絵空事 | ナノ

「ユースタス屋、知ってたか?」
「あ?」
「今日ポッキーの日らしいぞ」
「ふーん」
「だからポッキーゲームしよう」


この季節ともなると寒さもだんだん本格的になってきて、昼休み中だからといって屋上には誰もいなくなる。そろそろここでサボるのも限界かな、と思いながら暇潰しに携帯を弄っていたときだ。がさごそと鞄を漁りながら不意に口にされたトラファルガーの言葉に思わず弄る手が止まった。


「…お前ポッキーゲームが何か知ってんの?」
「は?当たり前だろ!ポッキーくわえてどっちが多く食べれるかってやつだろ?」
「まあ…そうだけど」


トラファルガーは見た目に似合わずなかなか天然なところがあるから、また勝手に何か変な勘違いでもしてるんじゃないかと一応確認。だが怪訝そうに頬を膨らませて言ったこいつの説明はポッキーゲームそのものだった。どうやら理解はしているらしい。だけどやはり、というか、ポッキーゲームが純粋にゲームそのものを楽しむものだと思っているらしく、何だか腑に落ちない。本当、いいのは頭だけなんだよなぁ。


「じゃあしよー。ちょうどシャチから貰ったから」
「まっ、本気ですんのか?」
「しないの?」


パッケージを開けてポッキーを取り出すトラファルガーにさすがに焦る。本気でするのかと念を押せば、くわえたまま首を傾げられて。身長差から必然的に上目遣いになるそれに強請るような視線をプラスされてしまえばもうどうだってよくなってしまった。


何も言わずにもう片方をくわえるとそれを開始の合図だと思ったらしいトラファルガーが嬉々としたように食べ始める。それにつられて俺も食い始めていけば、どんどんと間は狭くなっていって。


「…っ!!」


ずっと目線をポッキーに合わせていたトラファルガーが不意に視線を上げる。その瞬間一気に赤く色付いた頬に少し気分がよくなった。今更になって自分の置かれている状況下が分かったらしい。いますぐにでも触れ合ってしまいそうな距離に、慌てて離れようとしたのでその後頭部を掴むと逆にぐいっと引き寄せた。
そのまま唇を合わせて舌でなぞると割り開く。口の中でチョコレートの甘ったるい味を感じながら、舌から歯列から上顎から全てを味わってトラファルガーがぐずぐずになるまでキスをした。


「ぁ…っ、は…」
「俺の勝ちだな」


ちゅ、と唇を離すと俺に寄りかかるようにして息を整えるトラファルガーの唾液で光る唇を拭う。もっかいするか?とにやりと笑って聞けばトラファルガーはキッとこちらを睨み付けて。
望むところだ!今度は俺が勝つんだからな!とどこか検討違いなことを言ったトラファルガーにくらりと目眩のようなものを感じた。




「お前絶対、俺以外とこういうことすんなよ」
「こういうことって?」
「……だからポッキーゲームとか」
「でもちゅーしなかったら大丈夫だろ?」
「大丈夫じゃねェから駄目。俺だけ、分かった?」
「むー…」
「返事は?」
「…はぁい」




無自覚天然なローたんかわゆすかわゆす。守ってあげたいオーラ全開なのできっと高三キッド×高一ローあたりでしょうか。


prev / top / next


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -