02
青髪の男の子は悔しがるより、楽しそうに笑う。
ユウマはボトルを一つ取ると、男の子に渡す。大人しく受け取ると息継ぎもせずにゴクゴク喉を鳴らしている。何かのCMと勘違いするほど爽やかである。清々しい山頂と景色に、笑顔が素敵な好青年。イイ絵というのはこういうのを言うんだろうなと納得する。
「ありがと、はぁ。スッキリした!」
「っスね」
「こんなに強い人割と初めてでさ、あ、オレ真波山岳!」
「…巻島ユウマ」
「オレ今年から箱根学園に入学するんだ、だから1年生」と言われ、ユウマも今年の春から高校1年生だということを告げる。同い年だと知ると目をきらきらさせながら喜ぶ真波にたじろいでしまう。こういうタイプの人間はユウマにとって初めてであった為、久しぶりに言葉を選んだり探したりするのに頭を使う。
「ユウマくん東京の学校に行くんだ。じゃあいつでも会えるね!」
「い、いつでもは分からないけド…」
「いつでも、だよ!オレとまた勝負してよ!」
「ま、時間が合えば考えるっショ」
顔を背けるように言うユウマに「じゃあRINE教えて!」とスマホを出して催促する真波。ため息をつきながら頷くと子供のようにはしゃいでしがみ付いてくる。スキンシップをする性格ではないので遠慮がちに剥がす。少し頬が膨れているのは見なかったことにした。
「あっ、やっべ。委員長からすごいメッセきてる…」
「…電源は常につけとけヨ」
「えへへ、急いで帰らなきゃ。約束、忘れないでね」
「わかったから早く行くっショ」
ロードにまたがり大声で「絶対だよー!」と叫びながら手を振る真波に小さく手を挙げると、あっという間にいなくなってしまった。あぁ本当に嵐のような時間だったとユウマも下り道で箱根温泉に戻るのであった。
(今日はいい日だったなー)