暗い暗い夜道。街灯の一本も見当たらないその道をとろとろと歩く。夏の夜風が首筋の髪を浚うのと、そして白の着物の裾を捲る。内から零れる深紅の襦袢も、この暗さでは見えまい。
「…今晩は、浦原さま」
「ああ、待ちくたびれましたよ」
「もう皆様お休みに?」
「そうっスねえ、寝てるんじゃないですかねえ」
「ではこちら、皆様のお召し物です。確かにお届け致しました」
月に一度、大量の呉服に洋服を揃えて私はここ場所へ足を運ぶ。商売にもならないような金子を預かり、購入するなり繕うなりと時間を使い、それらを店の主に手渡す。そうして今晩も終わる。毎度それきりで帰宅できることなどないけれど。
案の定、浦原さまは私の伏せた瞼の上、額に杖の先端を当て、低く喉を鳴らした。
「浦原さま、私用がありますので今晩はもう帰らなければ」
「つれないこと、言うもんじゃないっスよ」
人一人、猫一匹も見えないその場所。暗いばかりの夜空では星がよく瞬く。ふ、と空を見上げたならばその瞬間、浦原さまの指先が私の着物の帯を掴み目一杯に引っ張った。
「浦原さま、」
「残念、綺麗に解けりゃよかったんですがねえ」
「莫迦なことを」
「ああ、でもイイ格好になりましたねぇ」
それでも緩んで解けかかった帯、浦原さまがそれを放って私の着物の袷へとくちびるを寄せる。引き寄せられた背中が熱い。唇が着物から襦袢へと、指先が袷を広げて、とうとう浦原さまの唇が襦袢越しに、私の乳房の頂を捕らえた。
「、ん」
「アタシも、外っていうのは初めてだけど…どんな気分でしょう?」
「うらはら、さ、あっ」
その頂がぷくりと膨らむのが、浦原さまの唾液で濡れた布越しにわかる。浦原さまはそれを上下の歯で挟み込み、先の窪みを抉るように舌先をねじ込んだ。
「あんたの濡れた瞳を見てると、同じ世界のモノになっちまいたいと思うよ」
「も、やめ」
胸元から離れた唇が、屈んだ体から掬い上げるように私の唇を塞ぐ。ついさっきまで刺激を与えられていた濡れた胸が生ぬるい風に撫でられて、ひやりと背筋を冷たくした。
「そんな顔しないで下さいよ
「させているのは浦原さまではないですか」
「違いないが…赤の襦袢が妙にソソるんスよ」
さも愉快そうに破顔した浦原さまが私から手を離し、アスファルトに転げた風呂敷包みの荷物を軽々と片手で持ち上げる。私はじくじくと痛む体の奥を叱咤して、月の下で着物を整え帯を結い直した。濡れた襦袢がこすれる度に足の奥が濡れるように思うけど、ちらりと浦原さまを見やってしまってはもうそれ以上何か言うこともできず。
「…帰ります」
「次は用事をいれないように…大切に熟れさせて、食わせていただきまショ」
夜だと言うのに目深に被った帽子のつばに指を添え、軽く挨拶をする姿。その腕に抱かれるぬくもりも力強い胸も頬をなでる指先も射抜くような鋭い視線も胎内を穿つ熱い塊も、すべて知ってしまったあとの私のからだ。
あとはもう、あなたの
「お気に召すまま」
*
みーなさま
仕事中に、微裏ってどこまでいいんだろう、と本気で考えてました。
結果いろいろ我慢しながら野外+胸だけに。アウトでしょうか、足りなかったら…あなたも好きやねえ。
リクエストありがとうございました。