12月の半ば。
冬ともなると日は短くなり、17時にさしかかる頃には辺りはすっかり暗くなっている。

私は待ち合わせ場所である公園のベンチに座りながら、ぼうっと視線を空に向けた。

…ついこの間まで、秋だったと思ったのに。


夏を終えて、秋を迎えて。
乾燥した空気を肌に感じて、ああ秋が来たんだなあと思っていたら、あっという間に冬が来て。

こうやって季節は次々巡っていき、気づけばどんどん歳を重ねていくのだろう。まだ高校生の身ながら、そんなふうに感じている自分がいる。


「悪ィ、お待たせ」


不意に視界に映った、和谷君の姿。
白いセーターに薄茶色のコートを羽織っていて、首元にはマフラーが巻かれていた。


「コレ買ってきた。寒い中待たせてゴメンな」
「わ、ありがと」


そう言って彼から受け取ったのは、ホットココア。冷えた両手に缶の温度がじわりと広がって心地いい。和谷君は隣に座ると、自身のマフラーを外してふわりと私の首に巻いてくれた。マフラーから和谷君の体温と匂いがほのかに伝わってきて、私は思わず頬が緩んだ。


「…あったかい」
「だろ?」


そう言って目を細める。
私を映すその瞳はどこまでも優しくて、私の胸の奥は彼への愛しさできゅんと疼いた。


「寒ィのに、どっか店とか入らなくていいのか?」
「ん、いーの」
「?」


疑問符を浮かべて和谷君がこちらを見ている。
確かに、外で過ごすには冷える。けれどどこかのお店に入ってしまうと、人目が気になって思うように彼に触れられない。だから今日は外で過ごそうと、私から持ちかけたのだ。


「…和谷君」
「ん?」


軽く辺りを見回して、人気が無いことを確認する。
私は身体を傾けて、彼にそっと寄りかかった。すぐ近くで和谷君が微笑む気配。彼は私の肩に腕を回して、少し力を込めてくれた。


「お名前」


名前を呼ばれて顔を上げる。
和谷君の手のひらが私の頬を包み込んだかと思うと、彼の顔が近づいてきて、唇同士が重なった。

冷気に触れて少し冷えた彼の指先と、唇が重なった部分の温もりの温度差が、なんだかとても不思議に感じられる。

唇が離れたのを感じてうっすらと目を開くと、和谷君の顔はまだすぐ近くにあって。こつん、とおでこ同士が触れ合った。


「…冷たいな」
「うん」


おでこをくっつけたまま、お互いにふふっと微笑みを零す。辺りに満ちた冷えた空気まで愛おしく思えるような、そんな気さえした。



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