死ねばいいのに! | ナノ

「まぁ知ってると思うけど。俺、ユースタス・キッド。明日からよろしくな、トラファルガー」

にやっと笑ったユースタス屋の、明日からよろしく、が物凄く意味深に聞こえた。



あのあと、送ってってやろうか?とするりと腰を撫でたユースタス屋を何とか振り切ってペンギンのところまで全力疾走した。認めたくはないけど…多分アイツのキス、のせいで俺の走りはヨロヨロとした頼りないものだったと思う。多分、追いつこうと思ったら簡単に追いつけた。それをしなかったのはユースタス屋なりに思うことがあったんだろうけど、これはだけは自信持って言える。絶対俺のそんな姿見てにやにやしてた、アイツ。


ペンギンの待つホームに向かえばそこには案の定ペンギンがいて、隣にはうろうろと視線をさ迷わせているシャチがいた。あ!と俺を見つけたシャチが大声だして駆け寄ってきて、どこ行ってたんですか!探したのに!と心配そうな顔で叫ばれる。そんな二人に、まさか野郎にトイレに連れ込まれて写真を撮らされた挙句脅されてキスされてました、とは正直に言えず、とっとと帰りたくてシャチの持っている袋を掴むと駅の裏にある寂れたトイレに向かい、二人に見張りをさせると男子トイレにすばやく入って中で着替えた。化粧落としで顔を拭きながら、先ほどまでの出来事に顔を顰め地面に唾を吐く。マジで口洗いてぇ。
着替えを済ませトイレから出るとまたシャチに喚かれたので、道に迷ったとか何とか言って適当に誤魔化した。そもそもお前がちゃんと俺の隣にいれば、とシャチを見ていたらふつふつと怒りが沸いてきたが、心配したんですよー!とか眉根を下げて言われてしまえばあまり強く出れない。ペンギンにもそう言われて、大丈夫と言ったはいいが結局話は元に戻って。

「で、痴漢には?あったのか?」

早速核心をついてくるペンギンに、一瞬本当のことを言おうかどうか迷う。それでも言って差し支えはないだろうと軽く頷くと、驚いたような顔をしたシャチをここぞとばかりに睨み付けた。

「お前こそ一体どこにいたんだよ。せっかく俺が痴漢にあってたのに」
「待ってください!最初はちゃんと見てたんですよ!?でもどんどん人乗ってくるしいつの間にか見失っちゃって、」
「この俺に言い訳とはいい度胸だな。消されたいのか」
「ひっ、まってローさん暴力反対!」

睨み付ければペンギンの後ろに隠れてしまったシャチに、何でこんな奴を同乗させたのか甚だ疑問だった。たとえあの時俺の隣にいたとしてもかなり頼りない気がする。でもきっといるだけでユースタス屋には出会わなかっただろうという、取り返しのつかない事実。ムカつく……。

「うう…すいません…。でもローさん、その痴漢どうしたんですか?」
「……知らねぇよ。途中で降りてったから」
「やっぱ逃げられちゃいましたよね…」
「シャチのせいでな」
「ペンギンひどっ!本当のことだけどさぁ!」

本当はユースタス屋が捕まえてくれたけど…それを話したら全部話さなきゃいけないような気がしてシラを切った。それも知らずぎゃいぎゃいと騒ぐシャチに呆れつつ、とりあえずボニー屋に連絡しておくと言ったペンギンが携帯を取り出してカチカチとメールを打つ。それにユースタス屋の携帯を思い出して嫌な気分になった。明日絶対消してもらう、いや消させる、と固く心に誓い。
そんなことして喋りながら歩いていたらあっという間に家に着いて。シャチが手を振るのを尻目に家に入ると部屋の電気を点けた。
両親が何とも放任主義で絶賛一人暮らし中の俺は鞄をそこらに放り投げるとソファの上に寝転んで。明日から俺の学校生活、どうなるんだろうと思いながら学生証取り返すの忘れてた、とふとどうでもいいことを思いだした。




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