飼い主×猫
うちの猫は猫らしいというか、気まぐれで自分勝手でまさに猫の代名詞そのもの。撫でてやると触るなと言いたげに顔を背けるくせに、構うのをやめるとのそのそと近寄ってきては俺の邪魔をする。餌やおやつがほしいときだけは妙に媚びて、食べ終わったらもう用無しらしい。俺がテレビを見てるとテレビの前に座って邪魔してくるような奴が、大人しくしているときは大抵がロクでもない。何かしら悪戯しているだろう姿に後ろからそっと近寄って叱るとびくりと震えて拗ねたような顔をする。それでも耳はぺたりと下がっていて、しゅんとした様子にもぐっと堪えて叱ったあとは後片付けだ。仕事が増えるなんて思いながらやっていると不意に擦り寄ってきたりする。にゃあ、なんて甘えたような声を出してなかったことにしようとするんだ。もちろん腹が立つ。何せ可愛いもんだからすぐに許したくなる。でもそうするとつけあがるし、しかもこいつは自分が可愛いっつうのを分かってやってると思うから、それで素直に許すのは気が引ける。だけど上目使いで見つめられたら、もう負け。
「ユースタス屋ぁ」
いつもは撫でるとうざったそうな顔をするくせに、こいつは自分の都合で俺の手をいいように使う。喉元を擽られて満足そうに目を細める。ゴロゴロと鳴き声が聞こえそうだ。
「…もうおしまい」
「えー!なんで!もっと!」
もっともふもふしろと言いたげに尻尾をぺしぺしぶつけてくるローにうんざりする。お前どんだけ撫で回してると思ってんだ。もう俺は腹減ったんだよ。
「また後でな」
「あとっていつ」
「後はあと」
不満げに耳を揺らすローの頭を宥めるように撫でる。何だってこいつはこうタイミング悪く甘えてくるんだろう。そもそも普段からこうなら少しは可愛げもあるってもの。
まあでも、たまにだから余計によく思えるのかもな、なんて苦笑しながら立ち上がろうとしたのだが。
「……いや、退けよ」
「あとで」
「お前なぁ…」
俺の脚を陣取ったローはぐりぐりと頭を胸元に擦り付けるだけで一向に動こうとはしない。引き離そうとすれば、みぎゃあとブサイクな声を出してきた。仕方がないので尻尾を掴む。そう、最終手段だ。
「ふぁ!ユースタス屋っ」
「何だよ、撫でてほしいんだろ?」
「やっ、そこ違っ…ん、みゃ、ぁ…っ」
いわゆる性感帯である尻尾を撫で擦る。根元を柔く握って上下に擦り、先端を優しく擦ってやればびくびくとローの腰が震える。甘ったるい声を出すのを尻目に耳を甘噛みしてやればぴくりと揺れた。
「ひっ、にゃ…ユ、タス屋ぁ…」
ふるふると首を振るくせに見つめてくる瞳はとろりと蕩けている。抵抗など所詮は口先。性器を擦るのと同じ手つきで優しく尻尾を弄ってやれば、あっあっと声を上げながらローは背を反らした。
「んっ、く、ぁあ…ふっ…」
「はい、おしまい」
「っ、ぇ…?」
「せっかく撫でてやったのに、嫌なんだろ?」
だからもうおしまい、と途中で手を離してやれば、自分の置かれている状況に気づいたローがくしゃりと顔を歪ませる。あんまりにも気持ち良さそうな顔をするから意地悪したくなったんだ。ほら、もう退け、と何でもないような顔をしながら、でも内心にやにやしながら告げれば、ローの目尻にじわりと涙が溜まる。ぎゅっと服を強く握られて、その様子がひどく可愛い。
「やだっ…ユースタス屋…」
「触れって言ったり触るなって言ったり…我が儘だな、ローは」
「だっ、それはっ…!」
「じゃあ、どうしてほしい?」
わざとらしく溜め息を吐けば、涙目ですがり付くロー。その様子にばれないよう笑いながら、するりと尻尾を撫でると耳元で囁く。ロー?と囁けば上目遣いで見つめる瞳。きゅっと柔く握ってやれば、びくりと腰を揺らして甘い息を吐いた。
「尻尾…もっと触っ、て…」
羞恥に頬を染め、それでも快楽に抗いきれずに強請る姿と言ったら。いつもこのくらい素直なら可愛いんだがな。
***
もう続ける気はない。