同棲中な二人の裏的日常 | ナノ

出掛ける支度をしている途中にインターホンが鳴った。こんな忙しい時に誰だよ。渋々玄関のドアを開ければ「宅配便です。」の声と共に小さめのダンボール箱を渡された。俺はなにも頼んだ覚えがないからきっとユースタス屋のものなのだろう。案の定受取人はユースタス・キッドとなっていた。

判子を押した代わりに受け取った荷物をリビングにあるテーブルの上に置く。ふと時計を見ると集合時間の10分前だった。こりゃ間に合わねぇなと思いながら靴を履く。だからといって急いだりなんか絶対しないけど。
ドアを閉めると鍵をかける。外は思いの外寒かった。




「ロー、お前帰らなくていいのか?」
「今何時だキャス…」
「えーっと…19時15分、です」

言われてちらりと時計を見やる。そして参考書やら問題集やらで埋まった机をじっと見つめた。見つめた先は主にキャスケットのノート。乱雑に計算式が殴り書きされているだけのそれ。

「お前あんだけやっといて問題集2ページ分しか解いてねぇじゃんか」
「うっ…いや、でも俺だってそれなりに頑張ったんですよ!だから多分全部当たっ」
「問1、最初から間違ってるぞ。で、全部何だって?」
「…二人して酷いですよ」

揚げ足を取られて少し拗ねたような態度をとるこいつが面白くて頭をぐしゃぐしゃにして撫でてやった。「ちょ、ワックスつけてるんですよ?!」という言葉は聞こえないフリで。

「じゃあ俺帰るな。ペンギンあとよろしく」
「任せておけ」
「えっまだやんの?!」

馬鹿かお前はこの調子だとまた赤点が云々とキャスケットに説教をたれるペンギン。それを尻目に俺はキャスの家を後にした。


いつもユースタス屋は大体20時頃に帰ってくる。だからまだその時間帯でもないのにリビングの電気が点いていたことには驚いた。玄関のドアに鍵はかかっていない。急いで家の中に入ってリビングの扉を開けるとネクタイを外しているユースタス屋がいた。

「帰って来てたのか」
「今ちょうどな」
「なんで今日こんな早いんだよ?」
「商談が予定より早く終わったからすぐに帰って来た。」

言ってくれればよかったのに…との呟きが聞こえたらしく、何回か電話したけどなと呆れたようなユースタス屋の返事が返ってきた。

「嘘、いつしたんだよ」
「30分ぐらい前。履歴あんだろ?」
「…あー…携帯の充電切れてる」

使って充電し忘れた携帯はとっくに使い物にならなくなっていたらしい。こんなことならちゃんと充電しとけばよかった。

まさかユースタス屋が早く帰って来るとは思わなかったのでなにも用意していない。いつもなら夕食を作るため料理をするけど今からやった少し時間かかるだろうし。

「ユースタス屋、俺今日なにも用意してないんだけど」
「別にいい。お前は腹減ってんのか?」
「んー…あんまり」
「なら今日は何も作らなくていい」

そういうとユースタス屋は風呂に入ってくると言った。適当に頷いてテレビをつける。特に面白いものもなかったが他にすることもない。暇だ。

それから暫くしてユースタス屋が出てきたので俺も入る。ちゃぷん、と湯船に浸かるとなんだか眠くなってきた。あがったら寝ようかな。いやでもまだそんな時間じゃない。早すぎる。でもどうせ暇だしなー…明日休みだから出掛けたいし。とりあえずあがってから考えるか。


そうして俺は今ベッドの上にいる。正確には押し倒されているんだが。
あのあと待ち構えていたユースタス屋に寝室へと連れ去られてベッドの上に押し倒された。今日はあまりそういう気分ではないので出来れば止めてほしい、出来れば。

「っ、俺明日出掛けたいんだけど…」
「出掛ければ良いだろ」
「このままじゃ腰痛くなって、無理」

折角の休みなんだしユースタス屋と出掛けたい…と小首を傾げてお願いしてみる。明らかにユースタス屋の唇がキモいと動いたので腹に蹴りを入れてやった。

「てめっ掴むなよ!そこは大人しく当たってろ!」
「鳩尾は痛ェんだよ。もういいからお前こそ大人しくしてろ」

相変わらずムードなんて皆無で。また文句を言おうとしたら唇を塞がれてそれすら出来なくなった。これ幸いとばかりに乗り込んできた舌が口腔で好き勝手に動き回る。
くちゅ、と舌が絡まって濡れた音がする。何だかんだ言って流されてしまう自分が悔しくて今日は絶対ユースタス屋の言う通りならないと固く誓った。

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