「じゃあ次はどうすっかなー」
「は?…次?」
「だって取り逃がしたんだろ?」
まだ終わってねーからな!と笑うボニー屋にくらりと目眩がした。
「言っとくけど俺はもうやんねぇからな」
「何言ってんだ!痴漢されたんだろ?ならお前でやればまた痴漢野郎が釣れるのは目に見えてる!」
「………」
「ひぃっ、ローさん睨まないでください!」
生き生きと次の作戦を考え出したボニー屋にシャチを睨み付ければまたさっとペンギンの後ろに隠れられる。何なんだ一体、とか思いながら、協力よろしくなトラファルガー!と大口開けて笑うボニー屋に肩を叩かれてこの上ない疲労を感じた。
「あれ、ロー。どっか行くのか?」
「ん、ちょっと」
退屈な授業も終わり、チャイムが鳴り終わると同時に席を立つと気付いたペンギンがくるりと後ろを振り返る。適当にはぐらかすと騒がしい教室をあとにした。
昨日からずっとユースタス屋に画像を消させることばかり考えていた。
基本的に俺とユースタス屋の繋がりは皆無だ。俺は選択が理系コースだけどアイツは文系コース。クラスも端と端という遠さだし、部活だって違う。そりゃたまに廊下ですれ違うぐらいのことだって今までしたことはあったけど、それだけだ。
だから直接会いに行かないと。偶然なんて待ってたらいつになるか分からない。自分から行動を起こすと昨日決めたのだ。だから昼休みを狙って、こうしてユースタス屋のクラスに来た訳なんだけど。
「キッドなら屋上だぞ」
「…どーも」
クラスを見回せどあの目立つ赤髪はどこにも発見出来ず、眉根を寄せると、ふとこちらに近づいてくる人影に気が付いた。よくよく見ればそいつはいつもユースタス屋の隣にいる奴で。確か…キラー屋、かな?とりあえずこいつに聞いたら確実だろうと口を開こうとすれば、それよりも先に聞きたかった内容を伝えられる。え?何これエスパー?とか思ってたら大変気の毒そうな視線を向けられて、頑張れよ、と労るようにぼそりと呟かれた。
ほぼ初対面と言っていい相手にあんな気の毒そうな視線を向けられたのは初めてだ。それに固まる俺を尻目にキラー屋はすっと横を通り過ぎて行ってしまう。ユースタス屋と仲がいいらしいからいろいろ知ってんだろうな、と適当に自分を納得させて、のろのろと屋上へと向かった。