絵空事 | ナノ

(親子パロ)


「キッド、はいこれ!」
「あ?…何だこれ」
「ローがかいたの!じょーずでしょ?」
「いや、何だよこれ」
「キッドだよ!わかんないの?」
「(分かんねェよ…。) そっか、上手に描けたな」
「へへー」
「ん。ほら、」
「いらないよ?」
「お前が描いたんだろ?」
「だってキッドにあげたんだもん」
「(…いらな。)」
「きょうねー、ペンギンが『ちちのひ』っておしえてくれた!」
「あ?あー、そーいや…」
「『ちちのひ』ってぱぱにありがとーっていうひなんでしょ?だからロー、キッドかいたよ!」
「…ふぅん、ありがとな」なでなで
「もっと!」
「お前の意味の分からん純粋さと甘ったれぶりってホント誰に似たんだろーな」なでなで
「う?」
「何でもねェよ。今日はオムライスにしてやろう」
「やった!ローってかいて!」
「…しょうがねェな」





「げ。お前この絵まだ持ってんの」
「五歳のお前作。マジ下手くそだよな。最初貰ったとき何描いてあんのか分かんなかったし」
「ガキの絵なんてそんなもんだろっ…つうかなんで捨てなかったんだよ」
「ごみ袋ん中に絵が捨ててあんの、万が一お前が発見したらさすがにあれかなって。ならシュレッダーにかけようかとも思ったけど、ほら、父の日に自分の息子から貰った絵をシュレッダーにかけるのもどうかなと」
「…サイテー」
「おいおい、お前十六年間目ェ閉じて生きてたのか。間違っても額縁に飾るような親じゃねェって分かってんだろ」
「………」
「拗ねるな、面倒臭い」
「………」
「はいはい、俺が悪かったね、ごめんねロー」
「……そう言えば何でも許されると思ってる」
「否定はしない」
「もうやだお前キライ…」
「あんま拗ねてばっかいると俺も嫌いになるぞ」
「……やだ」
「………」
「………」
「ほら、こいロー。悪かった、ぎゅっとしてやろう」
「命令すんな…」ぐすぐず
「来るんじゃねェか」
「うるさいっ」
「(素直じゃないとこは、ホントあいつそっくりだな…。)」
「………」ぐずぐず
「………」
「………」ぐすっ、ぎゅっ
「…お前ホント俺好きだなぁ」
「自惚れてんじゃねぇよ三十超えが」
「引き剥がすぞ」
「………」ぎゅうう
「……あー」
「…なに」ぐすん
「んや…俺も人の子かな、と」
「は?」
「(…可愛いとか俺も思うんだな。)」
「……ジロジロ見てんじゃねーハゲ、目潰すぞ」
「お前そこだけ俺似かよ。最悪だな」




口の悪さは残念なことにパパ譲り。
ちょっと成長してキッド(32)、ロー(16)でした。五歳のときの甘えぶりはこうして端々に表れるのです。
パパはそれなりに育児に耐性と経験がついてきた模様。ぎゅっとするのはそうするとローたんの機嫌の直りが早いからというだけであってキドロにはほど遠いです。ローたんは未だにパパが好きです。その代わりだんだんと好きが暴力的になってきました。(素直になれない的な意味で)


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