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 寒い日の暖まり方


少し寒くなり出した頃、炬燵がほしい、とふと思い出したようにトラファルガーは言った。大方この間出掛けたときに見つけた炬燵の存在を、今しがたテレビに映っている映像を見て思い出したのだろう。
面倒だ、と言えば頬を膨らませて拗ねたような顔をされる。その横顔に餓鬼くせェなと思ったが、炬燵に入りたい、とちらりとこちらを見つめて呟かれたその一言に溜め息を吐いた。
俺は何かとこいつに甘過ぎると思う。



「炬燵だぞユースタス屋、炬燵!」
「何でそんな騒いでんだよ…」

頼み込むような瞳に根負けして、結局その日のうちに炬燵を買った。
選んだのは時期が終わったらすぐに収納出来るように脚が取り外し可能なやつで、全体が白色のシンプルなもの。帰ってきたらすぐに脚を取り付けて、トラファルガーの選んだ炬燵布団もセットして。
途端に騒ぎ出すトラファルガー。瞳をキラキラと輝かせて炬燵に入る様に苦笑する。

「別に珍しいもんでもねェだろ」
「うん、でも俺、入ったことないから」
「…炬燵に?」
「ん」
「そっちのが珍しいな」
「だからずっと炬燵ほしかったんだよなー」

自分の家には炬燵がないからずっと憧れだったらしい。ニコニコ笑うトラファルガーは上機嫌で、まあこいつの笑顔が見れるならこんなの安いもんかなとか思えてしまう。

「初炬燵の感想は?」
「このまま寝れそう」
「ほんとに寝んなよ」
「んー…考えてみる」

どうやらこいつも炬燵の魔力にすっかりはまってしまったらしく、いそいそと中に潜り込んでいく姿に苦笑した。これから冬になったら毎回これを出さなきゃいけなくなるかもな、なんて思いながら潜り込んでいった姿を見つめる。

「…眠い」
「眠いのはいいけどお前…足冷たいんだけど」

視界から消えたトラファルガーがぼそりと呟いた、その瞬間素肌にあたるひんやりとした感覚。
買ったのはそんなに大きくもない炬燵だ。子供でもない限り寝てしまえば反対側に足が伸びるのは当然のこと。暖かいならまだしも、冷たいこいつの足に触れられていいとは言えない。だがトラファルガーもあたるのが気に食わないらしく、邪魔、と呟くと軽く蹴られた。

「こんな炬燵で寝ようとするからだろ。畳むか横に伸ばせ」
「ユースタス屋がして」
「脚長いから無理」
「俺だって長…、ぁ、っ!」
「あ、悪ぃ、不可抗力」
「嘘つけ!」

くだらない言い合いの最中も何かとトラファルガーが足を蹴ってくるので軽く蹴り返す。見えない水面下の攻防の中、適当に足を動かしていたらどうやらトラファルガーのモノを服越しに擦ってしまったようで。途端、ガバッと勢いよく起き上がったトラファルガーに思わず笑う。
赤くなった顔に、わざとじゃないって、と付け足して終わるのは何だかつまらなくて、くつりと笑うともう一度足を伸ばして今度はそこを先程とは逆にわざとらしく軽く擦った。

「ふぁ…、っ!ユースタス屋!」
「ん?どうかしたか?」
「っ、どーしたもこーしたもっ…あっ!ばか、ゃめ、やっ…!」

キッと睨みつけてくるトラファルガーを軽く流すと足を押し付けて軽く揺する。そうすればびくりとその体揺れ、強く布団を握ると何とか口端から洩れる声を抑えようとしていた。
感じてるのか、と聞くのは野暮だ。耳まで赤くして俯き様に震えるトラファルガーを見ればそのことは明確だった。そうすると俺はもう愉しくなってきて、テーブルに肩肘つきながらその様子をにやにやと眺めた。

「んっ、ぁ…っ、は、」
「トラファルガー?顔が赤いぞ?」
「あっ、も…ゃめ、ろ…っ!」
「何を?」
「ひっ、んん!」

涙目で睨みつけられても何ともない。動かす足に少し力を入れるとトラファルガーは小さく悲鳴を上げた。だがそれも一瞬で、ぎゅっと強く唇を噛む姿に目を細める。
びくびくと小さく震える体は炬燵から出て行く様子がなかった。嫌なら出て行けばいい、と言おうとしてやめる。出て行かない理由なんて分かりきっているし、わざわざ聞くのもあれだ。何よりそれを言ってしまったら素直じゃないトラファルガーは泣き出しそうだからやめておこう。

「ぁ、んっ、んー…っ!」

ただ、声を噛み殺して必死に堪えるトラファルガーは虐めたくなるぐらいには十分可愛かった。
さっきまで流されまいと睨みつけていた瞳は伏せられ、じわりじわりと涙の粒が溜まっている。快楽を堪えるように布団を握り締めた手、震える体に自然と唇が弧を描いた。
暴言を吐いていた赤い唇は、見れば小さく開かれ、閉じられの繰り返し。嬌声に負けて口の中で呟いた制止が声にならないといった様子だ。
可愛いな、とくつりと笑ってそっと足を離した。

「ぁっ、…?」
「嫌、なんだろ?」
「っ…!」

不意にやんだ刺激にこちらを見やるその顔に、今更、と書いてあってその分かりやすさに苦笑した。やっぱりこいつは体の方が正直らしい。
中途半端に与えられた刺激にトラファルガーが戸惑うような視線を寄越す。だがそれに答えることはせず、テレビを見つめれば息を詰めるような音がした。

「ユ、スタ、屋…?」
「何だ?」
「ぁ、…ぅ、っ…続き、して…」
「嫌なんじゃねェの?」
「足は、やっ…」
「気持ちよさそうにしてたくせに」

テレビに視線を向けたまま言えば、そこからトラファルガーは黙ってしまった。ちらりと視線を寄越せば俯いたまま。
その姿を見つめながら、何で俺はこうして誘いを無碍にするような言葉を吐くかなと溜息を吐いた。気をつけていても結局何かしら余計なことを言ってしまう。
しょうがない、可愛いこいつが悪いのだ。そんな態度を取られたら誰だって意地の悪いことをしてしまいたくもなるだろう。もちろんそのことを知っているのは俺だけで十分だが。

「…おいで、ロー」

気を取り直すと出来るだけ優しい声で名前を呼んだ。おいで、と小さく震える肩に再度呼びかけるとトラファルガーが立ち上がる。近くまで来たら腕を引っ張って、自分の脚の上に向かい合うようにして座らせた。そうすればトラファルガーはぎゅっと抱きついてきて。

「…怒った?」
「何で怒るんだよ」
「だって…溜息、吐いてた」
「そりゃ自分にだ自分に」

小さく呟かれた言葉に、お前は関係ないと言えば、本当?と不安を映す瞳に覗き込まれて思わず頬が緩まる。額にキスすると、本当だと抱きしめた。安心したのか擦り寄ってくるトラファルガーが可愛くてその頭をそっと撫でる。

「じゃあ…続き、するか?」

先程までの雰囲気を彷彿とさせるように甘ったるい声を使って耳元で囁けばトラファルガーの顔が赤くなり、くつりと笑う。
する、と小さく呟かれ、見つめ上げるその瞳に目を細めると唇を塞いだ。



とりあえず謝罪の意も込めて前戯で散々気持ちよくしてやった。二回はイかせてやったし、トラファルガーが泣きながら早くと強請るまではたっぷり慣らしてやった。
そのせいで敏感になった体を勢いよく突き上げると、トラファルガーの唇から悲鳴じみた嬌声が洩れた。耳元で直接響くそれに煽られるようにして腰を動かす。

「んっぁ、はっ、あっ!ひっ、んん、んっ!」

ぐちゅぐちゅと響く卑猥な音にトラファルガーが恥ずかしそうに首を振る。その様子に笑うと、首に腕を回し、上体を凭れかけるトラファルガーの突き出た尻を掴み、何度も奥を突いてやった。

「はっ…えっろいな、お前…気持ちいいだろ?」
「ふっ、ぁ、んっ!あ、きもち、ゃ、いいっ、ぁあ!」

すでに全身の力をぐったりと抜いて、俺にされるがままのトラファルガーの体をいいように食らい尽くす。ぼろぼろと泣きながら快楽を訴えるその表情にくらりときて、ひどく耽溺性の高い麻薬のようなその感覚に目を細めた。

「んぁあっ、や、いっちゃ、あ、きっどぉ、い、くっ…っ!」
「ん、イっていいぞ」
「ひっ、あ――っ!!」

ぐちゅん、と勢いよく突き上げるとトラファルガーは何度も震えながら絶頂に達した。その中の強い締め付けに眉根を寄せる。危うくイくとこだった、なんて思いながらまだ余韻にガクガク震える体を抱きしめてゆっくりと律動を再開した。

「あっ、ゃあ、まっ…ひっ、あ!だめぇ、またすぐ、いっちゃ…っ」
「っ…何回でもイっていいぞ」
「ふぁあっ、ゃら、こわれちゃ、よ…ひっ、あぁ!やぁ、はげし、ぁ、あっ!」
「かわい、ロー…何にも考えられなくなるぐらいよくしてやるよ」

泣きながら縋りつくトラファルガーの目尻にキスすると涙を舐め取る。もっと気持ちよくなろうな、と囁けば蕩けた瞳で頷いたトラファルガーにこれからの痴態を想像して唇を舐めた。




「あれ?今日は炬燵はいんねェの?」
「うっさい黙れ!」




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