▼ キスにはじまりキスにおわる
三十一日はどうしたいかと聞くと「ユースタス屋とずっと一緒にいたい!」と言われた。久しぶりに少し長く休みがとれるんだからどこかに行かなくていいのだろうか。まあ本人は別にいいらしいし一緒にいたいと言われて嬉しくないわけないからいいか。落ち着いて家で過ごすこともあまりないからたまにはいいかもしれない。
…と、最初は思っていた、が。
「んー、ユースタス屋ぁ、あついー」
「なら引っ付くな」
向い合わせの状態で座ったトラファルガーの首根っこを掴んで離そうとすれば嫌だと首に回された腕に力が入る。諦めて好きなようにさせるとまたじゃれてくる。特に何がしたいってわけでもないだろう。酔っ払ってんだこいつは。
酔っ払いは高確率ですぐ寝るからな。いい雰囲気になっても構わず寝るからな。…まあこの場合は酔っ払いと書いてトラファルガーと読むが。
はぁ、とため息が口を吐いてでる。今年最後の日にため息とか俺ちょっと疲れすぎじゃないか。これだから酒は飲ませたくなかったんだ。
「――…ユースタス屋!ちゃんときいてるのか?」
「…あ?あー悪い、何も聞いてない」
グダグダと考え事をしていたら、どうやらトラファルガーの話を右から左に受け流してしまっていたらしい。正直にそう言うとこいつは少し拗ねたようで目線をそらす。が、またすぐ何か考えついたようにニヤリと笑うとじっと俺の顔を覗き見た。
「じゃ、ユースタス屋がちゅーしてくれたらゆるす!」
「……もう眠いのか?ベッドまでは運んでやるから安心しろ」
「ちげーよ!つかねむくねーし!」
ムッとしたようなトラファルガーを見てあのなぁ、とまた漏れそうになったため息をどうにか堪えた。
赤い顔とか涙で潤んだ目とか熱い吐息とかさっきから見せつけられてあまつさえ抱き着かれてキスしろときたもんだ。蜘蛛の糸のような理性しかないのにそんなこと言われたら堪えられないに決まってる。
何もなかったら言ったことを後悔させてやるといった状態までもってこさせるが生憎こいつは酔っ払いでしかも未成年者だ。どちらか片方だったらどうにでもなるが両方にあてはまると流石に気も引ける。そんな葛藤も知らずにこいつは早くとねだるもんだから俺の理性はものの3秒で終わった。これじゃないに等しいだろ。
煽ったのはてめェだからな、とソファの上に押し倒すと言われたようにキスをした。
絡まった舌からは先程までこいつが飲んでいた酒の味がした。唇を離すと首筋に舌を這わせて服の中に手を伸ばす。途端、上から遮るようにして絡み付いてくる腕。
「んっ、ちょ…なに?…すんの、っ?」
「当たり前だろ?煽った責任はとってもらわねェとな」
そう言って服を捲りあげると乳首に舌を這わす。這わしたそこにゆるく歯を立ててやればビクリと肩が震えた。もう片方は指で摘まんだり軽く引っ掻いたりして時折強く爪を立てる。片方を舌でゆるく愛撫してもう片方を指で強めに弄るとそれだけでビクビクと震える敏感な身体。腿の内側をゆるゆると撫でるも反応してるモノにはわざと触れずに焦らす。
「ひ、ぁ…っん、ゃ、ユースタ、屋、っ!」
「何だ?」
「ぁ、も…そこ、は…い、から…ッ!」
じわりとトラファルガーの目に涙が滲む。制止のつもりか、力の入らない手に肩を掴まれた。ただ添えるだけのそれにあまり意味はない。
散々口や指で嬲られたそこは赤く腫れていて少し弄るだけでもトラファルガーはビクリと肩を揺らした。アルコールも手伝っていつもより敏感になっているらしい。我慢できないと言うように腰が揺れる。そんな姿を見れば当然意地悪もしてみたくなるわけで。
「…どこを触ってほしいんだよ?」
「な、っ…わか、るくせに…!」
「ちゃんと言わなきゃ分からねェな」
ニヤニヤ笑うとトラファルガーは悔しそうに眉根を寄せた。顔を背けると口を結ぶ。まだ少しの理性ならあるらしい。それなら、とわざとらしく際どいところだけを触る。どんなに強がって見せても身体は素直で。耳に舌を這わせたり腰や内腿を撫でているうちに我慢できなくなったのか、涙で滲む目をこちらに向けるとゆっくりと口を開いた。
「っ、ユ、スタ、屋…下、も…さわ、って…?」
「最初からそう言えばいんだよ」
ニヤリと笑って下着ごと剥ぎ取ると足を掴んで左右に開かせる。途端にトラファルガーの赤い顔がさらに赤くなり、何事かと訝しんでいるうちに両腕で顔を隠された。今更そんなに恥ずかしがるものでもないだろうと思うんだが。どうかしたのかと聞く前に口を開いた。
「ゃ…っ、電気、ゃだ…けし、て…っ!」
「何だ、恥ずかしいのか?…見られてるもんな、全部」
腕をどかして羞恥心を煽るようにそう言うとまた泣きそうに顔を歪められた。こういう反応するから虐めたくなるんだよな。普段が普段なだけに、余計。
掴んだ腕を放せばまたそれで顔を隠すだろうから一つに纏めて片手で固定した。もう片方の手で後ろを触ると指を中に挿れる。
「今日は後ろだけ、な」
「ゃ、なん…ぁ、さ、っきいっ、たの、に…っ」
「すぐには言わなかっただろ。だから」
「…っ、今日、なんか…いじわる、すぎ…、っ」
「はっ、そうか?別に後ろだけなんて余裕だろ?淫乱」
むしろ後ろのほうが好きなんじゃねぇの。
耳元で意地悪くそう言うと違う、と言うように首を横に振られた。どうだかと内心呟いて指を増やす。ぐちゅぐちゅとわざと聞かせるようにして音をたてると羞恥に顔を赤く染めながらぼろぼろと涙を溢す、その姿に唇を舐めた。
「ひ、ぁあ!ァ、そこ、や、ぁっ!」
「…随分気持ちよさそうだな」
「ふぁ、だ、って…あぁっ!ゃっ、ん、も、いっ、ひ、あぁ!」
中で指をバラバラに動かしていいところをぐりぐりと刺激するといつもより敏感な身体はすぐに白濁を吐き出した。焦らされたせいもあるだろうが指だけでこんなになって大丈夫なのか。
足を掴んで肩に乗せると解されたそこに自分のモノを押し付ける。トラファルガーはまだ快楽の余韻に浸っているがこっちにはもう待てる余裕なんざない。
「ロー、っ…挿れるぞ、」
「ぇ、ゃあ、まっ…、ぁああっ!」
逃げようと動く腰を掴むと一気に奥まで押し挿れる。そのまま制止の声も聞かず激しく腰を動かすと強い刺激にトラファルガーはぼろぼろと涙を溢した。
掴んでいた腕を放すとすがるように首へと回された。激しい律動に抑えられない声が耳元でひっきりなしに響く。目の前にいるトラファルガーの乱れた姿と声に脳が揺さぶられるほど興奮する。
「ぁ、あっ!きっ、ど、ぉっ!ひっぁ、あ、ゃ、ぃく、ゃあっ!」
「っ、いいぜ…イけよ、ロー」
ぎりぎりまで引き抜くと一番いいところを一気に突く。ぐっ、と背中に爪をたてられて、中の強い締め付けに同時に白濁を吐き出した。
気づけばすでに日付も変わってしまっていたらしい。時計を見れば深夜と呼ぶに相応しい時間帯だった。
あのあと疲れてぐったりとしたトラファルガーをベッドに運んで寝かしてやった。隣ですやすやと眠るこいつの頭をそっと撫でると額にキスを落とす。それに気づいたのか、少し身動ぐと寝惚けた目がこちらを捉えた。
「…ユースタス屋、」
「何だ。」
「今年もよろしく」
「…ああ。」
ふ、と微笑むと唇にキスをする。今年最初のキスは何だか甘い味がした。
A Happy New Year!