04

「んで、なんでお前も入るんだよ」

「裸の付き合いも大事だぞ!」



あの後、勢いよく手を振り落とされた美形カチューシャの人は「着替えを取ってくるから待ってろ!すぐ戻ってくるからな!」と大声で喋りながら去ると、兄は「さっさと入ろう」と速足で脱衣所に向かった。本当に急いで戻ってきたのか、服をすべて脱いで中に入る手前で入口から「待てと言ったのに!」と聞こえて兄は小さく舌打ちをした。



「では改めて、俺は東堂尽八だ。箱根学園3年、よろしくな」

「ま、巻島ユウマです。今年から聖星学園に入学しまス…」

「ほう、聖星学園とは…ユウマくんもロードに乗ってるのかね?」

「東堂、名前呼びすんなっショ」

「いいだろ!別に!」



聖星学園はロードの有名な選手を多数輩出している有名校であるし、あの頂上の蜘蛛男と名高い巻島裕介の弟ということもあり、ユウマがロードバイクに乗っているのは想像に容易かったのだろう。

東堂は「俺はこの巻島裕介とは生涯のライバルでな!」と武勇伝を語りだす。裕介は「黙るっショ!ユウマ耳ふさげ!」とユウマを引き寄せ耳を両手で塞いであげようとする。が、それをすぐに東堂が阻止する。



「巻ちゃんとは後でたっぷり話そうではないか、今はユウマくんと親睦を深めるため友情のメモリーを…」

「だから名前呼びにすんなっショ!あと語るなキモい!」

「キモくはないな!!」

「えっ、と…」



右から兄、自分、東堂さんと間に挟まれながら交互に飛び交う口論を困った顔で眺める。「呼び方はなんでもいいヨ」と言う雰囲気ではない。

だんだん口論が過激になっていく様を止めることができず結局東堂さんが「それなら、ユウマくん呼びの権利をかけてロードで勝負だ!」と言い始め、兄は「やっぱりそれしか決着をつけるほかないっショ!」とやる気を出し始める始末。大衆浴場で張る声の大きさを超えていたので本当に貸し切りでよかったと心底思った。



「ふふん…!登れる上にトークも切れる!さらにこの美形!天はオレに三物を与えた!山神の名に恥じぬ戦いをユウマくんに約束しようではないか!」

「お前みたいなチャラチャラしたやつにユウマは汚させねぇっショ!」

「チャラチャラではないな…!」



たかが”名前の呼び捨て”の権利をかけてロードで勝負なんて正直馬鹿げている。当人は軽くため息をつき、言い合いが止まない2人の前にそっと控えめに右手をあげる。嘘のようにぴたっと止まりユウマに顔ごと向ける。

そして爆弾投下。





「俺も参加するかラ」










(俺が勝ったら俺が決めるからネ)
((望むところだ!!))
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