死ねばいいのに! | ナノ

真剣に学校を休むかどうか考えて結局来てしまい、サボろうかどうか考えてそのまま四限まで穏やかに過ごしてしまった。どうすんだ俺。



「ローさん!購買行きましょ!」
「あー…」
「なんか用事でもあるのか?」
「んー…どうなんだろうなぁ…」

ワクワクと言った擬音がぴったりで(高がプリンごときで)楽しそうに俺を急かすシャチに眉根を寄せる。そしたらくるりと振り返ったペンギンがまた聞いてくるもんだから視線をそらして適当に流した。

「ほらほら早く行かないと売り切れちゃいますよ!ペンも早く!」

買いたいのはお前だけだろうがと思いながらうだうだ悩んでいたら痺れを切らしたシャチに腕を引かれてしまい、そのまま来い来いとペンギンも呼び寄せられる。食い意地がはると途端にこれだ。高がプリンごときで(二回目)とは思うがシャチにとってはそれが大事らしい。少食版ジュエリー・ボニーだな、と思いながら呆れ顔のペンギンと引き摺られながら教室を後にした。



「ロー、よかったのか?」
「なにが?」
「用事。なんかあったみたいだったけど」
「あー…」

我先にと群れの中に飛び込んでいったシャチを尻目に興味のない俺とペンギンは少し離れたところで壁を背に立っていた。サイバイバルだな…とぼんやりその光景を眺めていたら不意にペンギンに話しかけられて頬を掻く。柱に掛かっている時計を見れば昼休みが残るところ二十五分。

バラまかれてたらどうしましょー…。


「ロー?」
「俺やっぱ用事あるから、ちょっと行ってくる」
「? 分かった」

一抹の不安が頭を過り、仕方がないかと腹を括った。不思議そうに小首を傾げるペンギンには悪いが行く先や用件は告げずにその人混みを離れる。本当詮索好きな友人じゃなくてよかったと思いながら、ため息を吐くと重い足取りで屋上へと向かった。



ガラガラと扉を開けて昨日と同じ場所をちらりと覗く。だけどそこにはあの目立つ赤髪はいなくて眉根を寄せた。自分で言ったくせにいないとか…どうなってんだ?とか思いながら昨日アイツが座っていた場所に立つと帰ってしまおうかな、と思った。
でもそしたら不意にふわり、と後ろから抱き締められて。

「なっ…」
「よぉ」
「ユースタス屋!」

びっくりして目を見開けば、低くてでもどこか甘ったるい声が耳元のすぐ傍で聞こえてその近すぎる距離に思わず頬が熱くなる。抱き締めれてんだから近くて当たり前だろうと思うが、その時の俺はその近い距離がどうしようもなくて反射的に鳩尾に肘を入れた。

「ぐっ…お前鳩尾…」
「いきなり抱きついてきたりするからだろうが!」

ふらりと離された腕をいいことにユースタス屋から離れると赤い顔がバレないように怒鳴りつける。でもユースタス屋はすぐに気付いてしまったらしい。わざとらしく腹を擦っていた手を止めるとにやにや笑いながら俺の顔を見つめてきて。

「な、なんだよ…」
「ん?照れてんなーと思って」
「…はっ、なんで俺がお前なんかに、」
「やっぱかわいーな、お前」
「っ!?」

ジリジリと詰め寄ってくるユースタス屋にとんっと背に触れたのは冷たい感触、逃げ道のないコンクリートの壁だった。顔の両脇に遮るようにして手をつかれてしまえば逃げることも出来なくなる。そんな至近距離で思いもよらないことを言われて思わず言葉に詰まってしまった。だけど、別に詰まるだけならどうでもいいのだ…なのに何でまた赤くなってんだよ俺!

「っ、男に可愛いとか頭おかしんじゃねぇの?」
「そうか?女装してる時のお前も可愛かったぜ?」
「なっ…!もういい加減あの画像消せよ!」
「やだね」

ドキドキと何故か高鳴る心臓を無理矢理押さえ込んで言えば女装の話を持ち出されて違う意味で顔が赤くなる。いつになったらこいつの手元からあの画像が抹消されるのか、嫌だとにやにや笑うユースタス屋からは読み取れなくてその胸倉を掴んで頭突きしてやりたい衝動に駆られた。てか昨日もこんな感じじゃなかったか。昨日も頭突きしたい衝動に駆られたよな俺。でも昨日はそのあと……、っ!

ついついそのままの思考で昨日の不可抗力を思い出してしまい、思わず視線をそらす。このままの流れでいくと俺はまたやばいんじゃないだろうか、なんて思えてきて。
うろうろ視線を彷徨わせていれば不意にユースタス屋の手が頬に触れた。それに焦ってぐいっと胸を押し返してもユースタス屋はビクともしない。そのままどんどん近づいてくる顔に抵抗も何も出来なくて思わずぎゅっと目を瞑った。



「っ、く…ははは」
「…?」
「おもしれーな、お前」
「は…?」
「キスされる、とか思ったろ?」
「っ!!」

ぎゅっと目を瞑って、それから。全然何も起こらなくて、薄らと目を開けた。
そしたら目の前にはゲラゲラ笑っているユースタス屋がいて眉根を寄せる。何だよ、と言おうとしたらにやにや笑いながら俺を見つめてきて。囁かれた図星過ぎるその言葉に一気に頬が熱くなった。

「は、お、思ってねぇよ!」
「どうだかなぁ?すげェ真っ赤な顔で目ェぎゅって瞑って俺のこと、」
「ばっ!言うんじゃねぇよ馬鹿野郎!」
「ん?何だよ、別に何もないなら言ってもいいだろ?」

…こいつ…っ!!
わざとらしく首を傾げたユースタス屋にそう言われて唇を噛み締めるとキッと睨み付けた。だけどそれすらもまたあのにやにや笑いで返されてしまって悔しくて仕方がない。
それでも一番悔しいのはユースタス屋の言う通りなってしまう自分なんだけれども!

「も、いい、離せ」
「まあそう怒んなって」

ムカムカしながらユースタス屋の肩を押せば馬鹿にするようにポンポン頭を撫でられてしまい、その手をバシリと叩き落とす。キッと睨み付けて、馬鹿にすんなと口を開こうとすれば、不意に唇を塞がれて驚きに目を見開いた。



「っ!?」
「機嫌直ったか?」

お前がほしいんならいくらでもしてやるぜ?


それでも一瞬、唇に触れた感触が何か分からなくて呆けていれば、耳元で囁かれた言葉に徐々に意識がハッキリして思わず唇を押さえつけた。慌ててキッとユースタス屋を睨み付けるももう遅くて。
大体誰もしてほしいなんて思ってねぇよ!と叫び出したかったのに、かわいーな、お前、と再度呟かれた言葉に頬が赤くなってしまう。にやにや笑うユースタス屋も赤くなる俺も訳が分からなくてイライラして一体何なんだと叫びたくなった。




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