Gift | ナノ

(同棲パロ)

今日のトラファルガーは何だかおかしい。
―…いや、今日だけじゃねェな。おかしいのは数日前からだ。


何がおかしいのかと言うと、



キスをさせてくれない。



トラファルガー、と呼び寄せて振り向いた唇にキスをしようとすると何故かふいっとかわされる。しかもそれがごく自然体。
あ、洗濯物取り込んでなかったーとか、そんな感じ。

キスはするのが好きらしいから、よく自分からしてほしいと言ってくるくせにそれも言わない。
しようとすれば避ける。
それに、言ってしまえばキスだけではなかった。
ここ最近は何故だかトラファルガーが寡黙になってしまってあまり口も聞いてくれない状態。
投げやりとまではいかないけれど短い返事を二言三言返すだけ。

元から細い食もここ最近で更に細くなったような気がする。顔を顰めて無理矢理飲み込むとすぐに食べるのを止める、そんな感じだった。

しかもいつもは、よくキスをしてからなだれ込むことが多いから最近ではセックスもあまりしていない。
無理矢理押し倒すのも一つの手だけど、そうするとトラファルガーが嫌がるからなるべくしないことにしている。あいつの嫌がることは出来ればしたくない。



だけど正直我慢するにも限界というものがある。






「トラファルガー…」
「なに?……あっ、そう言えば風呂沸かすの忘れてた」

ほら、まただ。
ソファに座って本を読むトラファルガーにキスしようとして…こいつはもっともらしい言い訳を不自然な間合いで作ってこの場から逃げようとする。

いつもならその背中を見送るだけであまり深入りはしない。
だけど今日は――…



「なぁ、何でキスさせてくんねェの?」

逃がすまいと腕を掴んで、後ろからぎゅっと抱き締める。
そうすればトラファルガーの視線がきょろきょろと戸惑うように動いて、言葉に詰まったのか、別に、と素っ気なく言った。

「…させてなかったっけ?」
「惚けんなよ。ずっと我慢してんだからな」

抱き締める腕に力を込めると、トラファルガーの耳元でそっと囁く。
こいつは耳が弱いから、こうするとすぐに力が抜けていって―今だって耳裏にキスを一つ落としただけなのに大袈裟に肩が揺れて自然と笑みが溢れた。

「なぁ、何で?」
「…そ、れは…」

うっ、と本格的に言葉に詰まったらしく、珍しく黙り込んでしまった。

―…いよいよおかしい。
何か本当に嫌な理由があるのだろうか?


「するのが嫌になったのか?」
「ちが…!…それはない」

少し声のトーンを変えてそっと囁くと途端にトラファルガーが勢いよく首を振る。

違くて、あの、その…と慌てたよう付け加えるこいつが面白くて、バレないように笑みを浮かべた。

「じゃあしていいだろ?」
「バ、やめ…んんっ!」

まだ何かブツブツと言っているトラファルガーを遮って顎を掴むと少々強引に唇を塞ぐ。

くちゅ、と舌先が触れ合っただけで奥へと逃げてしまったので、誘われるまま追いかけて舌全体を絡めとった。
久しぶりに味わうその感触につい深くを求めてしまう。

「ふっ、んん…ぁ、や、んぅっ!」

角度を変える度に切な気な声が洩れて、それにまた劣情を掻き立てられる。
うっすらと目を開けると、眉根を寄せて必死になって与えられたキスを受け入れる、その表情に目を細めた。


―…不意に口内を鉄の味で満たされて顔を顰める。
どんどん、とトラファルガーが胸元を叩くので最後に舌を強く吸って唇を離した。

「も、バカ…っ、最悪…」
「な、お前…」

唇を離すと思わずぎょっとした。
トラファルガーが自分の唇を手で押さえながらぼろぼろと涙を溢していたから。

「悪い、そんなに嫌、」
「違う!舌が痛いんだよ馬鹿!」

慌てて涙を拭うと首を振られて、べっと舌をつき出される。
何かと思って見てみれば、先程口内でした血の味の原因が分かったような気がした。

「…どうしたんだお前それ」
「は?…ユースタス屋のせいなんだけど」

きっとこちらを睨み付けてくるトラファルガーは生憎ながら涙目で全く効果がない。

つきだされた舌を見てみると赤く腫れたそこは確かに血が滲んでいて何だか痛々しそうだった。
だが俺がトラファルガーの舌を噛み千切るほど強く噛んだ訳でもないし、こいつの言ってることの意味がよく分からない。俺が何かしたのだろうか?

「ユースタス屋がキスする度にいつも、いっつも舌噛むから炎症起こしたんだよ!」
「…そんな強く噛んでたか?」
「だって一回じゃなくて何回もするじゃん」

お前のせいだ馬鹿、とトラファルガーは痛そうに眉根を寄せた。
どうやら喋るとそれだけで舌が痛むらしい。寡黙だったのもこのせいか。

そう言われて初めて気づいたが、確かにそうかもしれない。
きっと無意識の内に力加減を誤って(もしくはわざと)、強く噛んだことも一度や二度ではないはずだ。心当たりがない訳でもない。


あんまり話さないようにして、早く治そうとしてたのに、とトラファルガーが恨めしそうにこちらを見やる。
あまり食事を取らなかったのも、痛くて食べれなかったからだとこいつは言った。

「もうユースタス屋のせいでダメになった」
「ならあのときそう言やよかったのに」
「……だって、それでユースタス屋が」
「俺が?」
「っ…あんまりキスしてくれなくなったら、やだから…」

そう言うとトラファルガーは、こんなこと言わせんな、と肩に顔を埋めてきた。
顔は隠したつもりだったんだろうが耳が赤いから全く意味がない。

そうして少し潤んだ瞳がちらりとこちらを見上げ、目が合うと慌てたように視線をそらした。

…何こいつカワイイ。



赤く腫れた舌はいつもより鮮明で、その舌がちろりと唇から覗く度に目で追ってしまう。
痛みのせいで潤んだ瞳も、何だかそうとは思えないようなもので。

その空気に堪えられなくなったトラファルガーの、うがいしてくる、の一言で我に返ると、逃げようとする腕を掴んでソファの上に押し倒した。

「や、な…」
「もうキスしないからいいだろ?」
「っ、だからそーいう…」
「我慢出来ない」

トラファルガーの弱い声で低く囁くと、形のいい耳に舌を這わす。
途端にびくりと体が震え、ふるふると振られた首を無視して服をたくしあげた。

「や、ユー…まっ、て」
「待たない」

ちゅ、と乳首を口に含むと甘く噛んでは吸い上げる。もう片方は指先で摘まむと捏ねるように弄って、時おり強く爪を立てた。
そうすればだんだんと赤く色づき、ぷくりと芯をもって勃ちあがる。
それをさらに押し潰すように弄るとトラファルガーの体が与えられる快楽にびくびくと震えた。

「久しぶりだからいつもより感じてんのか?」
「ん、ぁ…そ、なこと…っっ!」
「じゃあこれ何だよ?」

そう言ってズボンの上から形をなぞるように頭を擡げた自身に触れると、それに反応した腰がピクリと揺れる。
じわりと涙の滲む目で睨み付けられたが、気にせずベルトをとると下着の中に手を這わした。

「ひっ、あ…や、ぁ…」
「もうぐちょぐちょだな。そんなに乳首弄られんのが気持ちよかった?」
「んゃ、違…ゃ、あっ!」

そうじゃないと否定するように首を振ったので指先でそこを弾くと、びくんと体が震えて甘い嬌声が部屋に響いた。
気持ちいいくせに、と耳元で囁くと、ぐちゅぐちゅと音を立てて抜く手つきを速める。
「あっ、ひ、ぅっ…や、音、やぁ…っ」
「何でだよ。お前が気持ちよく思ってる証拠だぜ?」
「ひ、ん…や、だっ、て…恥ずかし…」

ぽろぽろと涙を溢しながら少し伏し目がちに告げられて、その姿に思わず息を吐いた。


「…お前可愛いすぎ」
「っ!ぁあっ、や!だめ、やっ、イく、イくっ…〜〜っ!」

ぼそりと呟くと射精を促すように先端を中心的に弄る。
そうすればびくびくと断続的に体を震わせて掌に白濁を吐き出した。

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