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その日以来、俺はユースタス屋の家には行っていない。別に、招かれる理由も、行く用事もなかったからだ。
だけど俺は、ユースタス屋のあの日の唇の感触と呼ばれた名前が忘れられなくて、それがおかしなことだとは自分でも分かっているけど、忘れられなくて。何故かそのことを思い出すたびに、心臓が高鳴って体が熱くなる。自分でも全く意味が分からないし、やっぱりおかしなことだとは思う。
しかもそれだけじゃないのは、その現象がそれ以外のほんの些細なことでも現れることがあったりすること。頭撫でられると何でか顔が熱いし、ユースタス屋が誰かに告白されたのを知ったりすると、それとは正反対に気が重くなる。一緒に過ごすと楽しいし、ユースタス屋のことをもっと知りたいとか、思うときもある。
…てか、何かこう見返すと俺キモいな。やっぱり余計なことは考えんのやめよう。

「トラファルガー、帰ろうぜ」
「ん、ちょっと待って」

どうやらぼーっと考え事をしている間に終了のチャイムが鳴ったらしい。鞄を持ったユースタス屋がそう俺に呼びかけて、俺は慌てて鞄を取るとユースタス屋の隣に並んだ。

「…お前、傘持ってる?」
「あるけど…え、つかなに、お前はないわけ?」
「朝降ってなかったら、持ってこなくていい決まりあるだろ」
「ねぇよ!今日午後からの降水確率八十%だし」

玄関に着くと、外を見て小学生みたいなこと言い出したユースタス屋に軽くツッコミを入れながら、仕方なく自分の傘を取り出すとユースタス屋を手招きした。つうかビニ傘に男二人は狭いだろ…と思ったが案の定、狭い。さすがに無理がある。

「もうお前濡れて帰れよ」
「ひでぇ!ほら、傘持つからさ」
「いいよ別に」
「俺の方が背高いし」
「………」

ひょいっとユースタス屋に傘を持たれて、最後に言われた言葉に微妙にイラッとする。別に俺は小さくない。平均以上だ。ユースタス屋が何もかも規格外なだけで。

「なんか、こういうのってどう言うんだ?日本語では」
「は?」
「二人で、一つの傘に入ること」
「あぁ、相合い傘のことか」
「アイ…?…なるほど」
「言えねぇのを誤魔化すなよ」
「うっせ」

相合い傘が長くて言いにくかったのか、無い眉を潜めたユースタス屋に笑った。そしたら肩をこずかれて、やっぱりいつも通りじゃんと思う。さっきまでぐるぐる考えていたのがバカみたいだ。やっぱりただの気にしすぎだったのかもなぁ、なんて。

「英語だとなんつうの?」
「sharing an umbrellaとか」
「なんか、まんまだな」
「日本語がおもしろいだけだ」

傘書いて、中に人の名前書いたりするんだろ?と言ったユースタス屋に、好きな人の名前を書くやつか、と何気なく呟けば興味を持ったような瞳で見つめてきたので詳しく教えてやる。それを聞きながら、やっぱりおもしろいな、なんてユースタス屋はどことなく感心したように呟いた。それに、何となくその話を続けていたら、不意にぐいっとユースタス屋に腕を引かれた。
掴まれた腕に「あの日」のことを思い出して、何故か顔が赤くなる。それを振り切るようにして、何なんだとユースタス屋を見ようとすれば濡れてると呟かれた。

「お前もうちょっとこっち来いよ。肩、濡れてるから」
「っ、別にいいって。てかそしたらユースタス屋濡れるし」
「俺はいいよ。お前の傘だろ?」

そう言って、離れようとした体をまた引っ張られて、先程よりも少し近くなった距離にドクリと心臓が跳ね上がる。
まただ、またこの感覚だ。
触れあう肩にじんわりと頬が熱くなっていく気がして顔を上げられない。急に黙ったらきっとユースタス屋も不審に思うだろうに。何か、会話を続けなきゃ。そう思うけど何も言葉が出てこなくてただ足元を見つめて黙って歩いた。

「どうした、トラファルガー」
「なにが…」
「顔、赤いけど」
「はっ、!?べ、別に…っ」
「ウソつけ」
「っ!!」

俯いてたらいきなりユースタス屋に覗き込まれてビクッと体が震えた。せっかく隠したのに、ユースタス屋の言葉と赤い瞳を認識するたびに頬が新たな熱を持っていく。
ああ、本当ダサい。こんな顔見られたくない。てか普通に不審がられるだろ、男相手に顔赤くなるとか。流れ的にユースタス屋に対して顔赤くしちゃってるわけだし。男なのに、気持ち悪い、とか。

「なんか、かわいーな、お前」
「……は、?」

俺はきっと今、ひどく間抜けな表情をしてると思う。いっそ、それをユースタス屋にからかわれたかった。そしたら俺も変な冗談はやめろとか、笑いながら言えた。
でもユースタス屋は何も言わなかったし、別に平然として見えた。本当にそう思ったから、ただ伝えた。そんな雰囲気がバリバリこっちにも伝わってきて、正直リアクションに困った。

「…な、に…言ってんの、お前」
「別に、そう思ったから」

結局俺がとったリアクションは一番無難だと言われるもので、でもそれに対して変な間をとってしまったから、無難ではなかったかもしれない。だけどユースタス屋はただ俺が思ったとおりの言葉を言って、ポンポンと頭を撫でるだけで他には何も言わなかった。それに、本当に何も言えなくなる。茶化せばそれで終わるのに、何でか言えなかった。茶化した言葉にユースタス屋が笑いながら賛同して、さっきの言葉がなかったことになるのは何だか嫌だったから。

ザーザーと雨が降る中、一本の傘で黙々と歩く高校生男子の姿は端から見れば首を傾げたくなるようなものだったろう。だけど俺はそれどころじゃなかったし、自分から話しかけられる状態でもなかった。ただユースタス屋の歩調に合わせて歩き、早く家に着いてほしいのか着いてほしくないのか微妙な心境でひたすら歩く。短いはずの距離が、普段よりも長く感じられた。

「何か…雨、ひどくなってきたな」

ぽつり、とユースタス屋が呟く。確かにいつの間にか風も出てきて、横殴りの雨に変わっていた。肩以外にもじわじわ濡れ始めた制服を見て、眉根を寄せる。
いや、てか…何かちょっとヤバくね?

「うわ、マジ…傘差す意味ねぇ!」
「ホントだな…あともうちょっとで俺んちだから、来いよ」

傘閉じてもいいか?とユースタス屋が言ったので、軽く頷く。吹き荒れる風と強くなった雨にはもう傘を差してる意味なんて無いように思えたから。確かにユースタス屋の家はもうすぐそこだったし、これなら走っていった方がいい気もした。多分、ユースタス屋もそう思ったんだろう。走るぞ、と言われてぎゅっと腕を掴まれる。正直動揺したけど、ユースタス屋はまるで気にしていないように走り出したので、俺も俯きながらついて行く。何だかさっきから自分だけ、無駄に意識してバカみたいだ。てか男同士なんだから意識する必要とかないのに、俺ホント何なの。意味分からん。

一度回復しかけたのにまたぐるぐると思考が巡りそうになって慌てて首を振った。考えないように、考えないように、そう唱えて無心に走ったけど、手首に触れる俺よりも少し高い体温を気にせずにはいられなかった。



「うわぁ〜、マジ濡れた…」
「シャワー浴びた方がいいかもな…先に浴びてこいよ」
「え、いいよ。ユースタス屋が先に浴びれば?」
「お前細いからすぐ風邪引きそうだし、俺はあとでいい」
「細いの関係ねぇだろ!てか俺は標準だ!」

結局傘を閉じて走った方がよかったのか、それも分からないぐらいびしょ濡れになった体で玄関に立ったままの俺は、バスタオルを寄越してきたユースタス屋の言葉に思わず噛みついた。それに笑うユースタス屋。さっきのお互い黙りきったままの空気とは一変して、いつもの雰囲気だった。それに少し安堵して、俺も肩に張っていた気を抜く。変に意識するからダメなんだ、きっと。もっと、いつも通りに。
そう思ってやっと普通に過ごせそうだと思ったのに、ユースタス屋はそういうときに限って、いつもそれをぶち壊すような言葉を投げ掛けてくるのを、俺はすっかり忘れていた。

「何なら一緒に入るか?」
「だっ、誰が入るか!」

笑いながら言われた言葉に、冗談だと分かっているのにまるで条件反射のように赤くなる頬が嫌だった。これ以上何かユースタス屋に言われる前に、なら先に借りる!と吐き捨てるように声を上げると、笑っているユースタス屋の横を通って急いで風呂場に向かった。



ユースタス屋を待たせて風邪でも引かれたら困るから、熱いお湯を浴びてさっと終わりにした。途中、やっぱり風呂沸かそうか?と扉越しに声をかけてきたユースタス屋には遠慮しておいた。そこまで気を使わせる気はない。
そう思ってあがったのに、新しく出されたらしい下着とこの間俺が着用したスウェットを出されて、どちらにせよ気を使わせてしまったことを知る。

「ユースタス屋、わざわざありがとな、これ」
「あぁ、気にすんな。あんなに濡れてちゃ着れないだろ?」

急いで上がると先にユースタス屋にシャワーを浴びさせて、それから服の礼を言う。ユースタス屋は濡れた髪をタオルで拭きながら、何でもない風に笑った。

「てか、どうするお前。泊まってく?」
「や、でもこの間…」
「別に、遠慮はしなくていいからな。親いないし」
「そういや出張なんだっけ?」
「そーそ。だからトラファルガーの好きでいいわ」

つっても、服ねェけど、と言ったユースタス屋に、確かにと唸る。シャワーを浴びている途中に、びしょ濡れのシャツとスラックスを洗濯してもいいかと聞かれた俺は二つ返事で了承したのだ。だってあんなの、そのままにしといたってどうしようもないし。

「帰りてェなら、制服もすぐ乾かすけど」
「…ん、いいや。泊まってもいいか?」
「もちろん」

正直泊まることに躊躇いがなかったわけではないけれど、そうやってまた考え込みそうになった自分を慌てて引き戻す。別に、深く思う理由などないのだ。自分でそう言い聞かせながら、泊まると言って嬉しそうな笑みを浮かべたユースタス屋に俺も何でもない風に笑った。

帰ってきたのがちょうどいい時間だったから、夕飯はカレーでいいかと言ったユースタス屋に頷いて、準備を手伝って一緒に夕飯を作った。食べ終わったあとは適当にテレビなんか見て、だらだらと時を過ごす。しかし明日が休みで本当によかった。休みじゃなかったらきっと朝になってもこの雰囲気を引きずったまま出れなくて、絶対に俺はユースタス屋に今日はサボろうって言ったと思う。その点は気が楽だった。
ただ、その気楽さもいつまでも続かない。問題はそろそろ寝るかという時分になって勃発した。

「トラファルガー、ベッド使っていいぞ。うち布団ねェし」
「いや、ユースタス屋使えよ。俺別にソファでも大丈夫だから」
「よく言うぜ。お前絶対ソファじゃ寝れねェ人間だろ」

お互いどちらで寝るかで地味な口論。俺的にはわざわざ泊めてもらったわけだからここのソファでも全然平気なんだけど、ユースタス屋は客人に気を使うタイプらしい。やたらとベッドを推してくるが、何となく使うのは悪い気がした。てか俺ホントにソファでも大丈夫だし。
いい加減拉致があかないと思ったのか、頭を掻いていたユースタス屋が不意に、いいこと思いついた、と言った。ついて来いと手招きされて、そのままリビングからユースタス屋の自室へ。そしてごろりとベッドに寝転がったユースタス屋に、何だかよく分からないまま突っ立っていたら、ポンポンとユースタス屋がベッドを叩いた。

「トラファルガー、来い」
「は!?」

俺の目の錯覚じゃなかったら、ユースタス屋は大袈裟にも俺に向かって手を広げているように思えるのだが、もちろん目の錯覚だと思いたい。
だってお前、それ、つまり一緒に寝よう的なアレなんだろ?いや、無理だし。何が無理とかそういうんじゃなくて、無理だし。一緒にとか、絶対寝れない。つか寝る必要もないじゃん。
立ったままぐるぐるそんなことを考えていたら、痺れを切らしたらしいユースタス屋に腕を引かれてそのまま不本意ながらベッドにダイブ。早く来いよと拗ねたように言ったユースタス屋の顔が近すぎて、何かもう、駄目だ。

「トラファルガー、お前また顔赤い」
「っ、るせー、見んな!」

金取るぞ、と安っぽい脅し文句でユースタス屋に背を向ける。なるべく端の方に寄ったけど、出て行くという選択肢はなかった。だけど、そんなに端に寄ったら落ちるぞ、とユースタス屋に言われて後からぐいっと引き戻されて。ユースタス屋の吐息が首にかかって、やっぱり出ようかどうか真剣に迷う。迷うけど、普通に考えたらこうやって変に意識してる俺のほうがおかしいんだから、やっぱりここは無心で…でも心臓が煩くて顔が熱くて無心でなんていられそうにない。この短時間で何度もこの変な気持ちを押し殺そうとしたのに、全くうまくいかないのは何故か。どうしてもユースタス屋が気になる。気にしたくないのに気になる。意味が分からん、男なのに、これも一体何回目だ。俺は一体どうすればいいんだ。

「…トラファルガー」

ユースタス屋に肩を掴まれてびくりと体が震えた。そのままユースタス屋のほうを向かされて、間近に見た顔に慌てて距離を取ろうとすれば腰に腕を回されて逃げられなくされる。え、なんで、とか思ったけど、喉に何か詰まったみたいで何も言えない。意味が分からないほど心臓が激しく波打っていて、それがユースタス屋にバレませんようにとただひたすら願う。そっと目を落として、薄暗闇では顔があまり見えないことに少し安堵した。
なのに。ユースタス屋の手が頬に触れて、触れられた部分がじんわりと熱を持っていく。やめてほしい、これ以上掻き乱さないでほしかった。だけどそれを知らないユースタス屋は顔を持ち上げて視線を合わせる。薄暗闇の中で、ぼんやりとしたユースタス屋の赤い瞳を見た。

「…な、…んっ?!」

不意にユースタス屋の顔が近づく。何なんだと言おうとすれば、唇に触れる感触と目の前に見えるユースタス屋のドアップに思わず目を見開いた。

「……っ…ぁ…、な、にすんだよアホ!」
「いってェ!」

びっくりした。びっくりして少し放心してしまった。
ハッと意識を取り戻したのは、リップ音を立てて唇が離れていき、こちらを見つめるユースタス屋の赤い瞳を見つめ返したとき。激しく高鳴る胸を宥め、必死に言葉を紡ぐとついその頭を叩いた。

「なんなんだよお前は!キス魔か!」

動揺を隠そうとしたせいでデカイ声が静かな部屋に響く。他にも言いたいことはたくさんあったが、咄嗟に思いついた上に無難そうな言葉がそれだった。
ただ自分で言っておきながら、肯定されたら嫌だという矛盾も孕んでいた。ちょっとからかっただけだろ、怒るなよ、なんて笑いながら言われて。それに俺は笑い返せるのか。
だけどユースタス屋の言葉はそんな俺の予想を飛び越え過ぎていて、再び目を丸くさせるのには十分だった。

「違ェよ。なんか、ほら…そういう雰囲気だったろ」
「……は?ちょっと待て、意味が分からない。お前は自分でそういう雰囲気だと勝手に判断して、勝手にキスするのか?」
「だから…そういうんじゃなくてだな…あー!何てんだこういうの!」
「知らねぇよ!」

むしろ俺が知りたいわ!と一喝したいのを堪えて、いきなり頭を抱えて唸り出したユースタス屋を何とも言えない気持ちで見つめる。困惑し過ぎて何が何だか。

「要は、さ…お前俺のこと好きだろ?」
「…は、…え、なに言っ…」
「それで、俺も好きだ。だから…」
「はぁあ!?まてまて、マジで意味分かんないから!」

何が何だか分からないので仕方なくユースタス屋の言葉を待っていたら、突然の指摘、そして告白。それを明日の天気ぐらいにさらっと言ったユースタス屋に全くついていけない。
薄暗闇だろうが俺が大層狼狽えているのは分かったはずだ。そしてユースタス屋はむしろそんな俺の反応に驚いたらしく、きょとんとしたような顔をしていた。

「何そんな慌ててんだよ」
「慌てるもなにもっ…、まて、分かった。一つずつ確認していこう」
「確認?」
「まず俺はお前に好きだなんて言ったことないんだけど」
「知ってる。でも好きだろ?」
「いやだからその自信はどっからくるんだよ!てかお前は俺が好きなのか?!」
「好きに決まってんだろ。雰囲気で分かれよ」
「分かるかァ!」

夜も遅いってのにこんなにギャーギャー騒いでるのはユースタス屋のせい。だって何だよ、雰囲気って。
じゃあ何か?俺はユースタス屋好き好きオーラを出してたってことか?そんでユースタス屋も出してたと?だから分かるって?ふざけるな、分かるわけないだろ!

とりあえずユースタス屋のふざけた言葉を聞いた今の俺の思いを一通りぶつけてみた。そしたらユースタス屋はすごく驚いた顔をして。何となくだけど、これが所謂カルチャーショックなんだろうなって、どこか冷静な部分で考えた。

「マジか…俺はてっきりお前にも伝わってるかと思って…」
「てかさ、それがユースタス屋の思い違いだったらどうすんだよ」
「そう思ってるうちは手出さねェ」
「…じゃあ俺がユースタス屋好きなのは確定ってこと?」
「違うのか?」

じっと瞳を見つめられ、思わず黙り込む。正直な話、きっと俺はユースタス屋が好きなんだと思う。でも認めたくなくて、ずっと知らないふりをしていた。
別に、このままでもよかったのに。せっかく押し込めようとしてたのに。

「…俺、男だぞ」
「今更だろ?」

ぽつりと呟いた言葉にユースタス屋は笑う。嬉しそうに。
俺はそれ以外何も言うことがなかった。ユースタス屋もそれで理解したらしい。絡められた指をぎゅっと握られた。

「なぁ、俺、何て言えばいい?」
「なにが?」
「何か…今までずっと雰囲気でやってたから、こういうときの言葉知らねェんだ。日本語でも英語でも。なぁ、何て言えばいい?」

教えてくれ、と額を合わされ、唇が触れてしまいそうな距離でユースタス屋が呟く。それに柄にもなく顔が赤くなった。付き合うときの決まり文句なんて聞き慣れていて何ともないのに。なのにユースタス屋相手だとひどく気恥ずかしい。視線をそらせば名前を呼ばれて、仕方なく呟いた。

「…付き合って、ください…とか?」

小さな声でぼそりと呟く。ちらりと見たユースタス屋の瞳はひどく真剣で、それがまた恥ずかしかった。

「トラファルガー、好きだ。付き合ってくれ」
「……俺で、よければ」

だけど嬉しかったのも事実だ。握られた手をぎゅっと握り返して俯く。明るくなくてよかった。そしたらきっと死ぬほど赤いこの顔を見られてただろうから。

「あー、やっぱりお前のこと好きだ。かわいい」
「なっ…可愛くねぇし!」

突然そんなことを言い出し、笑って抱き締めてくるユースタス屋を抱き返しながら頭を叩いた。全然こんなんじゃ意味ないの知ってるけど、どうにもこの気恥ずかしさを隠したくて。何だか中学生の初恋のような雰囲気が嬉しいような、恥ずかしいような。

「Now, you belong to me.」
「え?」
「I love you, LAW!」
「は?ちょ、落ち着けって!」

抱き締める腕にさらに力が篭り、耳元で囁かれる言葉に顔が赤くなる。メーターが吹っ切れでもしたのだろうか、暫くユースタス屋は英語で話続け、だから落ち着けともう一度頭を殴ってやって落ち着きを取り戻したらしい。悪い、と言ったが顔はニコニコ笑っていた。

「喜びすぎだ、バカ」
「うん、でも嬉しい」

好きだから、と囁かれた言葉にバカと再度呟く。けれど回した腕を離さないようにしっかりと力を込めた。






企画に参加してくださったあんこ様に捧げます!
大遅刻なうえにこんな出来ですみません…!しかも裏も入れられず…うう…。
でもとっても楽しく書けました!外国人キッドいいですね(^^)
こんなので宜しければどうぞ!リク有難うございました!




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