死ねばいいのに! | ナノ

(くそっ…中がスースーする…。)

グイグイとスカートの裾を引っ張るが、膝上10cmはかたいその丈にはどう足掻いても降参だった。何だって俺が…と自分の不運を嘆きつつ電車内で指定された位置へもそもそ動く。
髭も剃られたし顔はバッチリ化粧されて誰が持ってきたのか知らんが黒髪のショートウィッグを無理矢理被らされた。はい、完成ー!ときゃっきゃっ騒ぐ女子に鏡を渡されてものすごく減なりとする。ご丁寧に隈もちゃんと消してあるし。これでトラファルガーも立派な女の子だな!と笑ったボニー屋に激しい殺意を覚えた。だがしかし俺は女は殴らない主義だ。だからすごく似合ってます!と言ったシャチを代わりに殴ってやった。

(大体こうまでして痴漢にあわなかったどうする気だよ…。)

いやむしろどうしてくれよう、だな。ぎゅうぎゅうと混んでいく電車内に眉根を寄せつつ今後を考えて軽く舌打ち。大体俺は電車に乗ってもラッシュを避けるタイプだ。なのに何だってんだこの混み様。人を押し潰して圧迫死させる気か。

(あーもうどうでもいいから早く着け。)

苛々しながらドア側の手摺に掴まる俺。約束した駅まであと何分だろう、と思った矢先に不意に尻に手が触れた。
うわーとうとうきやがったか、と思っても混みすぎていて身動きが出来ない。これじゃあ痴漢の好き放題だと思っても体が動かないんだから仕方がない。

ゆっくりと尻の形を確かめるように撫でて、時折揉みしだくそれにびくりと腰が跳ねる。あーくそっ、マジで気色悪ぃ。今なら痴漢でぎゃーぎゃー騒ぐ女子たちの気持ちも分からなくはない。つうか痴漢なら男か女かぐらいちゃんと見分けろよ!てめぇが触ってんのは男の尻だっつーの!と騒ぎだしたい心情をぐっと堪えてきょろきょろと辺りを見回す。確か同じ車両にシャチが乗ってるはず…なんだけど全く見当たらない。

(クソシャチの奴どこに……っ?!?!)

ちょ!てめぇスカートの中に手ぇ突っ込んでんじゃねぇぞおい!つか俺ボクサーパンツだし!何で気にせず触ってんだよ!
マジ気色悪ぃ。腸が煮えくり返りそうだ。本当どうにかしたいんだけど手も動かせない。このまま手が前までいって男だとバレるなんでごめんだ。あーこんなんだったらやっぱシャチやめてペンギンに頼んどきゃよかった!

女装しながら同じ男に自分のケツを触られているという心情にものすごく苛々しながら振り向き様にアッパーでも食らわせようかと真剣に考える。でもこの混みあった中じゃきっと無理だ。どうしようか、必死で頭を巡らせていたら。



「…何してんだ?オッサン」




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