同棲中な二人の裏的日常 | ナノ

今まで一人暮らしだったからそれなりに家のことは自分でしてきた。でもやっぱり面倒くさい。
だからトラファルガーが家に来て、家事は俺がしてやる、と言ったときは正直有難かった。言われたときは、な。

実際蓋を開けてみれば「お前よくそれで俺がする!とか言えたな」状態。不器用とかと違う、根本的に違う。洗濯物とかもう訳分からないところまで持ってくし。ああ、これ俺の服だったのかこんな服もってねェぞ何で脱色してんだこれ、みたいな。
逆に何だったら出来るんだお前、と尋ねれば首を傾げて、料理?と言ってきた。仕事を増やすのが得意なこいつでも料理ぐらいは人並みに出来るのだろうか、と思ってやらせてみれば案の定仕事が増えただけだった。

台所に入るとトラファルガーは決まって何か一つ物を壊さないと気がすまないらしい。コップだとか皿だとか、とにかくパリンガチャンというお決まりの効果音があとを絶えない。もういいから、と言ってリビングにつまみ出せば拗ねるし、かと言って続けさせてみてまな板が血だらけになっていたことに絶句したこともある。
他の事はそれなりにやり方を覚えていったくせに料理に関しては最後まで悪戦苦闘していた。それでも止める気はないらしく、何これ、え?卵焼き?卵焼きって普通黄色じゃなかったか何で黒いんだ、みたいな料理を出されたことも一度や二度ではない。俺の死亡原因は癌だな、とか思いながら食べるのにも慣れてきた頃に漸く少しずつ覚えていってくれた。





「あれ、今日早いな」
「いつもより早く終わったからな」

台所で何やらパッケージと睨み合いをしていたトラファルガーが顔を上げる。
最近漸く一人でここに入らせることを許可できたぐらいだ。それでも最初のほうに比べれば随分マシになったと言える。

「何してんだ?」
「シチュー作ろうかと思って」

見てた、とまたパッケージに視線を移す。眉根を寄せるトラファルガーに、シチューってそんな難しい料理だったか?とネクタイを外してソファに放り投げた。

「お前ちゃんと掛けてこいよ」
「後でやる」

シャツだけになるとそれに顔を上げたトラファルガーが文句を言ったが聞き流し、未だ続く睨み合いの仲裁に入るかと奴の元に近寄った。

「座ってれば?」
「無理、手伝う」

鍋を出すと包丁やまな板なんかも取り出して、それにトラファルガーがムッとしたような顔をする。自分一人で出来る、とありありと顔に書いてあって、それにお前は小学生か何かかと思った。

「野菜は?」
「そのぐらい自分で切れる」

冷蔵庫から取り出すと、軽く洗ったそれを差し出されたトラファルガーの手に渡す。それでまた何か言うと本格的に怒りそうなので特に何も言わず鍋に油をしいた。包丁なんか振り回されたら堪らない。

ふと隣のトラファルガーを見ればぼろぼろと涙を流していて、その姿にぎょっとした。

「お前何泣いて」
「泣いてない!」

言ったそばから涙が一筋頬を伝う。俺何かしたか?と自分を顧みても特に何も思い当たらず、トラファルガーの手元を見ればすぐに元凶が何か察しがついた。

「…切ってやろうか?」
「自分で切れるって言ってるだろ」

玉葱切って泣くとか王道だな、と思いながらざっくんばらに切られていくそれを見つめる。トラファルガーを泣かした元凶はこれか、と思ってみてもあと一時間もしたら無事胃袋の中におさまっているだろうと思うとどうでもよくなった。
それよりもこいつの切り方が危なすぎて気になる。何で指全部出して切ってんだこいつ指は丸めろって一昨日言ったばっかじゃねェか。

「痛、っ」

トラファルガーは面白いぐらいに王道を地で行っているらしく、うっかり指を切ったようだ。それでも気にせず続けようとする姿に、まな板が血だらけになっていたのはこのせいかと他人事のように思った。

「…ちょ、なに…!」
「切れてるじゃねェか」
「知って、っ!」

腕を取ると、だから一人で出来るって、と言いたげに顔を顰める。それに切れた指先を掴んで指摘するとその指を咥えた。

「な、ユースタス屋!」

包丁を置いたトラファルガーの手が肩を掴む。引き剥がそうとするので腰を掴むとぐいっと引き寄せた。
結構ざっくりといったらしく、傷口からは血が溢れている。その血を舐め取って傷口に舌を這わし、少し強めに吸い付くとびくりと肩が震えた。

「…っ、は…ぁ…」

何つう声を出してんだ。
試しに指先だけでなく指全体を口に含めば俯いていた顔が上がる。何してんだ、と言いたそうだったので指の間にも舌を這わせば結局何も言わずに視線を逸らした。
ああこれが全身性感帯か、と思いながらトラファルガーの著しい反応を見つめる。こんなので涙目になるのだからそれでいいだろう。言っておくが玉葱による生理的反応なんかではない。

「も、離せ…っ!」

ぐいぐいと肩を押すトラファルガーに従って唇を離す。そして今度は首筋に舌を這わした。

「ちょ、ユースタス、屋!」
「デザートの方が先だ」
「なに訳の分からないこと、言って…っ!」

するり、と服の隙間から手を這わすと体のラインをなぞる。わざとらしく掌で胸元を撫でると指に引っかかってくる尖りをぎゅっと指先で摘んだ。

「っ、ぁ、ユースタ、屋ってば!」

咎めるような声色に唇を塞ぐと薄く開いたそこから舌を滑り込ませる。逃げるように動く舌を絡ませると唾液の絡まる音が静かなそこに響いた。
その間も乳首への愛撫は止めず、びくびくと震える体を視界の隅に入れながら舌先でゆっくりと上顎をなぞる。

「んく、ふっ、ぁ…は、っ」

最後に舌を緩く噛んで唇を離すと、どうやらやっと大人しくなったらしい。腕の中で静かになったトラファルガーの手をシンクに掴ませると後ろから覆いかぶさるようにして抱き締めた。

「ん、ぁ、やっ…あ、っ!」

すっ、と手を下におろすとズボンの中に手を入れる。下着の上から反応しだした自身に緩く触れると焦らすような手つきで形をなぞった。

「ぁ、あっ、や…っ」
「腰、揺れてるぞ」

もどかしい刺激に揺れる腰を指摘してやればふるふると首を横に振る。まあ言うまで触らないけどな、と思いながら相変わらずの手つきでなぞるように触れ、時折揉むようにして刺激を与えた。

「ゃ、だっ…ユースタ、屋、っ…それ、や、っ…」
「あ?それってどれだよ」
「ん、ぅ…分かる、くせに…!」

振り向いたトラファルガーがこちらを睨み、それににやりと笑った。

「言わなきゃ分んねェな」
「ひっ、ぁ、あ…っ」

そう言って促すように少しだけ強い刺激を与えてやる。だがそれも一瞬で、足りない刺激にもっと、と言うように自ら腰を押しつけ揺らしてきた。

「あっ、あっ、や…」
「相変わらず体は正直だな」

吹き込むようにして耳元で囁くとトラファルガーは首を振る。くちゅ、と耳に舌を這わせばびくりと肩が震えた。

あまりの焦れったさにぽろぽろと涙を溢し始める。それに、ちゃんと言えたら気持ちよくしてやるよ、と追い詰めるように囁いた。

「ふ、ぁっ…キ、ッド…」
「何だ?」
「あ、直に…っ、触っ、て…?」

振り向いたトラファルガーがじわりと涙の浮かんだ目で見つめ上げる。その姿ににやりと笑うと、よくできました、と冗談めかして囁いた。

「あぁっ!ひっ、ぁっあ!」
「すげェぐちょぐちょ…焦らされるの好きだなもんな、お前」
「や、違…っ!ぁあっ!」
「違わないだろ?こんなにして…説得力の欠片もないな」

ふっと笑うと抜く手つきを速める。焦らされるのが好きでこうやって言葉で虐められるのも好きなくせにやれば反抗して抵抗してくるところが堪らない。加虐心に火がつくとはこのことだろうか。

「あ、あっ、ゃ、だめ、いく、いっ…ひぁあっ!」

限界を訴えだしたので射精を促すように先端を弄る。そうすればシンクを掴む手にぎゅっと力が入って、びくびく震えると掌に白濁を吐き出した。

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