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逸る熱を込めた

「名前、大丈夫か?」


 我愛羅の声で私は意識を覚ます。頭を叩くような慢性的な痛みに顔をしかめた。
 我愛羅が地面を踏みしめて歩くたびに私が揺れる、彼のうなじ辺りに額を寄せると我愛羅の匂いがする。


 朦朧とする意識の中で夢の中にいるのだろうか頭痛さえなければ火照った身体に夜風が心地よかった。
 我愛羅の大きくて広い背中も、存在も。好きだな。


「名前、オレ、は……」と突然、狼狽えだして身動ぐ振動でやっと私は我愛羅の背中におぶさってもらってるんだと理解する。


「あれ、私、どうして……我愛羅の背中に?」

「……疲れがたまっていたんだろう、突然倒れたんだ。熱でうなされていた」


 呆れと落胆めいた声色に迷惑をかけたしまったのだと気づいて途端に寂しくなる。


「そうだったんだ……ねえ、我愛羅……おろして」


 このまま、彼の世話になるのは申し訳なく感じた。いつもたすけられているのに……、少しでも我愛羅の負担を軽くしたかった。

 我愛羅は私を下ろすことに躊躇ったけど、背中からおりた。

 私は頑張ってまっすぐ立っているつもりだ。だるくて重たい体を我愛羅に支えてもらって、必死に歩を進めても体が思ってないところへ傾く。

 仰向けに倒れ込んで視界に視えた月が淡く光を放っている。照らされる砂隠れの里は幻想的で静かで、昼間とは違う姿をしている。まるで私たちを包んでるみたいだった。







 突然、異物感を喉元に覚え咳き込んで一瞬で目が冴える。
目の前には我愛羅がいて状況がわからなくて思考が止まる。私の部屋だ、ベッドの上で、あと体中が熱くて頭も痛い。


「解熱剤を飲ませておいた」


「ありが……」と言いかけてが熱で思考が苛まれてもはっきりと自覚する。薬を飲んだ記憶がないうえに口もとがひんやりとしていて湿っているのだ。

 どうやって飲ませ……まさか。


「我愛羅、解熱剤って……」

「もう一錠欲しいのか? 過剰摂取にはならないと思うがもう控えておいたほうがいい」

「私に……ど、どうやって飲ませたの」


 どこか含みがあるような気持ちがこもった声で「……してほしいのか?」と軽く顎をあげられ、そっと唇が親指でなぞられる。もしかして本当に口移し、を?


「どうして、そんな……」

「その理由を聞きたかったら早く治すことだ、オレの気持ちを伝えたいからな」

「……ん、えぇっ……?」


 後日、熱にうなされてる最中、胸の奥に秘めてた気持ちを告白していたことを我愛羅から教えられたのだった。


2021.08.15


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