Gift | ナノ

(同棲パロ)

「ほら、これやるよ」
「なにこれ。お土産?」
「まぁそんなもんだな」

ソファに座ってテレビを見ていると帰ってきたユースタス屋にポイッと袋を投げ渡される。お土産とか珍しーと思いながら、開けていい?と聞けば頷かれて包装紙をビリビリと破いた。数秒後には見るも無惨な紙の山と中から出てきた謎の物体。それに眉根を寄せた。何だこれ。

「…なにこれ」
「エプロン」
「んなの見りゃ分かる。なんでエプロン」
「だってお前壊滅的に料理ヘタクソじゃん。毎回毎回服汚すし」

実用的だろ?と言われてムッとしたような顔をするとユースタス屋は肩を竦めた。本当のことだろと顔に書いてあってムカつく。
確かに俺が料理すると台所も服ももれなくぐちゃぐちゃになるけどさ。だけどもっと他にあるだろ?何だこれ。

「いいよじゃあもうそれは。だけど一つ聞いてもいいか?」
「どうぞ」
「これ誰が着けんの?」
「お前以外誰もいねェだろ」
「じゃあなんで明らかに女物なの?」

ふわり、と広げたそれは明らかに女物。サイズとかそういうことじゃなくて、悲しいけど見た目一発で分かる。だって腰の部分がきゅっと細くなっててウエストが強調されてるし、それが下にいくにつれてふんわりとしていってスカートみたいになってってるし、何より純白フリルのエプロンが男物だなんて話を俺は聞いたことがない。

「別に着れるだろ?細いし」
「お前俺をどうしたいんだ」

何故女物なのかという答えには至っていないユースタス屋に冷ややかな視線を送ってみた。が、ユースタス屋にそんなの効かないのは分かりきっているから虚しい。

「だってそれ着てお前が料理してたり出迎えたりしてくれたら何か新婚っぽくね?」
「妄想も大概にな」

そろそろ本気でユースタス屋の中での俺の位置づけが気になってきた。あれか。疲れて帰ってきたユースタス屋がリビングに入ると台所でそれ着た俺が鍋とかかき回してんのか。それともやっぱりそれ着て玄関で帰ってきたユースタス屋にご飯にする?お風呂にす考えんのやめよ気持ち悪い。

大体お前これ買うの恥ずかしくなかったのかよと言えば別にと何でもない風に返される。何て奴だ。でもメイド服のときネット通販だったしな。これも案外…でも包装紙から考えるとこいつマジで買ってきやがったな。クソッ、顔がよければ何でも許されると思いやがって。

「な、着てくんねェの?」
「着てどうすんだこんなん」
「裸エプロンとか」

はい、お蔵入り決定。
至極真面目に言ったユースタス屋にため息を吐いた。



ふわっと欠伸をしながら気だるい体をベッドの上に横たえて目を瞑った。このまま寝れば何も考えられずに眠れそうだな、なんて。でもとりあえずユースタス屋が来るまでは起きてなきゃ。とか思いながらうつらうつらしていたらふわりと頭を撫でられて、気付いたら戻ってきたユースタス屋が寝転がる俺の隣に座っていた。

「ほら、水持ってきたぞ」
「…ありがと」

少し掠れた声で応えると起き上がって水をもらった。起き上がると同時に痛む腰に眉根を寄せながら、冷たい水が熱くなった喉を通っていく感覚に息を吐く。
コクコクと水を飲む途中で皺だらけのシーツに放られたその存在に気づいて思わず手を止めた。

「なんでそれがここにあんの」

気付いた俺が眉根を寄せながら指差せばユースタス屋は、ああ、と何でもないように純白フリルを手繰り寄せて。

「着てみろよこれ」

と至極当たり前のように言った。

「…なんで?」
「だって結局着てくんなかったろ」
「じゃなくてなんで今?」
「裸だしちょうどいいかと思って」

何がちょうどいいだ馬鹿野郎。こっちはもうクッタクタで今すぐにでもベッドにダイブして寝たいってのに、俺には何のメリットもない、むしろデメリット丸見えのそのエプロンをつけろと?

「やだ。眠い。寝る」
「そう言うなって。一回着るだけでいいから」

まともに話すのも面倒臭くて単語で返すとユースタス屋に背を向けて横になった。その肩をユースタス屋が頼むから、と揺すってきて鬱陶しい。お前は餓鬼か。

「大体男の裸エプロンなんて見てなにが楽しんだよ」
「俺は楽しいけど」
「…あ、そ」

ローに限りだけど、と猫撫で声をだすユースタス屋に嬉しくねーと眉根を寄せた。

「どうでもいいけど寝かせて」
「じゃあ着て」

おい、会話になってねぇよ。大体何でそこまでしてエプロン着せたがる。もしかしてユースタス屋ってコスプレ(?)好きなのかな。でも俺がメイド服着たとき大爆笑してたしなぁ…あ、思い出したらイライラしてきた。
でも結局こうなったユースタス屋に何を言っても無駄なのは分かりきっていることで。ぐっすりと惰眠を貪りたくてしょうがない俺は寝惚け眼を擦ると仕方なしに起き上がってユースタス屋からフリルを奪い取った。マジありえねぇ。眉根を寄せながらもそれにするりと腕を通した。

「…これでいいか?」

最終的にどうでもよくなった俺は、ふわっと欠伸をして目を擦ると投げ遣りにユースタス屋に問い掛けた。こんなの何が楽しいんだかさっぱり分からない。しかもユースタス屋の反応がまるで皆無なのも気に入らない。せっかく俺が着てやったんだから何か反応しろよ、と寄せた眉根をさらに寄せて、もう脱ぐからなとエプロンに手をかけようとすればユースタス屋が口に手を押し当てているのが見えた。あ、鼻血堪えてるときのポーズだ。

「…脱ぐ」
「待てって」

俺の好きになった人はもっと格好いい人だったはず。何この変態人違いですか?
はぁ、とため息を吐いて一応宣言してやれば慌てて止められる。これ以上俺に何を要求するつもりだ。

「裸エプロン着たらあれもやんなきゃだろ。ご飯にする?ってやつ」
「着るだけでいいって言ったじゃん」

どんどん増えていく要求に眉根を寄せればまた頼むからと。大体エプロンつけたらそれやらなきゃって義務かお前。

「……言うだけだぞ」
「ああ」
「言ったら寝るからな」
「お好きにどうぞ」

裸エプロンなんてこの世から消滅してしまえ。そんなことを思いながらユースタス屋を睨み付ける。一度言ったら聞かない性格に惚れた弱みも相俟って結局折れてしまう自分に呆れながら、これ終わったら絶対寝ようと決意した。

「ユースタス屋」
「ん?」
「…ご飯にする?お風呂にする?……それ、とも、」

何だこれ。予想以上に恥ずかしいんですけど。
予定では早口言葉ですか並みにとっととと言ってとっとと終わらせるつもりだったのに。こっち見ながらにやにやしてるユースタス屋がムカつく。

「それとも…何?」
「…それ、とも…俺?」

意地悪そうに笑ったユースタス屋に先を促されて俯きながら呟いた。恥ずかしがってる自分が馬鹿らしくて恥ずかしい。でも顔中に熱が集まっていく感覚は止められなくて。もういいや寝ようと今度こそエプロンを脱ごうとすれば。

「お前かな」
「…は?」

え、いやいやいや。俺寝るし。
ユースタス屋のとびっきり甘い声に眉根を寄せれば唐突に抱き寄せられて腰を撫でられ思わずびくりと体が跳ねる。しかもれろりと首筋に舌を這わされて。おいちょっと待て。

「な、ユースタス屋!話、違…っ!」
「寝たきゃ寝りゃいいだろ?俺は俺の好きなようにするから」

にやっと笑われて囁かれた言葉にユースタス屋を睨み付けると押し返そうと肩を押す。だけどびくともしないし、ユースタス屋がいやらしく体中を撫でるからどんどんと力も抜けていく。さっき散々イかされて悲鳴を上げる体は堪えきれないはずなのに。

「ん、ぁっ…や、ユースタス屋…っ」

いいようにされた体はいつの間にか熱を持ってしまっていて。甘ったるい声まで上がる始末。流されてる自分が悔しくて、でもついさっきまで快楽を与えられていた体には些細な刺激も堪らなくてじわりと目尻に浮かぶ。

「ふ、んんっ…ぁ、やっ…」

ぐりぐりとエプロン越しに乳首を弄られてびくりと体が震える。弄られ続けて赤く腫れていたそこは少し触れるだけでもびりびりとした刺激が体中を巡って首を振った。なのにユースタス屋は先程と同じように摘んで捏ねるように押し潰し、もう片方はちゅっと口に含んで甘噛みするから。
布地と擦れて擽ったいようなむず痒いような何とも言えない感覚が体を支配する。でも体はしっかりと快楽を感じ取っていて、思わずユースタス屋の頭を抱きしめた。

「ほら、ロー見てみろよ。透けてる」
「ん、ゃだぁ…っ」
「いいから」

顔を上げたユースタス屋に耳元で囁かれて首を振った。そんな自分の姿見たくないのに、ユースタス屋は促すように囁く。拒否を許さないその言葉に恐る恐る目を開いて。

「ゃ…っ!」

すぐに目を開けたことを後悔した。
飛び込んできたそれは布地を押し上げるように主張していて、散々弄られたせいか透けたところから赤く腫れているのが分かって、思わず顔が赤くなる。こんな、自分の体じゃないみたいで嫌だ。なのに。
やらしいな、と囁いたユースタス屋が見せ付けるように指先で乳首を摘む。それに堪えられなくなってまたぎゅっと目を瞑った。

「こっちももうぐちゃぐちゃになってる」
「ゃあ、いうな…ぁっ!」

愉しそうに笑ったユースタス屋が布地の上から反応しだした自身に触れる。くちゅ、と緩く音を立てて抜かれながら、こっちも透けてる、と耳元で囁かれて恥ずかしくて目尻に涙が浮かんだ。だけど意地悪なユースタス屋は俺が恥ずかしくて死にそうなの知ってるくせに、乳首だけでイけんじゃねェ?なんてまた意地悪なことを言ってくるから。

「ん、ぁ、ゃだ、やめ、できな…っ」
「どうかな。お前淫乱だし」

自身に触れていた手が離れ、腰のラインを伝って乳首に触れる。ユースタス屋の指で弄られながら、さっきの光景を思い出して顔が赤くなった。

「ひっ、ぅ、…や、んんっ…」

ぐりぐりと弄られて、爪を立てられて歯を立てられて。そんなとこで、と思うと絶対イきたくないのに体は正直で擦り付けるように腰が勝手に揺れる。それを見ながらにやにや笑ったユースタス屋を突き返したいけどそれも出来ない。気持ちいいのと羞恥と布越しのむず痒さに泣きそうになった。

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