「ゆーまっちっ」
後ろから飛び付いて抱き締める。首筋に鼻を押し付けてふんふんしたらシャンプーの匂い!さわやか!
「NAMEさん…っ」
二次元を愛する余りに三次元には免疫がないのだろうか。
んにゃ、そんなことはないだろう。
「ゆまっちリュックが邪魔だよ」
もそもそと手を伸ばしてゆまっちの着るパーカーのファスナーをゆっくり下ろす。
とうとう私の手首を掴んだゆまっちに、狩沢ちゃんが苦虫を噛み潰したような顔をした。
「…狩沢ちゃん、今のどう思うよ」
「ないよねー。こんなイベントが三次元で起きるなんて滅多にないよ!奇跡だよ!二次元から三次元への逆輸入だよ!」
新宿、天下の往来。たぶん門田くんがいたら私なんかヒョイってされてポイってされちゃうだろう。
でもここにはゆまっちと狩沢ちゃんしかいない!
「ゆまっち、手をお離し」
「だ、だめっすよ!だって離したら」
「自費出版のしょ・う・せ・つ」
ふっとゆまっちの耳に息を吹き掛ける。ビクンって震えた肩は私の発言のせいか耳が弱いからか。
………耳が弱い方にしておこう。
「やあだ。ゆまっちってば耳が好きなの?」
ぱくんと耳たぶに噛みついて舌先でその冷たさを突っつく。
ああもうゆまっちってば赤くなっちゃってかわいいんだから!
「じ、自費出版の、って…」
「ツテのツテをツテして手にいれたの」
「まさかそんな…!あんまりっす……!」
「うふふ」
かわいいかわいいゆまっちと理解のある狩沢ちゃん。素敵。
「手を離してくれないと、あーんなこととかこーんなことができないよ?」
「あんなことこんなこと…」
捕まれた右手首をそのままに左手を背後からゆまっちの股間に這わせる。
もう、ちゃんと男の子なんだから!
「NAMEちゃんってば羞恥プレイが好きなんだからあ」
ニヤニヤ、くふくふと笑いながら私たちを見守る狩沢ちゃん。
こっちに向けてる携帯は何かな?ムービー?フォト?
「撮影したやつちょうだいね!」
「了承」
「秋子さん!」
「やっぱりKanonも名作だよね」
「ねー」
もぞもぞ。ゆまっちの顔はさっきより赤い。耳たぶをぺろっと舐めて口を離したら、ふうと一息。指でなぞればなぞるだけ素敵に反応。男体の不思議!
「あ、あの、NAMEっさん…!」
あああああもうかわいい!かわいい!まるでお預けくらった子犬みたい!
「…あ」
目前では街頭ビジョンが午後4時を告げる。
たまたまゆまっちを見つけたから抱きついちゃったけど、私は忙しいのだ。
「…NAMEさん?」
「あたし仕事に戻らなきゃ」
「あははは!NAMEちゃん生殺し!」
時間は待っててくれないのよ。ごめんねダーリンまた今度!
「ゆまっち安心して!あたしがホテル代稼いでくるから!」
真っ赤なゆまっち。大爆笑する狩沢ちゃん。素敵。
でもねゆまっち、さすがに勃ったままボーッとしてるのはよろしくないわ。
「さて、仕事仕事」
あーあ。時計なんかない所で、ゆまっちともーっと触れ合っていられたらいいのに。
欲情ダンス