CHAPTER 01

When in Rome, do as the Romans.

 後日改めて呼ばれた事務所には見慣れた顔、見慣れない顔が揃っていた。ルナリアは凝視されていることをもろともせずに久々にまともに顔を見た上司たちに挨拶をする。「一体、君ってやつは!」と冷血漢からお説教をもらうのを忘れない。牙狩りは勿論、わざとライブラからの連絡も無視すると決まって最初はお小言から始まる。これが全く嫌な気分になるというのに。



「それくらいでいいかね、スティーブン」

「クラーウス、毎回ちゃんと言わなきゃ次は十年顔を出さないぞ」

「そんなことありませーん」

「じゃあこの三年はなんで来なかった!」

「あ、あのー…」



 控えめに泣き虫糸目少年。以下、レオナルドが声をかけてくると、怒る気が失せたのか溜息をついて「もういいよ、君の顔が見れればね」と折れる冷血漢。以下スティーブン。を、なだめる三白眼の巨体。以下クラウスは改めてみんなに向き合う。

 中にはあのホワイトとブラックもいて、目があうと二人とも嬉しそうに小さく揃って手を振ってくれる。それが可愛くてルナリアも小さく広角をあげた。



「今いるメンバーだとK.K以外は初めて顔を合わせると思う。紹介しよう、彼女はルナリア・グリムワール・アンブローズだ。俺たちと同じくらい古株だから………先輩になるのか。一応」

「一応は余計ね、冷血漢スティーブン!」

「ア、アンブローズって、”大魔導士マーリン”の、っスか!?それがマジなら神話級の最上位存在だぜこりゃ…」

「あら、今時の猿にしてはよく知ってるのね。関心関心」
 
「えっと、すごい人っていうのは分かったっスけど…」


 
 ムカッとした表情をした銀猿を華麗に無視したルナリアにレオナルドは苦笑いをしながら理解が追いつかないと言うと、スティーブンは「彼女は言うなれば御伽噺おとぎばなしが具現化したような存在でね、僕らも古い知り合いだが知ってる事と言えば彼女の口は最高に悪いということ」


 
 そう言われてしまえば後はレオナルドが分かるのは”ホワイトの体を修復した凄い術士”ということのみ。掌で軽く撫でただけで、世界を一転させたと言っても過言ではない彼女の御業は、その日のMVPだったレオナルド・ウォッチを軽くジャブで吹っ飛ばしWBC世界チャンピオン!優勝間違いなし!ってなインパクトを残した感じだった。


  
「インモー頭のような普通の人間ヒューマーが存在を認識出来てるだけでもあり得ないんだぜェ」
 
「その下の毛を統べるようなあだ名やめい!!」

「”大魔導士マーリン”とは我が偉大なる祖であり、世界最高の魔導士で、私はその孫の孫の孫にあたる直系なの」
 
「ブラックやホワイトたちみたいな術者と呼ばれている人たちとは違うんですか?」
 
「術者とは所謂サイキック。霊能力とか、超能力を持つ人のこと指す言葉ね。魔導士はマジック。魔力を操る人のことを指すの。私は後者の方」



 いつのまにか、クラウスの有能老執事ギルベルトが紅茶を用意していた。ルナリアは自己紹介をしながら透き通った硝子のティーカップを受け取り、立ちっぱなしだったが香りを楽しむ仕草をする。その美しい所作は流れるように優雅であり、大したことをしてはいないのに目を引いてしまう、ルナリアクオリティは絶大である。



「彼女のことは追い追い分かってくることだろう。まだ紹介が残っているので良いだろうか」
 
LHOSレオスに所属することになりました!ウィリアム・マクベスです!」
 
「双子の妹さんである、メアリ・マクベス嬢はルナリアの魔術により人型の結界として存在している状態だ。それにより、この二人をLHOSとライブラの重要保護対象に定める。少年、よーく守ってやれよ」
 
「あ、は、はい!」
 
「レオっち、上手くやるのよー!」
 
「あーあー、しばらくは姐さんのオモチャだね、頑張れレオー」



 ゴシップ担当と言っても過言ではないくらいにこの手の話にウキウキしているK.Kに目をつけられたレオナルドに、チェインは不憫なものを見る目を向ける。一方で双子は嬉しそうにルナリアに駆け寄り全力でお礼を言う。その光景はまるで姉を慕うようで心が温かくなるようだった。



「あー!じゃあ今度女子会しましょうよ!可愛い女の子たちに囲まれて夜を過ごしたいわぁ」
 
「グッジョブ姐さん!ルナリアさんとメアリちゃんも!」
 
「喜んで!ルナリアさんももちろん参加しますよね?」



 キラキラとした顔が良い女性たちにズイズイと迫られる勢いに驚く。「もちろんYESでしょう?」と副音声が聴こえて来そうで思わず目を大きく見開くと、クラウスとスティーブンは「これは貴重なものを見たかもしれない」とでもいいたげな表情をするのをルナリアが見逃すはずもなく、それでもジッと見つめられる目線に少し恥ずかしくなったのとイラッとしたのが混ざってしまい、勢いよく「いくわ!」と返事をしたのであった。














(頬が染まったのは五十年ぶりだった)

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -