近くにいるような存在感
なぜだか急に風影様の存在を近くに感じてはっとして周囲の気配を探った。
隣にいる同僚は「名前、何かあった?」と心配した様子だ。周りを見渡しても特に変わりない砂隠れの街道で、風影様の姿は見当たらない。
考えれば、普通のことだ。ついさっき風影様の元へ任務の報告を完了したばかりでこんなところに彼がいるはずないのに──。
「なんか、寒気がして……」
どうして、風影様が傍にいるような錯覚をしたんだろう。
どうして私は風影様の気配を感じて、背筋に悪寒が走ったのだろう。
原因はわからないだけで、粟立つ肌を鎮めるように撫で続けた。
2023.05.29.