだ、ぃっ…きっど、の、なかにぃ…ひっ、ああぁ!」
「…くっ…!」

限界を訴えたローの可愛いお願いに、逆らえるはずもなく。ぼろぼろ泣きながら縋りつくローに、キッドは一気に突き上げると一番奥に熱を吐き出した。

本当はもう少し堪能しようと思っていたのに。くったりと身を寄せて荒く息をするローを抱き締め、背中を撫でると苦笑する。多分あれが限界だったんだろう。それまでを考えれば、よくここまで持ったというか。

「…ロー?」

ぐったりと体を預けてから反応しないローに、控え目に名前を呼ぶと気を失っていることに気がついた。まぁアレだけしたんだから当然か、と思いつつ、ローの額にキスをする。
今はもう授業中だろう。次の休み時間に入る前に早く出た方がいい。キッドはあまりローを刺激しないようにして後始末を始めた。




ぼんやりと目を開ける。二、三度瞬きしてから、目に入ってきた天井と背中の柔らかい感触に、どうやらトイレではないらしい、とローはぼーっとしながら思った。

「お、起きたか」

ギシッと椅子の軋む音がして、そちらに目を向ければ鮮やかすぎて目に痛い赤い髪。ローはそれを見つめながら、未だぼんやりとした頭で首を傾げた。
確か最初はトイレにいて、キッドと会って、いつも通りにしようとしたら…縛られて、放置されて、それで…。

「っ!…うぁ、いってぇ、〜!」
「馬鹿、急に起き上がんなよ」
「うるせぇ……つか、なんで、ここ…」
「気絶したから運んでやったんだよ。まだ寝とけ」

次第に意識がはっきりし、先程までの自分の痴態を思い出して思わず勢いよく起き上がる。そのせいで腰に走った激痛に眉根を寄せれば、呆れたような声にキッとキッドを睨み付けた。

「いいのかよ、誰か来たら…」
「誰も来ねェから安心して寝てろ」

俺以外はみんな出張に行った、とそれだけ言ったキッドに誰もいない社会科準備室をぐるりと見渡す。まあキッドがそう言うのなら本当だろう。ローは再びソファに体を沈めると、パソコンと向き合うキッドをじっと見つめた。

「ユースタス屋」
「あ?」
「変態最低教師」
「………」
「人来たらどうする気だったんだよアホ…つか放置とかマジありえねぇし…!」
「…たまにはそういうプレイもいいだろ?」
「いいわけあるか!嫌いになるぞ!」
「…もうしねェよ」
「当たり前だろバカスタス」

本当はもっと怒ったっていいはずだ、とローは思うが、ふてくされたように唇を尖らせるとそこでやめにしておいた。こうすれば大概キッドは存分に自分を甘やかしてくれるから。
今日だってもちろん例外ではない。悪かったと、そう言ったキッドはソファに近づくとローの頭をそっと撫でて額にキスをする。許さない、とローが甘えたように擦りよって言うと苦笑しつつも優しく頬を撫でてくれた。その大きな手が心地好く、思わず眠ってしまいそうになる。

「寝たかったら寝ていいぞ」
「…それ、教師のセリフかよ」
「授業に出ろって言った方がよかったか?」
「言ったらもっと嫌いになった」

眠そうな目をぱちりと開き、悪戯っぽく笑ったローの言葉に、そりゃ困るなとキッドも笑った。
けれどその瞳もまたすぐに睡魔に取り込まれ、うつらうつらと舟を漕ぐ。寝るならまた放課後に起こしてやる、とそっと囁けば、ごしごし目を擦ったローがキッドの腕をきゅっと掴んだ。

「寝ねェの?」
「ん、まだ…約束の答え…」
「…約束?」
「お願い聞いたら、七時半って…」
「あぁ、あれは『聞いたら考えてやる』だろ?」
「はっ?」

一気に眠気が吹っ飛んだのは言うまでもない。キッドの爆弾発言ともいえるその一言にローが耳を疑うのも当然だ。何せあれだけのことをさせておいて、『聞いたら考えてやる』なんて答えはふざけているとしか思えない。
きっとひどい顔をしていたのだろう、そんなローをキッドは笑うとポンポンと頭を撫でた。

「まぁ、でもローも頑張ったしな…代案がある」
「代案?」
「そ。…朝、たった二十分だけトイレで会うのと、毎週末俺んちに泊まりに来るのと、どっちがいい?」
「…それってマジで?」
「マジで。…でもまぁローが嫌なら…」
「っ、泊まり!泊まりがいい!」

わざとらしく言葉を濁したキッドに、ローは腕を掴む手に力を入れると早口にそう告げる。嬉しそうに輝く瞳と高揚した頬。ローが興奮するのも無理はないだろう。何せキッドはあまり泊まることを許してくれなかったし、学校ではバレないようにと一線引いてしまっている。だから付き合ってはいるものの、なかなか二人で過ごせる時間がなく、朝のキスはローが苦し紛れに考え出したその結果だった。
常日頃から隙あらばキッドの隣にいようとするローだ。その提案を受け入れないはずがない。

「それって今日から有効?」
「それでもいいけど」
「マジ最高。ユースタス屋大好き」
「言ってろ」

先程の剥れたような様子はどこへやら、満面の笑みを浮かべて楽しそうに放課後以降の予定を立てるローに苦笑する。夕飯はシチューがいい、とソファから聞こえてきた声に返事を返したキッドは教師ではなく、すっかりローの恋人に戻っていた。





企画に参加してくださった匿名様に捧げます!
本当にもう…遅すぎて…切腹でもした方がいいんじゃないかな私…!orz
最低×一途か放置プレイということで放置プレイの方を書いてみました。相変わらずの変態クオリティですみません!変態キッド大好きですみません^^^^
素敵なリクエスト有り難うございました!





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