あのあと昼休み終了のチャイムが鳴ってふっと我に返った俺はユースタス屋を突き飛ばすと超ダッシュで逃げた。体育の測定の時だってそんな全力で走らないっつうのってぐらい本当全力で。走りは相変わらずヨロヨロしてたと思うけど、でもやっぱりユースタス屋が追っかけてくることはなくて。まあそれで追っかけられたら俺泣くけどさ。
とにかく急いで教室まで戻ると自分の席に座って机の上にうつ伏せた。スポーツだって苦手じゃない、むしろ得意な方(だるいからあんまりやる気はしないけど)の俺だが本当に、ほんっとーに走るのだけはマジで苦手。無理、だって体力ねぇもん俺。
「あ、ローお帰り。どこ行ってたんだ?」
「…ん、まあ…」
「あれ、ローさん風邪でも引いたんですか?顔真っ赤ですよ?」
「うるせぇ見んじゃねぇよバァカ」
「ひっど!心配したのにその言い様!」
席に座ってすぐ、ふらりと立ち寄る二つの人影に気付いて顔を上げた。毎回思うがペンギンに詰問されると焦る。だけどペンギンは俺が渋るとそこまで深く聞いてこないから助かるんだよなぁと思いながら、ぎゃいぎゃい騒ぐシャチを尻目にパタパタと手で顔(もちろんアイツのせいじゃない。走って少し熱くなっただけだ。)を仰いだ。その点こいつは空気も読まずにずかずかと…。だけど今のはシャチのお陰で話が流れたことだし、まあ許してやるか。
「そーですよローさんどこ行ってたんですか?せっかく購買で限定プリン買いに行こうとしたのに」
前言撤回。くそシャチめ…話を戻しやがって…。
勝手に行ってればいいだろと苛立ち紛れに言えば、ローさんが冷たいよーペンー!と泣きつくシャチ。はいはいとその頭を撫でながら宥めるペンギンはもう俺について聞こうとはしなかった。
こっちの理由も知らないし俺が教えないんだから暢気でも仕方かないかと思うと八つ当たりしていた自分が馬鹿らしく思えてくる訳で。
「あーもう悪かったな。喚くな」
「…!ローが謝った…だと?!」
「ペンギンてめぇ…」
「え、じゃあ明日一緒に行きましょ!」
ぴくりと宥める手を止めてぼそりと呟いたペンギンを睨み付ける。がその間にすぐさまシャチが割り込んできてキラキラした目で見つめられ、仕方ねぇなと言おうとして不意に言葉に詰まった。
あれ、何か…俺……。
『明日から昼になったらここ来いよ、待ってるから。…いいな?』
………。
………?
俺、なんて、言った……?
『ん、ぅ…?ん…』
………!!!
あああ俺の馬鹿!!あのとき頷いたよな俺!!
「どうしたんですかローさん?今度は顔真っ青にして…」
「うるせぇ…」