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 だいすきっ、先生!

(家庭教師×生徒時代)


「お前人生舐めてるだろ…」

目の前でニコニコと上機嫌に笑う元生徒にため息を吐いた。や、でもまた再開するから元はおかしいな。現生徒か?まあそんなのはどうでもいい。

問題はこいつの成績。
せっかく家庭教師として来たのに勉強も全くしないでずっと喋ってるしたまーにしてもこの問題全問正解だったら俺と付き合ってとかふざけたこといいやがる。しかもそれでめちゃめちゃ難しい問題集用意してやったのに全問正解するところがまた…。俺は何一つ教えてないのに返却されたテストは全教科九十点以上。こいつ何で家庭教師なんて雇ってんだよってなるだろ普通。だからお子さん家庭教師いらないと思いますっつったらいきなり点数がた落ち。先生がいないと俺…とか謎の引き留めを受けるし(気落ちしてるように見せかけて俯いた口元はしっかり笑っていた。そもそも先生ってお前、初めて呼ばれたぞ。)、こいつの親にも頼まれるわで口元が引き攣る引き攣る。いっそ本当のことを言ってやろうとも思ったがこいつの親も親で絶対理解しねェと思ったから止めた。

「ユースタス屋が辞めるとか言うからだぞ」
「てめェにはどう考えても必要ねェだろ家庭教師」
「ユースタス屋がいなくなったら俺ダメになっちゃう……」
「キモいこと言うな」

はぁ、と再度ため息を吐くと仕方なく教科書を開く。が、相変わらずトラファルガーは勉強する気皆無なようでなぁなぁユースタス屋と纏わりついてくるもんだからいい加減に勉強しろよと軽く頭を小突いた。そうすればまたユースタス屋が触った!とか訳分からないことを言ってにやにや笑うトラファルガーに何度目かのため息を吐く。ああこれで俺の幸せはなくなったかもしれない。

「勉強しないなら帰るからな」

そう言うとトラファルガーはピタッと口を噤んで恨めしそうにこちらを見たが無視。こういうときはなかなか素直だ。
こっからここまでな、と範囲を指定すればトラファルガーは渋々ワークと向かった。時計を見て、じゃあ二十分で、と言えばこいつは何も言わずに手を動かし始める。最初から素直に言うこと聞いてりゃいいのによ。

「ユースタス屋」
「あ?」
「この問題十分で終わらすから終わったらキスして」
「は?」
「約束な」

勝手に決められた内容にちょっと待てよと口を開くがトラファルガーはとっくに自分の世界に入ったようで返答はない。でもま、こんなの十分じゃあ無理だろと問題を解く姿を見つめた。



甘かった。



「十分以内、全問正解、言うことなし」
「………」
「ユースタス屋ーキスはー?」

くいくいっと服を引っ張るトラファルガーに答案用紙と解答用紙を見比べるが変わりはない。十分以内、全問正解…言うことなし。

「誰がするか」
「なんでだよ!」
「てめェが勝手に決めたことだろ」

知らねェ、と言えばムッとしたように下から睨み付けられて文句を言われる。こういうときは餓鬼っぽいんだけどな。こいつもそれらしくしてりゃそれなりだ。変に大人びたところが可愛くねェから。
とか考えてる間も俺の体を揺すって何でどうしてしてよしろよ馬鹿と何かと煩いトラファルガーにだんだん青筋も浮き出てくる。睨んでも黙れと言っても煩いこいつはなかなかしつこい。いつもなら拗ねるようにして退いていくのに今日はまだ撤退する気はないようだ。

「ユースタス屋!」
「あーもうウッゼェなお前」

短い堪忍袋の緒が切れた俺はどうにもこうにもこいつを黙らせたくて襟首を掴むと引き寄せてその煩い口にお望み通りキスしてやった。途端に視界の端でトラファルガーの目が大きく見開かれる。まさか本当にされるとは思っていなかったんだろう。

「んぅ、っ、ん、んー!」

もちろんただのキスならするはずない。無理矢理唇を割り開くと舌を入れて縮こまる舌を絡めとる。逃げるように蠢く舌を強く吸って甘く噛んで、上顎をゆっくりなぞればトラファルガーの体はその度にびくびくと震えた。いわゆる深くて濃厚なキス。

「ふぁ…っ、ん…」

最初は息苦しさに責めるように叩かれていた胸元も、今では縋るように弱く握られているだけ。くたりとしたトラファルガーの体はみるみるうちに力が抜けていっているようだ。時折びくりと肩を跳ねさせる姿に目を細める。冗談で言ったのなら後悔すればいい。大人はからかうもんじゃねェってな。

「…は、っ…は…」
「これで満足かよ」

俯いて息を整えるトラファルガーの顔は真っ赤で、それを尻目に唾液にまみれた唇を拭う。ちょっと可哀想だったかもしんねェけどこんだけすりゃ当分は大人しいだろう、なんて。




甘かった。(本日二回目)




「ユースタス屋!もっかいして!」
「はぁあ?」

顔を上げたトラファルガーの瞳は何故かキラキラしていて発せられた言葉に耳を疑った。なぁもっかい!と抱き着いてくるこいつをどうやって引き剥がそうか苦心しながら逃げ切った幸せをさらに逃がすようなため息を吐いた。




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