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 愛の奇跡は起こりうるか

キッドと出会ってから、ちょうど一年が過ぎた。今日はキッドと初めて出会った日、クリスマス。
キッドは一年前とは見間違えるほど立派に成長していた。正しくキッドという名が似合うような立派な犬に。

「ただい、まっ!?」

友達と遊んで帰ってきたローは、頬を寒さで赤く染めながら玄関の扉を開けた。今日、両親は遅くまで帰ってこない。けれども自分にはキッドがいる。
いつもはただいま、と言えばリビングから駆け寄ってくるキッドがいた。だけど今日、ローが聞いたのは「おかえり」という誰とも知らない男の声と、玄関に入ると同時に伸びてきて自分を抱き締めた白い腕。

「…え、ちょ…は、?」
「おかえり、ロー」

混乱でまともに口も聞けないローに、男は再度言う。少し腕を離して、ローの顔を覗き込んでにこりと笑った。その頭に生える、赤茶色の犬の耳。

「……キッ、ド…?」

困惑の表情を浮かべたローが、頭の耳を見て呟いた。それを聞いたキッドが嬉しそうに尻尾を振る。ご主人様だからやっぱり俺のことが分かるのか、とキッドはローの頬にキスを落とした。

「でも、なんでキッド…人間に…」
「俺もよく分かんねェんだ。でもずっとローと喋りたいって思ってたから、すげェ嬉しい」

本当に嬉しそうにキッドがそう言うから、ローの顔も自然と綻んでしまう。キッドがどうして人間になったかなんてどうでもいい。もしかしたらサンタからのクリスマスプレゼントとかもしれないと、あれほど否定していた存在にこっそり感謝もした。

「ずっと人間のまま?」
「いや、犬にも戻れるぜ」

そう言うとキッドの体がしゅるしゅると縮んでいく。両手は前足に、両足は後ろ足に。そしてローの腰ほどになったキッドがローを見上げてワンと一声鳴いた。ローがキッドの頭を撫でると、再びキッドの姿が人間へと戻っていく。そこでローはハタと気づく。キッドが裸であることに。
ローは急いでキッドの手を取ると、クローゼットから適当に掴んだ父親の服をキッドの方に投げつけた。早く着替えろと言うと、赤くなった頬を冷ますようにパタパタと手で顔を扇ぐ。
初めて見た、父親以外の男の体。ローよりいくらか歳上に見えるキッドは、がっちりと筋肉のついた男らしい体をしていた。そのくせ色は白く、赤い髪と瞳がよく映える。格好いい、と素直にローは思った。今までのまぐわいを人間の姿のキッドと置き換えると、それはそれは顔から火が出そうなくらい恥ずかしいものだった。

それにしても、とローは思う。キッドが犬に戻れる点ではよかった。そうでないと親に隠しがつかない。最悪気持ち悪いと捨てられる可能性もあったはずだ。ましてや息子との交わりがあるならなおのこと。
ローは心中で一人安心しながら、ぎゅっと抱きついてくるキッドの頭を撫でる。キッドは後ろからローを抱き締めた体勢で、ローの肩に顔を埋めていた。まるで離さないとでもいうように、その腕には力が篭っている。そんなキッドの様子にローはくすりと笑った。見た目はローより歳上なのに、まるで大きな子供のようだ。

幸い、今日の両親の帰りは遅い。恐らく日付変更間近になるだろう。それにお手伝いさんも冬休みをもらって今はいなかった。
キッドと二人きり。それがローにむず痒い感覚をもたらす。昨日までのキッドと中身は変わらない。姿が変わるだけでこんなにも緊張するものなのかと、ローはひっそりと顔を赤らめた。

「…キッド…ご飯食べる?」
「まだ。ローとこうしてたい」

この雰囲気に堪えきれなくなったローは離れられるような話題を提供したが、あっさりとキッドに切り捨てられてしまう。どうしようと柄にもなく考え込んだが、ちゅっと耳に触れる感触にその考えもどこかに吹き飛ぶ。

「キ、キッド?」
「ん?」

ちゅっちゅっと耳に落とされるキス。耳朶を柔く食んで舌で縁をなぞる。耳元で聞こえるぴちゃぴちゃという音にローはびくりと体を震わせた。咎めるように呼んだ名前も無視されて、耳を舌で嬲られる感触にローは息を詰めた。

「…ロー、耳気持ちいいの?」
「やっ、知らな…」
「ウソ、すげェやらしい顔してる」

唇を離したキッドが覗き込んだローの顔は赤く火照っていて、涙の溜まった瞳に見上げられ、こくりと息を飲む。キッドは乾いた唇を舐めると、するするとローの服を捲り上げた。それに不思議そうな顔をしたローの頬にキスすると、ふにふにとしたピンク色の乳首をきゅっと抓んだ。

「ふぁっ!」

途端にローの体がびくんと揺れる。キッドは堪らないと言うようにもう片方の乳首も指で挟み上げた。

「ローのここも弄ってやりたかったんだけど…あの体じゃなかなか、な。ど?気持ちいい?」
「わか、なっ…や、引っ張っちゃ…んんッ!」
「分かんない?少し触っただけでこんな尖ってんのに?」

エロいな、とキッドは笑うとぷくりと腫れ始めた乳首に爪を立てた。そうすればローがまた甘い声を出す。分からないと首を振っているが、体は完全に愛撫に悦んでいた。
すっかり尖りきった乳首を弄りながら、もう片方の手は腹を伝って下へ下へとおりていく。ローのズボンと下着を脱がせてやると、その中心で震える幼い性器をキッドは片手で柔く包み込んだ。そしてそのままくちゅくちゅと上下に扱い抜く。耳を舐めあげながら乳首を虐め、性器を刺激してやる。未発達の体が享受するには些か快楽が大きすぎたのか、ローはぽろぽろ涙を流しながら首を振った。

「ふっ、ぁあ!そ、な、したらぁ…やっ、いっちゃ、よ…っ!」
「イっていいぜ、ロー。たくさん気持ちよくなりな?」
「んぁ、あっ…いく、ゃっ、いっく、〜〜ッ!」

乳首に爪を立て、先端をぐりぐり刺激してやるとローは激しく腰を揺らしながら呆気なく絶頂に達した。キッドは最後の一滴まで搾り取るようにして手を動かしてローの射精を手伝う。
くたりと体を預け、絶頂の余韻に浸るローの頬にキスを落とすと、キッドはその白濁を指に絡め尻穴をくるりと撫でる。ぴくんと揺れた肩を尻目にゆっくりと一本目を挿入していった。

「ふぁ、あっ…ゃ、な、か…変な、かんじ…」
「指挿れるの初めてだもんな」

今まで散々使っていた自分の指とは違って、太くて節くれ立った男の指。それがローの中をゆっくり出入りし、性器とはまた違う感覚にローは体を震わせる。
くちゅ、ぐちゅ、と音を響かせ動いていた指にもう一本付け加えられ、終いには三本ともローの中に入ってしまう。三本の指でずっぷり広げられた小さな尻穴を見つめながらキッドはこくりと喉を鳴らした。貪欲に蠢くそこがどれほど気持ちいいのか知っている。自ずと手の動きが早くなっていった。

「ンッ、ぁあ、やっぁ…そこ、ゃ、だめっ、!」
「ここだっけ?ローの一番いいところ」
「あっあぁ!ゃら、そ、な、しちゃ…ひっ、んんー!」

手早くキッドは前立腺を見つけるとしつこくそこばかりを弄る。指で挟むように揺さぶられて、ローはびくびくと脚を震わせた。今まではすぐに挿入するしかなかったから、こんなねちっこい前戯などどうしていいか分からない。すぐさま駆け上がってくる絶頂感にローはふるふると首を振った。

「あっ、もぉ…そこ、やっ、ぁ…!ひぅっ、だめっ…また、きちゃ…ッッ!」
「いいよ。イきな、ロー」
「ん、ぁっ――!!」

耳に唇をあてて囁くと、ローの体がびくりと跳ねる。それと同時に指の締め付けがぎゅうぎゅうときつくなって、ローは二度目の白濁を吐き出しながら絶頂に達した。
キッドの指と舌で与えられる知らなかった快楽に、とろりとローの瞳は蕩けていた。犬の姿のままでは味わえなかっただろう快楽。余韻に浸って小さく体を震わせ、忙しなく息をする。過ぎる快楽に、頭はもうとっくに何も考えられなくなっていた。
キッドはそんなローの姿が可愛くてどうしようもなくて勝手に緩む頬が止められない。ロー、と名前を呼んで自分の方を向かせると、唾液でぬらぬら光る唇に吸い付くように唇を合わせた。

「んっ…ふ、ぁ…」

鼻からぬけるローの気持ちよさそうな声を聞きながら、キッドはゆっくりと髪を梳く。舌を絡めれば拙いながらもローも舌を擦り合わせて。短い舌を伸ばして必死で絡めてくるローが可愛くて、キッドはぎゅっとローを抱き締める。
そしてズボンのジッパーを下ろし、下着をずらしてすっかり硬くなった性器を取り出すと、解れてぐちゃぐちゃになったローの尻穴に擦り付けた。

「んむっ!?ん、んっー!」

突然のことに驚いたローが目を見開くが、最早キッドの興奮は止められない。尻を両手で抱えられ、割り開かれて、ズブズブとゆっくりキッドのモノがローの中へと入っていく。人間になっても相変わらず大きなキッドの性器はどんどんローの中に入っていき、ローは苦しさにキッドの胸を叩いた。

「はっ、ぁ…!や、キッド、」
「ん?やっぱりゆっくりじゃ嫌?」
「ふ、ぇ…?なに、いっ…、!!ひぁあッ!」

何を勘違いしたのか、涙目で見つめあげられたキッドはローの腰を掴むと残り半分ほどを一気に突き入れた。徐々に徐々にという形でしか今まで挿れられてこなかったローにとっては堪ったものではない。突然奥まで押し入ってきたその熱い塊に目を見開くと脚をびくびくと痙攣させた。

「っ、は…ロー、締め付けすぎだって…」

宥めるようにローの目尻にキスをしたキッドが呟く。だがローにしてみればそれどころじゃない。力を抜けなんてもっての他だ。
せめて慣れるまで待ってほしい。涙の滲む瞳で必死にキッドに伝えようとしたが、そもそもキッドはそんなに我慢強くないのだ。ましてこんな感じきっているローの姿を目の前で見せつけられたらなおさら。

「ロー…もう動いていい?」
「ゃっ、だめ、まっ…あぁッ!」

もう堪えられないといったようなキッドにローの制止は呆気なく流された。がっしりと腰を掴んだ手のせいで逃げられもせず、ギリギリまで持ち上げられて一気に奥まで突き上げられる。だんだんその間隔も短くなり、動きが早くなるにつけてローは頭がおかしくなってしまいそうに感じた。逃げようにも腰をくねらせることしかできず、キッドの力強い腕で軽い体は簡単に持ち上げられる。

「ッッ、ぁ、!〜〜!!」

ぐちゅん、と奥に叩きつけられ、ローは声も出せないほど感じていた。おかしくなる、と舌足らずに伝えられた言葉にさらにキッドの欲に火が点る。

「ひっ、ぁあ!やっ、そこ、も、ゃらあっ!あっあ、ぃく、あ、でちゃ、よぉ!」
「っ、く…は、ロー…かわいい…ここ、たくさん突いてやるからいっぱいイきな?」
「ゃっ、そ、なぁ…あ、ぁ、!いくっ、いっ、――!」

びくびくっとローの腰が激しく震え、三度目の絶頂。だがキッドの動きは止まらず、達している間も前立腺を強く突かれ、ローは体を仰け反らせると喉を引き攣らせた。
今までに感じたことのない、ローにしてみればまさに快楽地獄。ぼろぼろと首を振りながら必死でキッドに縋りつく。キッドはそんなローを愛しく思いながら、涙の流れる頬にキスをする。体が仰け反った際に視界に入った真っ赤な乳首を口に含むと舌でころころと転がした。吸ったり噛んだりしてやれば、ローはさらに可愛らしい反応を見せる。ぎゅっと頭を抱き締めてくるローにキッドもローを強く抱き締め返す。顔を上げるとどちらからともなくキスをした。

「ふぁ、んんっ…ぁ、きっど、すきっ…すきぃ…!」
「っ、俺もすきだよ、ロー」

俺はお前のものだ、そう言うとローは嬉しそうに笑った。互いに何度も好きを繰り返し、確かめ合うように唇を絡ませて触れ合う体温を愛しく思う。目の前のキッドを抱き締めながら、最高のクリスマスだとローはぼんやりと思った。



目が覚めるとベッドの中にいた。横を見れば犬の姿のままですやすやと眠るキッド。もしやあれは夢だったのかと、ローは少し不安になったが、起き上がろうとして腰に感じた鈍い痛みにそれどころではなくなった。

「いっ、た…」

腰を擦り、小さく洩らしてしまった声に隣のシーツがもぞりと動く。キッドを起こしてしまっただろうかと思う前にぎゅっと暖かい何か抱き締められた。

「ロー、おはよ」

見ればにこりと笑う、人間の姿のキッドがいて。ローはその姿を暫しぼんやり見つめながら、夢じゃなかったんだ、と呟く。それにキッドは笑いながら頷いた。夢じゃねェよ、とローの頬にキスを落とす。

「体、大丈夫か?」
「え、…あ、うん。大丈夫」
「痛ェならまだ寝てた方が…」
「だ、大丈夫だって!」

ローがどこかぎこちない笑みを返すと、キッドは不審そうにローを見やる。顔を覗き込まれて思わずふいっとそっぽを向いた。その頬はじわじわと熱をもっていって。

「どした?顔赤いけど…」
「赤くない!見るなっ」

そう言った瞬間キッドと視線がかち合ってしまい、ますます顔が赤くなっていく。キッドはそれを面白そうに、不思議そうに見つめるが、ローにとっては堪ったものではない。
かっこよすぎるのが悪い、ローがぼそりと呟くと、キッドの耳がぴくりと揺れる。そしてパタパタと揺れる尻尾。人間だったなら聞こえなかっただろうが、キッドは犬。気付いたときにはもう遅く、ローはぎゅっと抱き締められていた。

「あー、お前ホント可愛い」
「かわいくないっ、離せバカ!」

真っ赤な顔でジタバタ暴れるローを抱き止めるキッドの頬はだらしなく緩んでいる。かわいいかわいいと顔中にキスを落とされ、最初は恥ずかしがって嫌がっていたローも、終いにはされるがままに。唇に触れるだけのキスを何度も繰り返し、潤んだ瞳で見上げてくるローにキッドは抱き潰してしまいたいほど愛しいと思った。

「ロー…好きだよ」
「ん、おれも…」

やっぱり最高のクリスマスだと、キッドに抱き締められながらそう思った。




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