死ねばいいのに! | ナノ

「…冗談、だろ?」
「マジに決まってんだろ」

だらだらと全身から冷や汗を流しつつユースタス屋を見つめる。付き合うって…俺が?お前と?…無理無理無理!
青ざめた顔をして黙って俯いていたら何を思ったかすっとユースタス屋が離れていった。そのまままたカチカチと携帯を弄りだして。

「まあ嫌だってんなら別にいいけど」
「……」
「その代わりこれバラまいてもいいよな?あることないこと付け加えて」
「なっ…!お前最低だな!」
「お褒めにお預かり結構」

誰も褒めちゃいねぇよ!と思いながらギリギリとユースタス屋を睨み付けた。それをにやにやと笑いながら返したユースタス屋は、まず誰に送ろうかなんて楽しそうに携帯を弄っている訳で。たとえ俺には正当な理由があるとしても、こいつの口からあることないことベラベラ喋られたらただの言い訳にしか聞こえなくなってしまう。それで女装好きの変態とかそういうレッテルを貼られるのは絶対に嫌だった。

「…バラまくのはやめろ」
「いいぜ?お前が条件飲むならな」

ほらほらどうする?と言うように携帯を軽く左右に振るユースタス屋に唇を噛み締める。最低最悪な二択ってこういうことを言うんじゃないだろうか。いま俺は人生の危機に直面している。

でも、と俺は思う。もしかしてこいつの言う「付き合え」というやつは俺の予想しているものと違うんじゃないのかと。いわゆるパシリ的なあれだ。金ヅルみたいな。恋人になるかパシリになるか、これまたどっちも最低最悪であるが、当たり前だが後者の方がユースタス屋の言う「付き合え」の意味合い的には可能性としては高い。そりゃそうだろ?だって一般的に見ればそういうタイプの人でもない限り男と付き合うなんてのはありえないわけで。しかもユースタス屋は女癖だって悪くて有名なのだ。
なら、バラまかれるぐらいならいっそパシリになる方がマシだ。そうして消してもらえりゃそれでいいし、俺が隙をみて消してもいいし、そしたら関係終わりだし、とにかく何とでもなる。

そうやってよくよく考えてみれば残された道は一つしかなかった。


「…その条件、飲んでやるからバラまくな。あと早く消せ」
「言ったな」

悪どい笑みがさらに悪どくなり、悪い予感をひしひしと肌で感じたが今更だ。嫌々ながらに頷くと、よし、とにやにや笑ったユースタス屋が携帯をポケットにしまう。何がよしだ何が。つうか早く消せよ俺の画像。

「じゃあまずは味見だな」
「は?…んぅっ?!」

ユースタス屋の言った意味が分からず眉根を寄せると顎を掴まれて……え?何でこんなドアップでユースタス屋の顔が…っていうか何か唇が……っ!?

「ふっ、んんー!!」

呆けていた頭がやっとユースタス屋のしていることに気付いて慌ててバシバシと背中を叩くが無視される。肩を押し返すもビクともしない。
ちょ、何でこいつ俺にキスして…!

「お前口開けろよ」
「は、誰が…ゃ、んんっ!」

必死でもがく俺となかなか開かれない唇に苛々したようにユースタス屋が呟く。それに睨み付けながら抵抗すれば…馬鹿か俺は。言葉を吐き出した俺に幸いとでもいうようにユースタス屋が唇を塞ぐ。それと同時に、開いた隙間からぬるりとした舌が口内へと滑り込んできて。

「んっ、んー!」

気持ち悪い!!何で男の俺が男とディープキスなんざしなきゃなんねぇんだ!
そうは思っていてもやはり抵抗は無視され、奥まで引っ込めた舌も呆気なく絡め取られてしまう。舌先が触れてびくりと体が揺れ、そのまま全体をねっとりと絡められてしまう。くちゅくちゅと唾液の交わる音がして、丁寧に、たっぷりと口内を愛撫されると自ずと体から力が抜けていった。

「ふっ、んぁ…ん、ん…」

鼻にかかったような甘ったるい声を出す自分が憎らしい。体から力が抜けてしまい、いつの間にか縋るようになってしまっているのもだ。
どうして、こんな、気持ち悪いはずなのに……こいつキス上手すぎる。

「ぁ、んん…ふ、ゃ、も…ん、ん!」

息苦しさにぎゅっと肩を握れば少しだけ唇が離されて、それに顔を背けようとすればまたぐいっと正面に向けられてキスされる。舌を絡められて、少し強めに吸われると肩が跳ねる。そうして何度も何度も上顎をなぞられて…あ、やばい、立ってるのも辛くなってきた。じわりと目尻に涙が浮かび、カクンと膝が折れたところでユースタス屋に腰を支えられて唇を離された。

「ぁ、はっ…」
「そんなにヨかった?俺のキス」
「っ、知るか変態…!」
「その変態のキスに感じてんのは誰だ?」
「…っ!」

にやにや笑いながら顔を覗き込まれてふいっと視線をそらす。俺の顎を伝う飲み込みきれなかった唾液を拭いながら、今のお前の顔すげェエロい、と耳元で呟かれて瞬時に顔が赤くなった。キッと睨みつけるも、涙目、と笑われてしまい。マジでムカつく。

「今ここでヤってもいいけど…」
「やめっ、どこ触って…!」
「俺普通のお前とヤりたいんだよね」

するすると腿を撫でながら呟いたユースタス屋にゾクリと寒気がした。ゴムもねェし、と言う呟きも聞こえて何だか泣きそうになる。嘘だろ嘘だろ、こいつ、マジで…!

「離せ変態!誰がてめぇとなんかヤるか!」
「あ?いいだろ別に減るもんでもねェし、今すぐって訳でもねェし」

それに、と言ってにやりとポケットから取り出し携帯をわざとらしく俺に示すと。

「俺たち付き合ってんだし」



かくして俺の最悪な学校生活は幕を開けたのである。




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