「もうほんと、どうしようもないんだ」


久々に会うなりその男はくしゃりと泣きそうな顔をして、私を抱きしめた。


「ディーノ、ちょっと、」


ディーノはぎゅうっと私の背中を抱いて、低いような高いような、そして泣いている様に震えたうめき声をひとつふたつ零したきり、私のワンピースの背中で腰まで続く長いファスナーを一気に下げた。


「ディーノ、どうしたの?ねえ、」


肩からするりと落ちたワンピースに、一気に露になった素肌が震える。下着越しに私の胸を包んだディーノが情けなく細めた目を伏せて私の唇にキスをして、それだけでなんだかもうどうしようもなくなったのは、今度は私の方だった。


「、ベッドいこう、ね?」


玄関でこんな風に絡まって解けなくなるなんて、あとで絶対に後悔するに決まってる。
冷静な頭がはじき出した答えにディーノはそれでも無言のままで、もう何度も一緒に過ごしたことのあるベッドルームへと体を滑り込ませる。
そのきらきらの頭が垂れたまま、依然として泣きそうな雰囲気を纏って今にも崩れてしまいそうな背中に思わず手を伸ばす。


「何か飲、」


気を利かせたつもりだったけれど、ディーノは私の手首を掴んで引き寄せて、そして今朝整えたばかりのベッドに私の体を縫い付ける。
今朝、随分と早い時間に「これからいく」と電話があったとき、確かに普段とは様子が違った。
けれどまさかこんな。

下着を取り払って、横に流れる乳房に頬を寄せて唇でなぞるその光景は確かに情事のそれではあるのだけど。
少しの違和感を感じてディーノの頭を抱えてわかったのは、ディーノがその耳をピタリと私の胸元につけていることだった。


「…だいじょうぶよ、いきてるよ」


間違っている気はしなかった。きっと向こうで何かあったんだろう。その証拠にディーノは決壊しそうに歪んだ顔をあげて、やっと私の名前を呼んだのだ。


「…NAME、NAME、」

「うん、ここにいるよ。大丈夫だよ」

「NAME、」


まるで幼い迷い子が母親を探すような、やっと見つけた母親に抱きついて泣き出してしまうような。
胸をつく切なさと物悲しさがぐるりと私の胸のなかを漂う。


「…っ、ディ、ノ」


腕で抱えたディーノの頭に、ディーノが胸の中心でつんと色づき始めたそれを口に含む。
いつだって余裕のある、フェミニストが板についた行為をしていた彼の、初めてこんなところを見る。


「ごめん、ごめん、NAME、」

「あ、っ!」


慣らされていないにも関わらず足の付け根からするすると上がってきた指先が、まだ十分に濡れていないそこへと突き立てられる。
微かな痛みと異物感に眉をしかめてディーノの肩を掴む手に力をこめたけれど、ディーノはひたすら悲しい顔をしたまま、私の首筋に顔を埋めた。


「NAME、あいしてる」


指先から、甘く痺れていく気がした。


「ん、う…っあ」


長い指が私の体の中で蠢いて、私のそこも段々とろとろに柔らかくなって、随分前に今私を抱くこの人から与えられた快楽をもう一度味わおうとしている。
胎内を擦り、撫で、指が出し入れされていくたびに体を襲う圧迫感・充足感と喪失感。


「NAME、…NAMEは、俺が」


何を言おうとしたのか。その続きを促す前に、ディーノは自分のワークパンツの前を寛げて、そして私の記憶とは違う、まだ十分に準備のできていないそれを私の茂みへと宛がう。
もうとにかく一人ではいられないのだと、震える彼の背中に腕を回して、小さな子を寝かしつけるように優しく、テンポをとりながら叩いた。


「ふ…う、っあ、あ」


やわらかく、けれど私の胎内を進むごとにゆっくりと形を変えていくディーノのそれ。
全部がぎちっとなかに飲み込まれたとき、ディーノはやっと、ほたりと私の首筋に涙を落とした。


「NAME、もう俺はNAMEがそばにいないと、だめだ」


身じろぎもせず、流れていく涙を拭いもせず。
私も何があったのかは聞かないことに決めた。何があったとしても、こうしてそれを補うために私を抱くという選択肢を選んだ彼の弱さなんて、それが私の隣にあるだけでいい。


「うん、大丈夫。ここにいるよ」


近づいてきた、伏せられた瞳からとめどなく流れていく涙。そこに指を伸ばして頬を包めば、ディーノがもう何回目かわからない私の名前を呼んだ。


「愛してる。…NAMEは、愛してるか?」

「うん。ディーノが一番、すき。あいしてる」


やっと小さく笑ったその表情に今度は私が泣きそうになってしまったのは、もうすこしだけ内緒にさせてね。
あなたが落ち着いて、ぐっすり眠って、そして目が覚めるまで。



It's a small world


*
チコさま
雲雀のえろを書ける気がしませんでした。すいません。
そして…なんだかくらぁいえろになってしまいました。ごめんなさい。
私的にディーノはどんなときでも優しいセックスをしそうです。
体に対して、でなくて相手の心に対して、でしょうか。
まあ何をディーノの性癖について語ってんだという話しですが。
リクエストありがとうございました。



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