恍惚と屈辱の話 | ナノ

何度も何度も指を動かすうちに次第に動きがスムーズになり、ギリギリまで引き抜くともう一本添えて指を入れる。そろそろ出し入れだけの単調的な動きはやめにして、今度は中を探るような動きへと変えた。

「ぅ、あっ、あ!」
「気持ちいいならそう言えよ、聞いててやるから」
「っ誰が、てめぇのテクなんか、で…善がるかよ…っ!」
「…そんなこと言ってっとあとで後悔するぜ?」

それでもまだ態度を崩さず、口元に笑みを浮かべる余裕さえ見せ付けるトラファルガーに忘れかけていた苛立ちを思い出す。

「女みてェに喘がせてやるよ」

そっと耳元で囁くと、二本の指をクイッと曲げて引っ掻くように内壁を刺激した。途端、びくびくと大きく跳ねたトラファルガーの腰を見てにやりと笑う。
恐らくココで間違いないのだろう。こいつの気持ちいいところ、いわゆる前立腺。
案の定トラファルガーは自分に何が起こったのか分からないような顔をしていて、それがまるで堕落へのカウントダウンみたいで愉快だった。

「っぁあ!ん、ゃめ、なにっ…ひっ、」
「好きなだけ喘いでいいぜ。気持ちよくて堪んねェ、ってな」
「だま、れ…っ、ゃ、んぁ、あ!ひ、ぐ…や、はな、せぇ…!」
「ハハハッ!さっきまでの威勢はどうした?ん?」
「ふ、ぁああ!っ、ゃだ、やめ、」
「やめねェよ。気持ちよくてやめてほしくねェだろ?」

なぁ、トラファルガー?
そう言ってにやにや笑いながらぐりぐりと前立腺を刺激する。引っ掻くように、あるいは抉るように、緩い刺激を与えたあと一気に刺激を強くするとトラファルガーは面白いぐらい頭を振って喘いだ。
指もいつの間にか三本飲み込んでいて、異物を拒むように硬く閉じていたそこも今や貪欲に蠢いてきゅうきゅうと締め付ける。
それでもトラファルガーは認めたくないらしく、止めろ離せの一点張り。そのわりに最早抑えきれない甘ったる声が口端から洩れ、瞳には瞬きすれば溢れ落ちそうなほど涙が溜まっていた。
熱に浮かされた表情と半開きの唇、触る度に小さく震える体は普段のこいつとは比べ物にならないほどで、喘ぎ声混じりの悪態を吐かれたって相殺どころかお釣りがくる。

「んな可愛い顔もできるなら最初から見せてくれりゃあいいのに」
「っぁ、ぜ、たぃ…ころ、す、っ…ぁあ!」
「出来たらいいけどなぁ、男にケツ掘られてしっかり感じてるてめェには無理だろ」
「っ、…ふ、ちが…っ!」
「おいおい、この期に及んでまだ感じてないとか言うなよ?しっかり勃ってんぞ?」
「だ、まれ…!」
「そろそろ悪態のレパートリーも尽きてきたか。…ま、いい。てめェがそこまで言うなら見せてやるよ」
「やっ?!あ、なにす…っ、ひ、ゃめっ、」

濡れた瞳の中に垣間見えるギラギラとした憎悪の光にぺろりと唇を舐めた。どうやらまだ堕ちる気はないらしい。面白い。
トラファルガーの膝裏を掴んで、自分の目でしっかり確かめることだな、とせせら笑うと爪先が顔の横につくぐらいに持ち上げた。あれだ、なんちゃら返しみたいに。
さすがにこの態勢はプライドのお高いトラファルガーに強い衝撃を与えたらしく、さっきまで快楽にどっぷり浸かって抵抗のなかった体が微かに暴れる。だがそれも簡単に押さえ込めてしまえるようなやつで、適わないことに諦めたのか、抵抗を止めた代わりに見たくないと言うようにトラファルガーはぎゅっと強く目を瞑った。

「目ェ開けろよ。ほら…触ってもねェのにどろどろだぜ?ここ」
「ん、ゃ…っ」
「こっちも…ぐっちゃぐちゃ。三本なんか余裕で入るしな」
「っゃだぁ…っ、いう、な…!」
「そんな顔すんなよ。もっと虐めたくなるだろ?」

くつりと笑ってふるふる震えるその姿と、真っ赤に染まった頬を眺める。怒りか、羞恥か、あるいはそのどちらもか。いずれにせよ可愛らしいことに代わりないと、先走りを溢すトラファルガーの性器に触れた。
いくら素質があるといえども最初から後ろでイくのは無理だろうと思ってのことだ。自分の優しさにくつくつと笑みが洩れる。

軽く握って上下にゆっくりと抜き上げる。それだけで久しぶりに直接的な刺激を与えられたそこはすぐに俺の掌を汚していった。
同時に指をぐちゃぐちゃに掻き回して前立腺を刺激して、前後ともに快楽を与えてトラファルガーを追い詰める。
トラファルガーもこのままだと自分がどうなるのか分かるのか、必死に首を振るも抵抗と呼べるのはそれだけで。もちろん止める気はないし、どうせならしっかり目を開けさせて、イかされる瞬間を刻み付けてやりたい。

「っあ、あ…っ、ゃめ、や、っ…ひ、あぁあ!」
「イきたいならいいぜ、ケツ弄られて女みてェに啼きながらイっちまえ。…それが嫌なら目開けてこっち見ろよ」
「っぁあ!クソッ…は、ぁ…っ!」
「最初からそうやって大人しく言うこと聞いてりゃいいのによ」

嘲笑混じりにそう呟くと、屈辱に塗れた藍色の瞳がゆっくりと開かれて震える睫毛を涙が濡らしていく。
ギリギリまで顔を背けて自分のあられもない姿を何とか視界の隅に追いやろうとするトラファルガーは、俺の存在も閉め出そうと躍起になっていた。

「は、やく…抜け、よ…っ!」
「あぁ。てめェがイったあとにな」
「っふざけ…や、あ――っ!!」

やってやったんだから早く抜けと言わんばかりに睨みつけるトラファルガーに口端を吊り上げる。もちろん最初から抜く気なんざなかった。俺を信じてしっかり目を開いたトラファルガーは可愛い奴だ。
三本の指で中を激しく掻き回し、前立腺を刺激する。ぐちゅぐちゅと音を立てて性器を抜き上げると先端に爪を立てた。途端にトラファルガーの腰が大袈裟に跳ねて、見開いた瞳から隠しきれない快楽がとろりと滲み出る。あとは言わずもがな、勢いよく飛び出した精液がトラファルガーの顔を濁った白で汚していった。

「ハハハッ、ざまぁねェなトラファルガー!」
「っ、ぅ…く、…」
「どうだ?自分の精液を自分の顔にぶっかけた気分は」
「だ、まれ…殺し、てやる…っ!」
「…そりゃ聞き飽きたな」

持ち上げていた脚を下ろすとトラファルガーは、精液まみれの顔で何度も聞いたような文句を口にする。呪詛のように殺してやると呟いては、悪態を吐き捨てる。
その一方で先程の顔射が相当効いたのか、トラファルガーは俯いたまま顔を上げない。怒りを点す瞳には同時に涙も溜まっていて、震える肩は嗚咽を堪えているように見えた。

ぞくり、と背筋が震える。足首を掴んで開かせれば、トラファルガーは弱々しく首を振った。それを無視してぐちゃぐちゃに解れたそこに俺のモノを宛がうと、トラファルガーが勢いよく顔を上げる。

「っ、ゃだ、やめ…!」
「天国、見せてやるよ」
「―ひっ、あぁあ!!」

先程までの威勢は何処へやら、震える瞳にくつりと笑うとトラファルガーの腰を掴んで一気に突き入れた。同時に様々な感情を映す瞳が見開かれる。だが痛みは最早ないだろう。
その代わりトラファルガーはぼろぼろと涙を溢した。今までの強気な態度が嘘のように、まるで餓鬼みたいにやだやだと首を振る。

「あっ、ひ、ん!あっあっあ!」

だが次第にそれも薄れ、辺りに響くのは甘ったるい声ばかり。強く腰を掴んで奥へ奥へとぶつけるように揺さぶっていけば、その度にトラファルガーは高い声で喘いだ。
緊張の糸がぷつりと切れた人形のように泣いて喘いで体を震わせて絶頂に達して。ガチャガチャと手錠を鳴らしながら首を振って快楽と屈辱に顔を歪ませる。

「っ、死の外科医の正体は淫乱ってか…!」
「ひっ、ぅ…ぁああ!」
「はっ、聞いちゃいねェな」

ガクガクと揺さぶられるだけのトラファルガーに面白くて笑みが溢れる。
突き上げて、抉って、まさに快楽を貪る獣のように。そんな獣じみたセックスの中で時折トラファルガーは意識を取り戻し、やめてくれと懇願した。はたまた涙を舐めとってやった俺に唾を吐きかけて、力の入らない体で抵抗し、悪態を吐いた。

だからこそ、だと思う。
未だ堕ちないトラファルガーが可笑しくて堪らなかった。ぐちゃぐちゃに壊してやりたいとさえ思えた。

「あっ、んん…ふっ、あ、ぁ…」
「喜べ、トラファルガー…これからてめェを飼ってやるよ」

誰に何を言われようが俺が決めたことだ、関係ない。
これが聞こえているかどうかは知らないが、とろりと溶けたトラファルガーの瞳を覗き込んでそう囁くとくつりと笑った。そっと頬を撫でると、今まで扱いが嘘のようにに唇に触れるだけのキスをする。
暇潰しで終わるだなんて勿体無い。二億を飼うのは面白そうだ。




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