と、なんだかんだあって。
シズさんの仮面を赤髪と桃髪のオーガに見てもらい、オーガの里を襲ったという魔人の仮面とは全くの別物だと知ってもらい…寝ていた連中も桃髪の子の魔法の解除で目が覚め出したのを見計らって木の下に寝かせていたネージュのそばに寄って声をかける。


「…あ、れリムルさん…?」
『よかった起きたか』


顔にかかった髪をはらってやるついでにまろい頬を撫でる。
オーガたちにも回復薬を渡し傷を治してもらったし、これでお互いさまだろう。
目覚めたばかりで目が開ききっていない様子のネージュの手を取って立ち上がってもらう。


『どこも痛いとことかないか?』
「え…うん。大丈夫だとおもう…」


キョトンとした様子で自信を見下ろすネージュに大丈夫だろう。と思いオーガたちを振り返る。

『よしじゃあ全員で街に戻るか』



+++



オーガの子たちにそろって「誤解とはいえ怖い思いをさせてしまってごめんね」
と頭を下げられてしまった。いや、誤解されてかわいそうだったのは悪者にされてしまった子達なので笑ってごまかした。
まあまさかお姫様抱っこされるとは思わなかったしびっくりはしたけど、青髪の青年、顔整ってたからまあいいか、なんて考えてたらリムルさんにすごい目で見られた。ごめんなさい、人並みに綺麗なものは好きなんです。
それに、彼らの事情を踏まえると、そんな中で見ず知らずの私を助けようとしてくれていたのだ。
気にしてくれなくて大丈夫だと
そう伝えれば目を丸くして笑ってくれた。

青髪の…とか言っているのもどうもこのオーガたち6人は名前がないらしく、やっぱり名前をつける文化のない魔物と会話するのはちょっと難しいんだなと思った。
呼びかける時とかどうしたらいいんだろう、なんて馬鹿なこと考えていた。

オーガのお客人が来たということで今日も今日とて宴だった。
魔物の子たち宴大好きすぎる。

「リムル様、ネージュ様どうぞ」

よく料理を担当してくれているゴブイチがお皿に串焼きを2本乗せて外に設置されたソファに座る私とリムルさんの前に差し出した。

「おう、ありがと」
『ありがとうございます』

お礼を言って一本ずつ手に取り、リムルさんが一口頬張るのを眺めてみる。
人間に擬態した今、味覚があるらしいリムルさんはどんな反応をするのかちょっと気になる。
もぐもぐと咀嚼しごくんと飲み込まれる。
…そういえば中身も人間みたいになっているんだろうか…。
なんて考えていたらリムルさんの体がぷるぷると震えて


「うんっっまぁぁい」


どうしよう可愛い。
満面の笑みに私までにやけてしまうのがわかった。
シズさんの姿に似たリムルさんの容姿はものすごく整っている。
顔がいい人は目の保養。

リムルさんの反応に周りで固唾を飲んでいたゴブリンたちが大喜びした。

その後お肉を一通りいただいた後、桃髪のオーガの巫女さんとお話に花を咲かせたり、
紫髪の女の子と一緒に焚き火を囲んで見よう見まねで踊ってみたり歌ってみたりと楽しく過ごした。

だからこそ、オーガたちの話を聞いた時に言葉を失った。


本来オーガ、大鬼族はこのジュラの大森林では無類の強さを誇る戦闘部族だったという。
そんな彼らの村が武装したオーク…豚頭族に襲撃され蹂躙され、今いる6名だけで逃げ延びてきたと。
オーガとオークじゃ強さの格が違う、と他の子達は言う。
格下のオークが彼らに仕掛けること自体ありえない、さらに村を滅ぼされたなど…と異常さが見える事件ということらしい。

_いまは気丈に振る舞っているけれど、一緒にお話をしてくれた桃髪の子も、一緒に踊ってくれた紫髪の子も、

ここで、私が泣いたらダメだ。
もっと辛いのは彼女たちなんだから。


不意に先ほどまでお肉を堪能していたリムルさんがこちらにやって来て手を柔く引かれて焚き火を囲んで踊っていた輪から連れ出される。
広間の端でお話をしていた赤髪のオーガとお話をしていたカイジンたちに割って入っていく。


「肉はもういいのか?リムル殿」
「ちょっと食休み」


つまりまだ食べるつもりんなんだ…。

「で、お前らこれからどうすんの?」
「どう、とは?」
「今後の方針だよ。再起を図るにせよ、他の地に移り住むにせよ
仲間の命運はお前の采配に掛かってるんだろ?」
「…知れたこと。力を蓄え再度挑むまで」
「当てはあるのか?」

流れるように進んでいた会話が途切れた。
つまりノープランと…。

リムルさんが隣でふむ、と頷く。


「提案なんだけどさ、お前たち全員 俺の部下になる気はあるか?」


まあ…。リムルさんによる魔物への名付けで進化すればオーガたちで雪辱を晴らすこともできそうだけど。
あれ、そういえばなんで私リムルさんのそばにいるんだろう。別にこの話に私はいらなくないかな。なんて考えていたら強く手を引かれた。


「しかしそれではこの町を俺たちの復讐に巻き込むことに…」
「まあ別に俺たちの為だけってわけじゃない。
数千の、しかも武装したオークが攻めて来たんだって?そりゃどう考えても異常自体だ。この町だって決して安全とはいえないだろうな。
俺には守りたい子もいる。」



赤髪の子とリムルさんの目が私に向いた。
ま、守りたい子か…リムルさんはシズさんとの一件以来すごーくストレートに物を言ってくるようになってしまったので
たまにどういう顔をしていいのかわからなくなる。
前にそうリムルさんに伝えたら「ネージュもだいぶ感情豊かになったよな」なんて返された。


「そんなわけで戦力は多い方がこちらとしても都合がいい」


赤髪の子はその場で結論を出さなかった。
本当なら今すぐ仇を打ちたいはずだ。それでも今ここで断ることをしないのは己の不甲斐なさを飲み込んで、一族の頭として判断を間違えない為。


けれど、後にその赤に違わぬ”ベニマル”の名を名乗ることになった。
ベニマルの妹だという桃色の髪の女の子は”シュナ”
一緒に踊ってくれた紫髪の女の子は”シオン”
青髪の整った顔をした子は”ソウエイ”
白髪のリムルさんの腕を飛ばした方が”ハクロウ”
黒髪の体の大きい方は”クロベエ”


と今回は色にちなんだ名付けになったのだった。
やっぱりリムルさんネームセンスある気がする。

オーガの子たちは”鬼人”へと進化を果たし、リムルさんはたった6人の名付けにも関わらずスリープモードに移行してしまった。
それはつまり6人に魔素を使い込んだっていうことで…とんでもない進化をしたのかも知れない。

 


 




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -