はじまりは一人の村娘だった


”隠された吸血鬼”としてジェヴォーダンで生まれ育った彼女は
ある日、村の神父にその秘密を知られてしまう

どんな弁明も受け入れられなかった
ナイフを突き立てられる直前。彼女はとっさにこう叫ぶ


「私を殺したら他の吸血鬼が必ずあなたを殺しに来る」



その苦し紛れの脅しが

ジェヴォーダンの獣事件の引き金となった


”ジェヴォーダンの地は
吸血鬼によって汚されている”



人間と吸血鬼の間に和平が取りなされて70年近く
いまだに吸血鬼を憎むものは多く、それは地方になればなるほど顕著だった

神父よりことの顛末を報告された司教は独自に調査へと乗り出す

土着信仰が色濃く残り
”教会”の分派も多く存在する宗教的不安定な場所であったことも事件の要因の1つだったのだろうか
使命感に駆られた信徒たちの行動は次第に苛烈さを増していき


やがてそれは吸血鬼狩りへと姿を変えていった



狩れ
  狩れ

 狩れ   狩れ


吸血鬼を狩り尽くせ



まずは女
新たな吸血鬼を産み落とす前に

次は子供
悍ましい化け物へと育ちきる前に

最後には男
その血を持って吸血鬼に落ちた罪を償わせるために


我らの地に安寧を哀れな異端者に救済を




「”獣”?」
「粛清現場の近くで狼に似た化物を見た者がいるらしく騒ぎになっています」
「おそらく死体を野獣が喰らいに来たのだと思われますが…」
「…丁度いい。それを利用させてもらおう」



本来なら既に禁じられている吸血鬼狩りに手を出すことなど許されない

故に

”代行者”が必要だ


異端者を屠る”獣”の牙は
神の怒り


「神は人間の罪を罰するために”獣”を遣わされた」


「これは天罰であり
全ては神の思し召しである!!」





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