絵空事 | ナノ

(親子パロ)


公園に遊びに来ました。


「キッド!ねーみて、これ!」
「ん…?ああ、四つ葉のクローバーか。よく見つけたな」
「これっていいやつなんでしょ?」
「持ってると幸せになれるみたいだぞ」
「じゃあキッドちょっともってて!」
「なんだ、いらないのか?」
「いるよっ!ちょっともってるだけ!」
「あっ、おい……つかまだ遊ぶ気かよ」





「おーい、ロー。そろそろ帰るぞー」
「んー…もうちょっと…」
「お前どんだけ遊ぶつもりだよ。もうすぐで暗くなるぞ?メシも作んなきゃだし…」
「もうちょっとなの!」
「また遊びに来ればいいだろ。服もすげェ汚れてるし…ほら、帰るぞ」
「だめっ、まだかえんない!まだいるのっ」
「我儘言うな、おいてくぞ?」
「やだ、まだいる!キッドやだっ、おいてっちゃや!」
「なら早く来い、ほら。…ロー、早くしろ」
「…っやだ」
「ハァ…何がしてェんだよお前は…」
「だっ、て…だって、くろーばーが…」
「あ?お前のならここにあるだろ」
「ちがうの、それローのだもん!キッドのもなきゃだめなの!」
「俺は別に…」
「それあるといいことあるんでしょ?でもキッドのみつからないのっ…ロー、さがしてるのに…!だからみつけるまでかえらない!」
「……」
「キッドのも…みつけるのっ…」
「…ったく。……あと一時間だけだからな」
「っ、ローぜったいみつけるからね!みつけてキッドのことしあわせにする!だからここでまっててねっ」
「…はいはい」




***



テーブルに置いてある本にちらりと目を向ける。カバーがかかっているようで表紙は窺えないが、見た目的には普通の文庫本。本の持ち主はちょうどトイレに行ったばかりでいない。
実に気になる。あのキッドが本を読んでいるのだ。今まで読んでいるところなんて一度だって見かけたことがないのに。一体どんな本なのだろう。キッドに直接聞けばいいのだが、何となく聞くタイミングを逃してしまって今も知らないまま。気になる。持ち主はいないし見るのなら今だろう。そう思って手が伸びた。


触ってみると文庫本はまだ張りがあって真新しかった。いつ買ったんだろう、なんて思いながらパラパラページを捲る。一見してみると普通の小説だ。本屋に今月のおすすめと銘打って平積みされてるような普通の本。やっぱりそんなもんかと勝手に期待した分少し期待外れだ。さして面白くもなさそうだし、と本をテーブルの上に戻そうとしてふと栞に目をやった。
本屋から貰ってきた栞なら何てことない。だけどその栞には赤いリボンがついていた。栞の上の方に開いた穴からきゅっと結ばれた赤いリボン。見覚えがあった。記憶違いでなければ…と思いながらそっと抜いていく。現れ出たラミカードのような栞とそのなかで主張するひしゃげた四つ葉にまさかと思い、頬が熱くなった。


「何してんだ?」
「っ、ぁ、なんでもない!」
「ふーん?」


いきなり後ろから話しかけられ、慌てて本をテーブルの上に置いた。ばれたかと思ったがキッドは別段何も気にしていないようだった。
ほっと息を吐くと熱くなった頬を冷ますように手で軽く扇ぐ。キッドはそんな俺を尻目に再び本を読み始めた。


てっきり捨てたものだとばかり思っていたのに、まさかまだ取っておいてあるなんて思いもしなかった。ああもう、顔が熱い。


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