死ねばいいのに! | ナノ

(時間軸としては後の方。ちゃんと付き合っているのかもしれない。)


あの、ユースタス屋からチョコを貰ったのが今から一ヶ月前の話だなんて時間が経つのは随分早い。
それに俺が、期待してろ、なんて豪語したのも一ヶ月前の話だ。正直言ってあのときの俺はどうかしてた。だけどまあ、あいつからチョコを貰ってほんの少し、嬉しかったのも事実な訳で。

男に二言はない。
隣でぼんやりとテレビを見つめるユースタス屋に乱暴に箱を差し出した。

「やる」
「唐突だなおい…バレンタインデーのお返しか?」
「いらないなら、いい」
「誰もそんなこと言ってねェだろ」

つかお前から貰ったのがいらないとかありえねェし、なんて言ったユースタス屋の言葉にまた少し顔が赤くなる。だけど当の本人は意識してないさりげない一言だったみたいで、俺のぶっきらぼうさに苦笑しつつ、それとは真逆の優しい手つきで箱を受け取るだけ。
それが俺だけユースタス屋の一挙一動に意識してるみたいで嫌になって、赤くなった顔がばれないように視線をそらすと、しゅるりとリボンが解かれる様を耳だけで聞き取った。

「食べていいか?」
「もうお前のなんだから聞くな」
「はいはい」

こんな可愛げのない言葉にもユースタス屋は文句も言わない。俺だったらこんな恋人、面倒だし腹立たしいし即行別れるのに、なんて思う俺の思考回路。いつもだったらどんな仕打ちをしてもこんなこと考えないのに、今日の俺ってどうかしてる。

箱を開けたユースタス屋が、中に入ってるクッキーを一枚掴んで口に入れる。
何だかんだ言いながらも咀嚼する横顔をちらりと見つめて、次に来る言葉に少なからず身構えた。

「美味いなこれ」
「…当たり前だろ」

なんて言いながら、その言葉にほっとしたのも事実。思わず笑みが零れて、それを目敏く見つけたユースタス屋が手元のクッキーと俺を交互に見つめた。

「…もしかしてこれ、お前が作った?」

そう言ったユースタス屋が驚いたような、でも嬉しそうな顔をしたから、体が一気に沸騰したかのような感覚に見舞われる。
そこで普通にそうだと言えばそれで終わりなのに、俺は余計な一言を付け加えないと気が済まない性質らしい。

「別に…ペンギンがシャチに作るって聞いたから、余った材料貰ってきて適当に作っただけだ」

ウソ。本当はすげぇ苦労した。焦がしたり歪な形だったり配合間違えたりして、ぐちゃぐちゃなクッキーが完璧になるまで日付が変わっても作ってた。
でもそれを素直に言えるほど俺は素直じゃないから、これが精一杯だったりする。
だけどユースタス屋はそんな俺を全部お見通しだ、なんて顔をしてやがる。にやにや笑いながら、ふーん、と意味深な返事をして、何回目かでようやっと上手くできたハート型のクッキーを食べている。

「愛されてんなー、俺」
「っ…言ってろ!」

手に持った残りを口に押し込むと咀嚼して飲み込んで、ぎゅっとユースタス屋が俺に抱きついてきた。それに嫌がりながらも赤くなっていく頬がどうしようもない。
抱き締める腕も振り払えずに、文句を垂れつつもユースタス屋の服を握る俺は本当に素直じゃない。

「あー全部食うのもったいねェな、あのクッキー」
「食わないと腐るぞ」
「分かってるって。…また作ってくれる?」
「…お前が材料、買ってくるなら」

耳元で甘ったるく囁くユースタス屋に、赤くなった顔がばれないようにその肩に顔を埋めるとぼそりと呟く。ホント、都合がいい。
こんな俺のどこがいいんだか、ユースタス屋はいまいちよく分からない。

暫くゆっくりと頭を撫でるその手つきに身を委ねていたが、不意にその手がそっと頬に触れて顔を上げる。そうしたら、ちゅっと額にキスされてぎゅっと目を瞑った瞼の上にも。そして触れるだけのキスが何度も唇に、そのあとは啄むようにして。
恐る恐る小さく唇を開いてみればユースタス屋の舌がするりと滑り込んでくる。ぬるりとした生暖かい舌に奥に引っ込むそれを絡め取られて、体から力が抜けていく。

「んんっ、ふ、ぁ…」

甘噛みされたり強く吸われたり、上顎をなぞられたりなんかしたらもう駄目で、震える腕でユースタス屋にしがみつく。
どんどん深くなっていくキスに必死で舌を絡めて、唇が離される頃には全身から力が抜けていた。

「…な、トラファルガー」
「はっ、ぁ…」
「ホワイトデーは期待してていいんだったよな?」
「ふ、え…?」

にやりと笑ったユースタス屋に意味が分からなくてぼんやり見つめる。キスでぐちゃぐちゃに溶かされた思考回路では何がなんだか分からなくて、ぼーっとしていたら不意にユースタス屋に抱きかかえられて慌ててしがみついた。
そのまま無抵抗で連れて行かれた先は寝室。どさりとベッドに下ろされて、凶悪に笑うユースタス屋に気がついて逃げようとした時にはもう遅かった。




本当に今日の俺、どうかしてる。ユースタス屋の言いなりなるとか、普段なら絶対ありえないのに。

「はっ…いい眺めだな、トラファルガー」
「っ、あとで覚えてろよてめぇ…!」

ベッドヘッドに浅く寄りかかったユースタス屋の上を後ろ向きに跨いで、その眼前に自らの尻を突き出すという屈辱的なこの格好。
俺に期待させたんだからそれなりに応えてもらわないとな、なんてにやにや笑ったユースタス屋にこの格好を強要されたのはつい先程の話だ。もう遅いと分かっていながらも悪足掻きだと抵抗してそこで、最初に言ったのは自分だろ、ととどめの一撃を食らわされる。
剥き出しの尻を撫でながら、こっちのサービスも期待していいんだよな?なんて笑うユースタス屋はただの変態エロ親父だ。
あとで絶対後悔させてやる、なんて月並みなことを思いながら今の自分の格好に唇を噛み締めた。

「っ、やるなら早くしろよ…!」「じゃあとりあえず…自分で慣らして?」
「…は?」
「ああ、いきなりは無理だよな。まず濡らさねェと」
「え、ちょ…なにっ…ひ、あっ?!」

この超天才的頭脳をもってしてもユースタス屋の言っていることがいまいちよく分からず、ちらりと後ろを振り返ればぐいっと尻を掴まれた。と、同時に奥まったそこにぬるりと舌が這う感触に目を見開く。
舐めんな馬鹿、と思ったときにはもう遅く、口端から高い声が洩れて慌てて唇を噛み締めた。

「あっ、ふ、…ゃめ、ユースタ、…っあぁ!」
「いいから黙って感じてろよ」

ぬるぬるとまるで別の生き物のように這うユースタス屋の舌に、せめてもの抵抗と首を振る。
でも当たり前だが効き目はゼロで、逃げようにもがっちりと掴まれた腰は意思に反するようにびくともしない。ただシーツを手繰り寄せて、洩れそうになる声を必死に抑えるだけ。

「ふっ、あ、ゃ…はな、せぇ…!」
「腰揺らしてるくせによく言う」
「なっ、ちが…っ、ひっあ!や、吸わな、っぁあ!」

何とか紡いだ言葉をいわれもない言葉で返されて、堪らずユースタス屋を睨み付けようと振り返れば、ジュッと強く吸われて背が撓る。
浅いところを出入りするだけだった舌がいきなりに奥深くまで侵入してきたことに背筋が震える。ぬぷぬぷと深くを犯すその感覚に逃げようとすれば、叱咤するように強く吸われて目の前が滲んでいった。
予測できない動きをするその感触に気づけば目の縁に溜まっていた涙がぼろぼろと溢れた。

「ひっ、ゆー…んっ、ゃ、」
「…ん、そろそろいいな。ほら、自分でやってみろよ」
「ぁ、ゃだ、やっ…はな、っひあ!」

ちゅく、と聞こえたいやらしい音のあとに舌が抜け出たと思ったら、次にはシーツを掴んでいた手をユースタス屋に奪われる。そのまま奥まったそこに導かれて、指先に触れたそこにびくりと肩を揺らした。
少し触れただけなのに、貪欲に指を飲み込もうとするそこに羞恥で頬が赤くなる。どうにか入れさせまいと首を振ってもユースタス屋は離してくれなくて。
その代わりユースタス屋の指に添えられた人差し指がつぷりと中に入ってきて思わず目を見開いた。

「ふっ…あ!や、ゆーすた、ひっ…ぬい、てっ…」
「ちゃんと慣らしたら抜いていいぞ」
「ゃ、できな…っ!」
「気持ちよくなりたいだろ?…いいから動かしてみろよ」
「ん、ぁあ、やっ…まっ、ひゃあっ!」

急に動き出したユースタス屋の指につられて俺の指も無理矢理動きだす。
くちゅくちゅと聞きたくもない音を立てながら、中を拡げたり掻き回すように刺激されて空いている片手で堪えるようにぎゅっとシーツを握り締めた。

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