死ねばいいのに! | ナノ

「最近痴漢にあう女子が増えている!しかもこのクラスは被害率No.1という許しがたき事態だ!」

今日のLHRはドレーク屋(俺らの担任)がいないからかなり好き勝手なようだ。ボニー屋がバンッと力強く教卓を叩きつつ叫んでいる。議題は最近横行している痴漢について。ボニー屋を支援するように騒ぐ女子を尻目に俺はぼんやりと窓の外を見ていた。所詮男の俺には関係ない話だ。

「かく言うあたしもその被害者の一人だ!だからここらで一つその痴漢を取っ捕まえてやろうと思う!」
「でもどうやって?」
「あたしに考えがある」

おいおい話が大事になってきたなぁと思いながら、手を上げつつ質問するシャチに悪どい笑みを浮かべて答えるボニー屋を見つめた。痴漢にあったことあるってお前マジかよとは思ったが、言ったら殺されそうな気がしたので大人しく黙っておいた。
そしたらビシッといきなり指をさされて。

「題して『トラファルガー囮大作戦』だ!」
「…は?」

バッとクラスの奴らが一斉にこちらを振り返る。いきなり話題の中心人物にされた俺は訳が分からず眉根を寄せた。そんな俺にもお構いなしにボニー屋は説明を続ける。

「痴漢は現行犯で捕まえなきゃだ。そのためには痴漢を誘きだす囮がいる!だけどそうかと言って女子にさせる訳にはいかないだろ?」
「あー確かに。でも男でも違和感なくやれる奴じゃないと駄目だ、と」
「そう、そこでだ!トラファルガーはサイズ的にもセーラー服を着れるし、顔も整ってるから問題ない!」
「なるほど、化粧でカバーすればいい訳か」
「まてまてまて。なに勝手に話進めてんだお前ら」

シャチもペンも余計な相槌いれてんじゃねぇよと思いながら、黙って聞いていられなくなり制止の声をいれるがボニー屋は呆気なく無視。じゃあボニーちゃん、ローくんをとびっきり可愛い女の子にするね!とポーチ片手に笑う女子にゾクリと寒気がした。冗談じゃねぇぞおい。

「という訳だトラファルガー。あ、ちなみに制服はこれな」
「女装して電車乗れってか?!無理だ!」
「大丈夫ですよローさん。ちゃんと見張ってますし!」
「そういう問題じゃねぇよ!」

騒ぐ俺を取り押さえるボニー屋と、的外れな感想を寄越すシャチと、諦めろと言うような視線を送るペンギン。化粧道具を取り出して俺の周りを囲む女子。俺らもなるべく協力するから頑張れよ!と遠巻きに見守る男子。

「マジありえねぇ…」

ぼそりと呟いた言葉は周りの喧騒に掻き消された。全然関係ないと思っていたのにまさかこんなことになるとは。机の上に投げ出されたセーラー服とボニー屋の笑顔に逃げられないことを悟り、ため息を吐いた。





「つうかなんで俺?ボニー屋がやりゃいいじゃん」
「こんな可愛いボニーちゃんが、んなことできる訳ねーだろ」
「いや、いける。お前ならいける。むしろ撃退できる」
「お前女の子をなんだと思ってんだ!罰としてやっぱトラファルガーがやれ!超可愛くしてもらえ!」
「(なんという理不尽…)」




[ novel top ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -