馬鹿みたいに玄関でキスしあって、それから少し落ち着いた頃合に夕食を作り出した。といっても俺はそんな作っているユースタス屋の姿に時折視線を寄越しながら熱った体を冷ましていたのだけれど。
ユースタス屋は料理が上手だ。俺は自分で作ったものよりもユースタス屋が作ってくれたものの方が好き。ユースタス屋は一人暮らししてたら作れるようになったって言ってたけど、絶対彼女とかいただろうし、そういうことを考えるとモヤモヤする。やめよ、こんな時に、と軽く頭を振ると出来たぞと言う声が聞こえた。
出されたオムライスは相変わらず店に出せそうな勢いで、向かい合わせに座ろうとしたらまた腕を掴まれて隣に座らされる。え、また?とか思ってたら案の定、ほら、と笑ったユースタス屋のスプーンが近づいてきて結局拒めない俺がいた。
「…うま」
「そ?よかった」
諦めてもぐもぐと大人しく咀嚼する俺を見てユースタス屋は笑う。でもこれも今日だけの特別だと思うとスプーンを自分で取る気にもなれなくて、口を動かしながら、ふとまたユースタス屋が自分の食事をそっちのけでやっていることに気付いた。
「ユースタス屋は?食わないの?」
「食うよ」
そう言ったはいいけど一向に食べる気配を見せないユースタス屋に、これじゃあ冷めてしまうと眉根を寄せた。そんな俺を知ってか知らずか口元に運ばれるスプーンに、今度は俺がそのオムライスをユースタス屋の口元に運んでやった。
「食べるとか言って全然食ってねぇし」
ぼそりと少し視線をそらして呟くと、早く食えとぱちりと瞬きをしたユースタス屋にぶっきらぼうに言う。ふ、と笑って俺の手を掴むとぱくりとスプーンに食いついた。こんなことし合うなんて恥ずかし…と思いながら、もっと食わせてと言ったユースタス屋に仕方ないから再びスプーンを運んでやった。
PM 21:00
そんなこんなでゆっくりと食い終わったころ、ユースタス屋がケーキをくれた。そうそう誕生日ケーキってやつ。いつの間に買ってきてたんだろうと思いながら三角に切られたそれにフォークをいれる。ユースタス屋はいらねぇの?って聞いたら、俺はこれで十分って口端についた生クリームを舐め取られた。恥ずかしい奴め。
「なぁ、」
「ん?」
「風呂入ってくる」
「入ってくれば?」「から一緒に入ろうぜ?」
「…は?」
ケーキも食べ終わって皿も洗い終わってソファに座ろうとしたら座っていたユースタス屋に腕を掴まれた。一緒に入ろうとか、まあ成り行きで一緒に入ったことはあるけどこんな風に真面目(?)に誘われたことはなくて、思わず視線を泳がしてしまう。そしたらユースタス屋に腰を引き寄せられて、ボスンと隣に座らされた。
「いいだろ?別に変なことしねェし」
そう言って笑ったユースタス屋に顔が熱くなる。どうしようか唸っていたら、唐突に体がふわりと浮いて。
「ちょ、ユースタス屋!」
「いまさら裸なんて見慣れてんだから恥ずかしくねェだろ?」
「…っ!」
俺の心情を見透かすようににやっと笑ったユースタス屋を睨みつけた。でもそんな瞼にちゅっとキスをされてしまい。やっぱり唸りながらユースタス屋の首にぎゅっと腕を絡ませると、ふっと笑ったユースタス屋に結局風呂場まで運ばれた。
「おい、トラファルガー。もっとこっち来いって」
「…やだ」
「あのなぁ…」
服、脱がしてやろうか?と妖しく笑ったユースタス屋に慌てて服を脱ぐと自ら窮地へと飛び込んでしまっていた。そんな訳で一緒に入ったのはいいけれどギリッギリまで距離をとってなるべくユースタス屋の方は見ないように。そんな俺に痺れを切らしたユースタス屋が呼びかけるけど断れば、ぐいっと腰を掴まれて。
「っ、ユー…!」
「何恥ずかしがってんの?」
まだ向かい合わせじゃないというところが最後の砦だろうか。それでも俺はきっと耳まで真っ赤になってるし、そんな俺を知っていてユースタス屋は耳裏に優しくキスを落とすとぼそりと囁く。それにびくっと腰が揺れた。
「っ…別に、そんなんじゃ、」
「じゃあこっち向いて」
「ゃ…っ」
強がりに吐き出し言葉にユースタス屋は敏感に反応して、チャプッと水の揺れる音と同時にくるりと向きを変えられる。最後の砦は呆気なく崩れてしまい、向かい合わせに座らせられたことで余計に頬が熱くなる。ユースタス屋の顔が見れない。そしたら不意にれろりと首筋に舌を這わされて。
「ぁ、ユ、スタ…っ!」
咎めるような声色を上げればこちらを見つめたユースタス屋と目が合って、にやっと笑ったその姿に慌てて目をそらした。そしたら今度はユースタス屋がそれを咎めるように、ロー、と耳元で囁いて。ちゅく、と這わされる舌に体が震える。自分の唇を噛み締めながら眉根を寄せた。このままだと気持ちよくなってしまいそうで、必死にそんな自分を押し込めるように堪えるけれど。
「ロー、ほら、ここ」
「ひぅ、ゃ…」
「何もしてねェのに勃ってるぞ?」
やらし…とぼそりと呟いたユースタス屋に乳首をきゅっと抓まれてびくりと体が揺れる。本当耳弱いな、と吹き込まれるように囁かれて勃ちあがった乳首を柔くなぞられて恥ずかしくてじわりと目尻に涙が浮かんだ。
だけど、だけどこんなんじゃ足りなくて、熱を持った体は抑えきれなくなっていた。なのにユースタス屋はするりと手を離してしまって、それにユースタス屋を見つめるとちゅっと額にキスされた。
「もっとしてほしいか?ん?」
いつもならきっと意地悪だと睨みつけているだろうが、その声色はいつもと違って柔らかくて優しかった。どうやら焦らしている訳ではないらしい。こくり、と小さく頷くといいこだな、とユースタス屋に頭を撫でられてそっとキスされた。