Gift | ナノ

(学パロ)


土曜の午後の昼下がり、十三時を少し過ぎたこの時間にある電車は極端に少ない。
ガランとした電車内に、さすがド田舎、と視線を巡らす。見たところ奥の方にぽつりぽつりとじいさんやばあさんが座っているだけで、たった二両の電車がやけに広く感じた。

せっかくの土曜なのに午前中は模試があって最悪だった。
しかも最初から数学で、時間も百分。外は憎らしいほど晴れていたからそれも相俟ってほとんど昼寝の時間になったけど。
終わったら即行でトラファルガーを連れ出して学校を出た。どこか行きたいとこでもあるかと聞けば、俺の家がいいと言うからこうして一時間に二本しかない電車に乗って揺られてる。
せっかく晴れてんだし、何もない俺の家とかつまんなくねェ?とも思ったが、二人きりで過ごすのもまあ悪くない。素直じゃないトラファルガーは時に面倒くさい思考をするので、二人で過ごしたいんだろうと自分に都合のいいようにそのことを考えた。

ガタンガタン、と電車が心地の良いリズムで揺れる。ともすれば寝てしまいそうになるその揺れに、ちらりと隣に座るトラファルガーを見た。
十分に空いてる座席の中では不自然なその近い距離。無造作に置いた俺の手を弄るトラファルガーは贔屓目を抜きにしたって可愛いと思う。

「トラファルガー」
「………」
「なーに拗ねてんだよ」
「…うるせぇ」

笑うと剥れ面が俺の肩に寄り掛かる。
トラファルガーが不機嫌そうにしているのにはすぐに気がついた。理由は知らねェけど。
だけどそれでも離れずにピタリと俺に寄り添うこいつは可愛いし、無意識のうちに絡められた手には頬が緩む。
バカスタス、と何がそんなに気に入らないのか、尖らせた唇を指でつつくと触るなと言いたげにはね除けられる。ただその手付きに乱暴さはなく、気分屋な猫がむずかるようなものだった。

「教えてくれよ。何かしたか俺?」
「別に…なにも」

頬を撫でるとトラファルガーはちらりとこちらに視線を向ける。どこか複雑そうな表情をしていて、首を傾げれば、俺が勝手に拗ねてるだけだから、と珍しく肯定的な返事をした。
気にするな、と言うように視線をそらされたが無理な話。トラファルガーによって絡められた手をぎゅっと握ると顳にキスを落とした。

「気になるから教えろ」
「命令すんな」
「命令じゃねェよ、お願いだ」

な?と耳元で囁くとトラファルガーは擽ったそうに肩を竦めた。

「調子乗りそうだしやだ」
「へー…調子に乗りそうなことね。じゃあ嫉妬でもしてくれたのか」
「違う、し!」
「…お前さ、嘘吐くとき目泳がすんだよな。知ってた?」
「っ!なっ、」
「まあ嘘だけど」
「ユースタス屋!」

パクパクと口を開閉して言葉を求めていたトラファルガーに、にやっと笑いながらそう言うと頭を叩かれた。
だけどもう遅いし、今の分かりやすすぎる態度で図星だってことは目に見えている。

トラファルガーの嫉妬の原因とか超知りたい。素直じゃないこの恋人はよく自分の気持ちを圧し殺してしまうので、こういったことは稀だった。
自分でもそれを知っているからこそ、余計に嫌なんだろ。そらされた視線を追いかけて、トラファルガーの赤く色付いた頬をじっと見つめると堪えきれなくなったのか、気まずそうに口を開いた。

「…今日さ、……あ、やっぱ嫌だ、自分気持ち悪い」
「は?何だよ言えよ」
「……」
「駅着くまでに言わなかったら家帰ってから…」
「っ、ぁ…、っ!バカやめ、言うからっ」

いじらしいトラファルガーを見るのは珍しいから楽しいが、そろそろ理由を知りたい。
耳元で息を吹き込むように囁くと、そのままちゅっと口付ける。ここが弱いトラファルガーが落ちるのは簡単だ。その代わり睨み付けられたけど、こういうときのこいつの睨みほど効果のないものはない。

「今日…告白されてただろ」
「あー…でも断ったし」
「当たり前だ」

そう言うとトラファルガーは不服そうな顔をしてこちらを見た。それに言いたいことがいまいちよく分からず、その横顔を見つめる。
告白なんてこいつもされてる。お互いそのことに関しては分かりきってるし、後腐れないようにちゃんと断ってもいる。だから今更?という思いも強くて、何かそれについてもっと別の原因があったのか考えるが思いつかない。
そんな俺の様子を知ってか知らずか、トラファルガーは呟いた。

「見ちまったから…」
「見た?」
「ん…人から聞いたりするのはどうでもいいんだ。ってか平気。…だけど実際見ると嫌になる。だからちょっとやだなって思っただけ」

どうやらトラファルガーは俺が告白されている場面に偶然出会わせてしまったらしい。
そう言ったあとにトラファルガーは、このことは忘れろ、と言った。自分が慣れないことをしているという自覚があるようだ。
でもそれだってやっぱり無理な話。俺は今この隣に座る可愛い恋人をどうしてくれようかと思案している。

「…トラファルガー」
「なに…ユース、っ、」

そのあとの言葉は、唇の中に。驚いたように目を見開いたトラファルガーの唇に、啄むようにキスを落とす。優しく頬を撫でればびくりとトラファルガーの体が強張り、慌てたように胸元を押し返される。
それに従って一度唇を離すと、キッと睨み付けられた。

「バカッ、ここ電車…!」
「こんなガラガラじゃ誰も見てねェよ。てかお前が可愛すぎんのが悪い」

だからキスさせて。
唇が触れそうな距離でそう呟くと、トラファルガーは赤い顔をさらに赤くさせて俯いてしまった。その様子にくすりと笑うと無言の肯定と受け取り、顎を持ち上げて唇にキスを落とす。
少し肩を揺らすも抵抗らしい抵抗は見当たらない。柔らかい唇を堪能するように舐めて食むと、隙間からするりと舌を入れた。さすがにそこまでされるとは思っていなかったらしく、咎めるように舌を噛まれたがやめる気はない。

耳や首筋を指先で撫で上げながら舌を絡ませるとトラファルガーの体が小さく震える。何とか声を出さないようにしている姿がまた可愛くて、つい意地悪をしてやりたくなったがそれ以上すると抑えが利かなくなりそうだからやめた。その代わり舌を少し強めに吸ってからゆっくりと唇を離した。

「っ、舌入れんな、アホ」
「気持ちよくて我慢出来なくなったか?」
「違う!」

誰かに見られたらどうすんだ!とトラファルガーは唇を無造作に拭うと睨む。
だがさっきも言った通り、奥の方にじいさんばあさんがぽつりぽつりいるだけだ。しかもボックス席だからこっちの様子は見えないだろうし。
だけど顔を真っ赤に染めた恋人は今度は違う意味で拗ねてしまったらしい。忙しいなと思いつつ、先程から握られた手はそのままな上に少しでも離そうとすればぎゅっと強く握られるもんだから、その態度の違いに思わず頬が緩んだ。だらしねぇ顔してんな、と言われるレベルかもしれないが仕方ない。

「な、帰ったら続きしようぜ」
「…考えてやる」

素っ気ない答えのわりには甘えるように、こてんと肩に乗せられた頬が仄かに赤く染まる。その顔に早く着いてほしいような、このまま揺られていたいような気分になる。
携帯のディスプレイに表示される時刻が到着を示すまであと三分。家に着いたら存分に可愛がってやろうとその手をぎゅっと握った。




ご機嫌斜めなプリンセス
(機嫌を直せるのは王子様だけ)







いつも仲良くしてくださるtocoちゃんにお誕生日プレゼントとして捧げます!ものすごく遅くなっちゃってごめんよ…!しかもデレデレなローたんにするつもりが…いつものツンデレ風味に…´`
ラブラブは意識したつもり!だけど…どうでしょう(笑)
このあとはキッドの家に行って二人で仲良くラブラブちゅっちゅっコースです!w
こんなのでよければ是非!(´▽`)
改めてお誕生日おめでとう!これからも仲良くしてやってね(*^^*)





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