『__あ』


昨日、リムルさんと話をしている途中で寝てしまっていたらしい。
起きたら人型を取るリムルさんの膝の上で寝ていた。
朝一番に「おはよう」ととてもいい笑顔を貰ってしまった。曰く足のしびれ等は何もないらしい。
さすがと言っていいのか微妙だけれどさすがスライムなのかもしれない。
この皮膚の下どうなってるんだろう、なんてさわったらちょっと軽めに頭叩かれた。

ガルムさんの特急コースでしあげてもらったお洋服を着たリムルさんと外に出た時に、ふいにずっと繋がれていた手が離されて
思わず、出てしまった声にリムルさんがきょとんと振り返ったのだ。

「__もしかしてだけど、手繋いでたかった?」
『……んー。』


シズさんとは違う。シズさんよりも少し小さい手。
けど、なんとなく離れているよりは繋いでいて欲しい気がした。
から小さく頷いたら目の前のリムルさんがドサっとその場に崩れ落ちてしまった。


『リムルさん…!!?』
「ないはずの心臓が止まった気がした……」
『……えっと』
「いや、なんでもない」



リムルさんは今日1日人型で過ごしてくれるらしい。
ほら、と差し出してくれた手をそっと取って握る。
思わず口角が上がってしまう気がする。これはとても心地いい。

「なんかネージュの破壊力が上がってる気がするなあ…」

ぽそりと呟かれたリムルさんの言葉を聞き逃した。
繋いだ手を引かれながら町を巡回する。

私たちがシズさんの看病をしていた間も町の建設は着々と進んでいたらしい。
上下水管道の設置?を優先させているから家はまだ仮設テントだけれどカイジンやドワーフ三兄弟の工房などすでに建っているものもちらほら。
どうやらリムルさんはあちらの世界で建設系の会社に勤めていたらしくこういうことには知識が強いらしい。すごい。


「リムル様!姫様もご一緒でしたか!」


リグルドだ。
最近リムルさんが彼をゴブリンロードなるものに格上げしたらしく、初対面の頃を思うともうもはや誰?という感じだ。
筋骨隆々というやつ。


「お二人でお出かけですかな?」
「ああ、俺はちょっとこの後封印の洞窟までな」


スキルの確認にひとのいない場所に行きたい、らしいので私は絶対について行っちゃいけないという。
リムルさんの所有するスキルは私にも継がれる。あとで教えてくれるといいけど、使う機会は無いに限るんだけど。
私はというとこのあとはリムルさんと別れてランガと森をお散歩をするつもりだ。


「そうだゴブリン・ロードたちは役に立っているか?」
「もちろんですとも!」


ドワーフ国から戻って来てから住人が五百人ほど増えた結果、リグルド一人じゃまとめられないとなり、
リグルドの下にゴブリンロード4人を指名したのだ。リムルさんが。
ルグルド、レグルド、ログルド。この3名が司法、立法、行政を司る長官に。
そしてもう1人。紅一点のリリナが生産物の管理大臣。
リムルさん国を治める能力、ただのサラリーマンにしてはありすぎじゃないかな。と思うの。
私はまったくのノータッチである。


「ところでリムル様は今日もお食事は必要ないのでありますか?」
「ああどうせスライムの身体じゃ味がしな…」


私は食事を必要としないけれど味は感じる。趣向品としてたまにいただいていたけれどリムルさんは味覚がなかった。


「待て
今日から俺も一緒に飯を食うことにする」
「なんと!では今夜は宴会ですな。ご馳走を用意するようリリナに申しつけておきましょう」


にしてもこの子たち宴会すきだね。と
思った。

食事をできると気づいたリムルさんは大興奮だった。
ランガの背に一緒に乗り森を駆け回っていた。後ろに座るリムルさんの顔を振り返ってみてみるとそれはもうワクワクキラキラしていた。

「白米もそのうち欲しいよな〜!!」
『人間のいる国に行った時に探してみよ』
「そうだな!」

じゅる、と音が聞こえてしまった。


「リグル!」
「リムル様!姫様!」
「周辺警備兼食料調達ご苦労さん。今夜は宴会の予定だ、美味しそうな獲物を頼むよ」


そうだ、もともと森のお散歩の予定だったし、ランガと一緒について行ってみようかな、なんて考える。

「今日はリムル様も食べるっすか?」
「おうよ!この体には味覚があるからな!」
「いっぱい食べたらおっぱいも育つっすかね?」


なんて言い放ったゴブタがリムルさんに蹴り飛ばされた。

「では特上の牛鹿をご用意いたしましょう」
「おう、頼むな」
「お任せください。最近は森の奥から移動してくる魔獣が多いので獲物は豊富なんです」
『…?なにかあったの?』
「いえ、たまにですが環境の変化などで魔獣の移動がありますからね。大したことはないと思うのですが
警備体制は強化しております」

リムルさんがどこか視線を移して考え込んでいる様子だ。
そしてランガからヒョイと飛び降りてしまう。


「ランガ、ネージュと一緒に警備隊に同行してくれ。もしもの時は彼らを頼む」
「しかしリムル様お出かけなのでは…」
「いいよ、もうすぐそこだ」


警備目的なら私は邪魔じゃないかな。このまま1人で町に戻った方が…

「遠慮はいらぬわれを連れてゆけリグル殿。ネージュ様も必ずお守りする」

ランガがかっこよく言う。本当にかっこいい。けどリムルさんに頼み事をされたことがよっぽど嬉しかったのか尻尾がブンブンと揺れていた。巻き起された風で舞う髪を両手で押さえつけた。バシバシ当たって痛い。


「じゃあ俺は洞窟にいるから」
「あ!すみません忘れていました。森の巡回中に拾ったのですが。
リムル様がお持ちの方がよろしいかと…」


リムルさんが1人洞窟に向かおうとした時にリグルが懐からシズさんの仮面を取り出した。
森に落ちていたんだろう。それを手にしたリムルさんがとても優しい顔をしていた。


 
 


リムルさんと別れてから警備隊のみんなに周りを囲まれながら森を進んでいた。
リグルがどこかぴりぴりと周りを警戒しているのを感じていた。
私には、少しわからないけれど、強力な妖気を纏う魔物が近くにいるらしい。

やっぱり、私は町に戻った方がいいと思ったその時、周りにいた子たちがばたりと倒れ始めた。


「姫様!後ろへ!」


リグルの声にぐらりと意識が揺れた。
眠りの、魔法だろうか。周りの子達を眠らせたその魔法を私がリムルさんと共有している何かのスキルで対抗しているのかもしれない。
起きていられているのは警備隊長のリグル、私を乗せているランガ、ゴブタだけだった。
武器を構えるリグルとゴブタの前に角の生えた魔物…鬼…?が現れる。


『きゃあっ』
「姫!」


ふわりと抱き上げられた。
その人物を見上げれば青髪の褐色肌の青年だった。その額には一本のツノが生えている。


「魔物の中にどうして人間の女の子が…」
「大方攫われたのではないでしょうか」
「あとで人間の国へ返してさしあげましょう」


すっごい勘違いされてる!!
私を抱き上げたままに武器…刀だ日本刀…!を構える青髪の鬼に、桃色の髪の女の子が私をみて同情的な目を向けた…こちらは2本のツノが生えていた。
よくみてみればリグルたちと対峙する魔物たちはみんな額にツノを生やしていたし、装備は何処と無く日本っぽい。
そして私を抱き上げ続ける青年もなかなかイケメンだった。面食いとかいうな、誰だって綺麗なもの好きでしょ。


「姫様を返せ…!」


どうしよう、私のためにリグルたちが戦ってくれているのに、意識がぐらぐら揺れている。
眠りの魔法はこの桃髪の子の魔法なのかもしれない。
逃げ出さなきゃ、ランガのもとに戻って、この鬼の子達がどうして私たちに攻撃をして来たのかを、
リムルさんがいなくても、私が、



「ネージュ!!」
『り、むるさん』




普段とても優しい声なのに、切羽詰まったようなそんな声で名前を呼ばれたと思うと
意識が沈んだ。
 
 
 




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