Gift | ナノ

(同棲パロ)


「今月の三連休さ、どっか行かねェ?」
「どこかって?」
「一泊二日とか出来るとこ」

雑誌をパラパラと捲りながら何の前触れもなくそう言うと、トラファルガーはテレビに向けていた視線をこちらに向けて言葉を咀嚼するように瞬きを二回した。
そしてするりと擦り寄ってきて、まるで面白い事でも見つけたかのような顔で横から雑誌を覗き込む。

「マジで?行きたい」
「じゃあ早めに決めようぜ。どっか行きたいとことかある?」
「ベポが」
「動物園はやめてくれ」

途端にキラキラと目を輝かせ出したトラファルガーには悪い予感はしていた。案の定その口から出たお気に入りの白熊の名前に先手を打つと途中で遮る。
この間も行ったばっかだろ、と呆れたように呟けば気に入らないのか剥れ面とご対面。あの白熊のこととなるとトラファルガーはまるで餓鬼っぽい。

「大体泊まるっつてんのに動物園はねェだろ。日帰りならまだしも」
「じゃあなにがあるんだよ」
「んー…、あ」

拗ねたトラファルガーの隣で模索するように眉根を寄せる。
特にどこに行きたいと決まった目的地があるわけではないが、何か言わなければ確実に動物園決定だ。何かちょうどいいのを見つけなければと所在なく雑誌を捲っていれば、ふとある記事が目にとまった。

「ここ、とかよくね?」
「…温泉?」
「そ、たまにはゆっくり二人で過ごすのもいいだろ」
「いつも一緒じゃん」
「違った環境でだよ」

眉根を寄せたトラファルガーを宥めるように頬にキスを一つ。結構有名らしいぞ?と館内の写真を見せると、トラファルガーもそれを見つめる。
別に執着してる訳じゃないから気に入らないなら変えればいい。そう思って表情を窺えば、いいよ、と案外トラファルガーは呆気なく言った。

「やっぱりユースタス屋と一緒ならどこでもいいからそこでいい」
「…どした?」
「素直じゃ悪いかよ」

その言葉とふわりと笑うトラファルガーに目を見開けば、ムッとしたような表情に戻ってしまって慌ててそんなことはないと付け加えた。
もちろん素直なこいつは可愛い。それが真っ昼間だと多少驚きはするが、ニヤケそうになることに変わりはない。
それに気付いたトラファルガーが、間抜け面してんなと頬を抓る前にさっさと予約してしまおうか。





「なんかすげぇ…思ってたよりでけぇし格式ありそう」
「老舗らしいしな」

案内された部屋に入るとトラファルガーはぐるりと視線を巡らせて、感心するように呟いた。それを尻目に適当に荷物を置く。
予約が取れるかどうか少し不安だったが空き部屋があってよかった。うろちょろと物珍しげに部屋の中を動き回るトラファルガーを見るとそう思う。

「ちったぁ落ち着けよ」
「だって初めてだし」
「連れてってもらったこととかねェの?」
「温泉、苦手なんだ」

赤の他人と裸になって一緒の湯に浸かる気持ちが分からない、とトラファルガーは眉根を寄せるとそう言った。
確かに予約を取る前に頻りに、そこの旅館には部屋に風呂がついてるのかと聞かれた記憶がある。言われなくても部屋に露天風呂がついてる旅館に予約しようと思っていたから問題は全くなかったが、どうやらその質問はここからきていたようだ。

「誘ってんのかと思ったのに」
「は?」
「二人きりで入りたいからって意味で聞いてたのかと思っ」
「んなわけねぇだろ!」
「じゃあ入んねェの?」
「そりゃ…!入る、けど…」

首を傾げて問い詰めれば、頬を赤く染めたトラファルガーは言葉を濁しつつもぼそぼそと呟いた。
不明瞭な言葉の中にもしっかり聞こえたその三文字と、俺とならどこだっていいと楽しそうに言いながら好んでもいないのについてきたトラファルガーが相俟って頬が緩む。無意識的な行動は言葉よりもよっぽど素直に感情を表していた。

「お前、本当に俺のこと好きだよな」
「なっ、…んで、そうなるんだよ!」
「だってそうだろ?まあ俺はそれ以上に好きだけど」

そう言って唇に触れるだけのキスを落とすと、触れた頬がますます赤くなっていって面白くなった。別に初めてな訳でもないのに慣れていないみたいに初々しい姿が可愛く思えて笑っていれば、からうかな!と顔を赤くしたトラファルガーに怒られて。
もちろんからかってる気なんて全くなかったから、本当のことだと付け加えてやれば耳まで赤くして黙ってしまう。

「そういう反応ばっかしてっと、先に食っちまうぞ」
「っ、変なこと言うな馬鹿!も、風呂入ってくるっ」

俯いた顔を持ち上げるように顎を掴んでこちらを向かせると、首を振って振り払われる。慌てたように視線をそらすとトラファルガーは俺が何か言う前に、部屋に備え付けてある風呂場に逃げるように向かった。
そこでやめておいてもよかったけど、トラファルガーの反応を見ていたら何だか面白くなってきて自然と後を追いかけるように立ち上がっていた。自分のことで精一杯なこいつがそれを知るはずもなく、ガチャリと扉を開けたと同時に手を伸ばしてその扉を閉めると後ろから抱き締めた。

「もう風呂入んの?」
「露天風呂はあとで入りたいから先に…っ」
「今じゃなくても夕飯までまだ時間あるじゃん」
「ユ、ユースタ…っ、ちょ、なにして、!」
「味見?」

冗談めかしてそう言うと、耳元で囁いていた唇をそのままにトラファルガーの耳を食む。耳朶を柔く噛んで舌を這わすとびくりと肩が震えてぎゅっと腕を掴まれた。
耳の中に舌を入れて、ぴちゃりと音を響かせるとトラファルガーから焦ったような雰囲気が伝わってきて益々面白い。
恐らく赤いであろうその頬を想像して、肩を掴むとくるりとこちらを向かせる。想像の中と寸分違わぬ姿で立つトラファルガーが何か言う前にその唇にキスをした。静止を促すように胸を押されても止まることはできず、ちょっとした悪戯にだんだんと本気になっていく自分に苦笑する。

「んっ、ユ、スタ…まっ、…んん、ふっ、」

啄むようなキスの合間に何とか言葉を紡ごうとするトラファルガーにキスを深くしていく。壁に押し付けて舌と舌を濃密に絡め合わせれば、さすがに唇の隙間から洩れるのは甘い声だけになった。その声に促されるように舌を緩く噛んで吸い上げると、びくりと腰が震えるのが伝わってくる。

握り締めた掌から次第に力が抜けていき、縋りつくだけとなった腕に唇を離せばとろりと蕩けた瞳がこちらを見つめる。ぎゅっと服を握り締め、薄く唇を開いて呼吸をするトラファルガーに目を細めた。
今ここで押し倒したいが楽しみはあとにとって置きたい気もする。と、邪心まみれのことを考えていたら不意にトラファルガーからの触れるだけのキスをされる。
それだけでプツリと理性の切れそうになった俺は再度トラファルガーの顎を掴み、キスしようとしたがその手で唇を押さえられて眉根を寄せた。

「…マジで風呂、入らせろ。一人で」

見越したように最後の、一人で、を強調されて睨みつける瞳に肩を竦めた。そんな涙目で睨みつけられても何とも思わないが、機嫌を損ねると後々大変なことになるのでここらが引き際かもしれない。
あとで一緒に入るから、と頬を染めてぼそりと呟いたトラファルガーを止める術はなく、やはりお楽しみは後にとっておくべきらしい。




風呂に入ったトラファルガーに続いて俺も入ると、あがった頃にはもういい時間になっていた。案の定それからあまり待たずして夕食が運ばれてくる。
旅館自体が人気なだけあってなかなか豪勢で美味い夕食だった。トラファルガーも全ては食べ切れなくてもいつもより箸が進んでいたと思う。ご馳走に気を取られてすっかり機嫌も元に戻ったらしい。夕飯が下げられて布団が敷かれても、トラファルガーはそこに寝転がりながら他愛もない話を続けた。
俺は専らその話を聞くだけで、適当に相槌を打ちながら浴衣の隙間から覗く脚や項に視線を奪われていた。

「ユースタス屋?聞いてる?」
「聞いてっけど…」

そこで言葉を止めると不思議そうな顔をしたトラファルガーがこちらを見やる。どうかした?と言いたげに首を傾げる姿に近寄ると、起き上がったこいつを後ろから抱き締めた。

「聞いてっけど、こっちが気になって集中出来ない」
「え?っ、ぁ、ん!ちょ、ユースタ…!」
「さっき我慢してやったろ?触らせろ」
「ま、待ってて!先に露天風呂入ろ!な?」
「これが終わったらな」

トラファルガーの首筋を舐め、柔く噛みつくと浴衣の隙間からするりと手を差し込んで乳首を撫でた。
止めようとしたトラファルガーの手が俺の手を引き離そうと腐心してはいるけれどもう遅い。静止の言葉も聞き流して、きゅっと乳首を抓んでやると徐々に甘い声が溢れだす。こいつがどうされればよくなるかなんてのは知り尽くしているから、その気にさせるのにそう時間はかからなかった。

「んぁ、っ、あ…や、っ…」
「いいからそのまま感じてろよ」

恥ずかしがっているのか何なのか、むずがるように緩く首を振るトラファルガーの耳元でそう囁くと乳首を捏ねる。ふにふにとして柔らかかったそこは次第に硬くなり、ピンと主張し始めたのを押し潰すように弄っていく。
時折引っ張ったり、正反対に緩く撫で上げたりと強い刺激と弱い刺激を繰り返していくと、トラファルガーの体からどんどん力が抜けていくのが分かった。繰り返し与えられる愛撫に、すっかり俺に背を預けて快楽を甘受している。

「ふぁ、あ…!ユ、スタ…それ、やっ、ぁ!」
「好きだろ?こうされるの」
「ひぁっ、んん…っ!」

震えながら喘ぐトラファルガーに、今まで散々弄っていた乳首から指を離すと真っ赤に腫れてぷくりと熟れたそこには触れず、その周囲をゆっくりと撫でる。時折指の腹で腫れたそこをそっと撫でてやると、びくびくと体を揺らしてきゅっと俺の腕を握り締めた。
嫌々と首を振って、こちらを振り向いた瞳にそっとキスを落とす。強い刺激を与えられてぐちゃぐちゃにされるのも好きだが、こうやって触れるか触れないかの弱い愛撫で焦らされるのもトラファルガーは好きなのだ。だから嫌がったって、もっとしてほしいと言っているようにしか聞こえない。

「あっ、あ…!ゃあ、ちゃ、と、さわってぇ…っ」
「触ってほしいの?」
「ふ、っん…もっと、強く…」

さっきまでの嫌がっていた態度はどこへやら、今度はもっと強い刺激が欲しいと泣き出した。今では俺の指に乳首を擦り付けようと、胸を反らして快楽を求めるように腰を振っている。
その姿にくつりと笑うとお望み通りぎゅっと強く乳首を抓んでやった。指先でぐりぐりと捏ね回しながら、乱れた浴衣の隙間に手を入れてトラファルガーの腿を確かめるように撫でる。そのまま滑らかな肌を伝って熱い中心部へ触れると、下着を脱がしてゆっくりと抜きあげてやる。

「ひっ、ぁ!あっ、ぁ、んー…っ!」
「はっ、ぐっちゃぐちゃじゃねェか。…そんなに乳首、気持ちいい?」
「は、っん、ゃっあ…ちがっ、ぁあ!」
「嘘吐くなよ。触ってやらないぞ?」
「ぁ、だめぇ!や、さわって、きもち、からぁ…ひっ、んん!」

恥ずかしがって首を振るトラファルガーにわざとらしく指を離してみせると、素直な言葉でもってやめないでと言いたげにこちらを見つめてきた。潤む瞳はすでに快楽で蕩けきっていて先を強請るように欲を映し出している。それと相対する理性が残っていたとしても結局は敵わないようだ。
次は最初から素直に言えよ、と念を押すと分かったから早くと言うように擦り寄ってくるトラファルガーに苦笑した。随分とまあ淫乱に育ったものだ。少し快楽を与えてやれば、普段のこいつとは見違えるほど素直で甘い。

「っぁ、きっどぉ…!」
「分かってるって」
「ふ、ぁっ!ひぅ、ぁあっ」

強請るような声色に、涙の溜まった瞳にキスすると止めていた手の動きを再開してやる。
腫れて弄りやすくなった乳首を引っ掻きながら、だらだらと先走りを溢す自身を緩急つけて上下に抜く。
びくびくと腕の中で小刻みに揺れるトラファルガーを抱き締めながら、その首筋に誘われるようにキスを落として。乱れた浴衣から覗く細い脚が痙攣し、すすり泣きながら高い声を上げるトラファルガーの耳朶をそっと食んだ。

「ひゃ、ぁあ!あ、ゃあ、いっちゃ…っ!」
「ん、イっていいぞ」
「あっ、あぁー…〜〜っ!」

限界を訴えたトラファルガーに抜き上げる手つきを早くしてやると、声にならない声を上げながら呆気なく絶頂を迎えた。
痙攣していた足が強張り、びくんと大きく腰を揺らすと精液が掌に吐き出される。ぐったりと弛緩したように体から力が抜けていき、荒い息をするトラファルガーの目元にキスをした。

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