ロー誕2010 | ナノ

PM 13:00

俺の体は燃費がいいのであんな時間に朝食を食べるとどうも昼食は食べる気をなくしてしまう。という訳で借りてきたDVDに熱中していた訳だが…。

「…っ、ぅ…」
「………」
「ひっく…ぐす…」
「………」
「ふっ…」
「………何で泣いてんの?」
「感動するからに、決まってんだろうが、」

ぐすぐすと鼻を啜りながら肩を震わせる俺にユースタス屋はやや呆れたように訊ねてきた。このよさが分からないなんて、ユースタス屋もまだまだだなと思いながら、このどこに感動要素が…と画面を見つめたユースタス屋がぼそりと呟いた。

「感動するだろうが!ひっく、だってベポがやっと人間と仲良く…!」
「あー、分かったから泣き止め」

ぽんぽんとあやすように俺の頭を撫でるユースタス屋は何も分かっていないようでキッと睨み付けた。
俺が借りたのは巷で有名の「白熊のペポ」シリーズの新作。今回は、あんなにふわふわでもこもでとてつもなく可愛らしいペポが、人語を喋り理解できると言うだけで一部の人間から虐げられるという内容だった。でも結局はみんなベポの可愛さを理解し(ペンギンにそう言ったらそこ違うだろと否定されたが)、仲睦まじく受け入れられるという感動ストーリー。
俺がこの世界にいたら否定する奴即行でぶっ殺すのにベポは優しいからそういうことはきっとさせないししない。そんなところにも感動する。だけどユースタス屋はそんな随所随所に待ち構えられた感動シーンをあっさりとクリアしてしまい、その頬を涙が伝うことはなかった。これを見て泣かない奴なんていないと思っていたのに、今俺はそいつに宥められている。

「ほら、擦ると目腫れるぞ?」
「ん、だって……っ!」

ごしごし目を擦る俺の手を優しくユースタス屋が止めさせる。そうして顔をあげるとちゅっと目尻にキスされた。そのまま頬を伝う涙の跡にゆっくりと舌を這わし、瞼にそっと口付ける。最中でもないのにそんなことされるのは恥ずかしいし止めてほしい。一気に熱くなっていく頬にもユースタス屋の唇が触れる。

「いい映画だったな」
「…え、あ、そう?」

顔を上げたユースタス屋についつい反応が遅れてしまい、視線を不自然にそらすと何ともぎこちない返答が唇から転び出た。そんな俺の心情を知ってか知らずか、ぎゅっと抱きしめられるとぼそりと耳元で囁かれる。

「俺、お前の泣き顔好きだし」
「…っ!」

可愛いから、とまた目尻にキスされて顔から火が出そうになる。いいってそういうことかよ、と思いながら、そのときちょっとユースタス屋が意地悪そうに笑ったので、お返しに頬を抓ってやった。



PM 15:00

DVDを片付けると、コーヒーを淹れたユースタス屋が俺の分もテーブルに置いてくれた。でも覗いてみればやっぱりそれはホットココアで。相変わらずの扱いと言うか、まあ確かに甘いもののほうが好きだけど、でもやっぱり餓鬼扱いされてるみたいでちょっと気に食わない。ムスッとしながらココアを飲むと、その脹れた頬をユースタス屋がつつく。ココアはお気に召さなかったか?と笑われたので、餓鬼扱いするなと横目で睨めば苦笑された。

「じゃあ飲むか?これ」
「え…んぅっ」

ココアをテーブルに置かれて、何かと思いきやユースタス屋に唇を塞がれる。そのまま口内を、あの苦い液体が満たしていって。思わず眉根を寄せれば、くすりとユースタス屋が笑う気配がした。それにちょっとまたムカッとして、ぎゅっとユースタス屋に強く抱きつくと、与えられたそれをこくこくと飲み干していった。

「ぅえ…にが…」

でもやっぱり唇を離すとそう呟いてしまった。そんな俺にユースタス屋は笑いながらコーヒーに口付けたもんだから、やっぱり気に食わない。テーブルに手を伸ばしてココアを取るとカップに口付けて口に含む。途端に満たされる甘い味は、さっきのコーヒーとは似ても似つかないものだった。

「お前はそうやってココア飲んでりゃいいの」

にやにや笑ったユースタス屋に餓鬼扱いというよりは馬鹿にされているような気がして、文句を言おうとすればまた口付けられる。でも今度はさっきみたいに苦味が溢れるだけじゃなくて、甘さと苦さが混じったような。

「ふ、んっ…ん、」

くちゅ、と舌を絡め取られてユースタス屋にしがみつくとやわやわと舌を甘噛みされる。丁寧に歯列をなぞられ、ねっとりと絡められては上顎を擽るように撫でられる。その全てが気持ちよくて、くたっと体から力が抜けていくのが止められない。

「んはっ…ぁ…」

最後に甘く舌を吸われてゆっくりと唇が離される。激しさと名残惜しさを表すようにお互いの間を銀糸が引いてぷつりと切れた。

「そしたら苦いのと甘いのが混じってちょうどいいだろ?」

俺の顔を覗き込んだユースタス屋がにやっと笑ってそう言ったので恥ずかしい奴だと背中を叩いてやった。でもそれでココアもいいと思えてしまう俺も大概なんだけど。



PM 17:00

そのまま甘ったるい時を過ごして気付けばもう夕方。そう言えば冷蔵庫の中に特に何もなことを思い出し、じゃあ買いに行くかと言ったユースタス屋に久しぶりに一緒に夕飯の材料を買いに行った。

「何食いたい?」
「…オムライス」
「了解」

いつもの習慣で休みの日はユースタス屋が作ってくれる。少し迷いながら口にすると頭をくしゃっと撫でられて、材料を見つめるその後姿を馬鹿みたいに見つめた。何だかんだ言ってもやっぱりユースタス屋は格好いい。なんて真剣に思いながらその横顔を見つめている自分が恥ずかしい。だってお前、俺の片思い暦なめんな、とどこぞの誰とも知らない奴に言い訳しながらその後ろをついて歩く。こんなの、昔の俺じゃ絶対に考えられなかった訳だし、ちょっとぐらいそう考えても仕方がないと今度は自分に言い訳をした。


家に着くといきなり玄関で抱きしめられてキスされてビックリする。ビックリしてたら舌が入り込んできて。

「んん、ふっ…んぁ…」

荒々しくてまるで情事中のようなキスに頬が熱くなる。それでも必死になってユースタス屋についていこうと舌を動かした。そしたらぐっと後頭部を押さえられて、より深く舌を絡められる。ちゅく、ちゅ、と濡れた水音がやけに耳に響いて、喰いつくされそうなそのキスに一人で立つこともままならなくなった。

「ぁ、はっ…は…」
「お前さ、本当可愛すぎ」
「ゃ、なに、言って…」
「だって信号が赤になる度にこっち見てくるから」

そんなキスしてほしかった?と耳元で囁かれて、カッと顔が熱くなった。確かに赤信号になる度にちらちらとユースタス屋を盗み見ていた自分がいた訳で。でもユースタス屋は何もしてこなかったからまさかバレてたとは思わなくて、一人で慌ててしまう。

「でもあそこで手ェ出したら絶対抑え効かなくなると思って」

我慢してんたんだからな、と言ったユースタス屋が恥ずかしくて見れない。でも、もっとしてほしい?と聞かれたら断る理由なんて無い。ちゅ、と合わさっていく唇にユースタス屋にぎゅっと抱きついた。




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