「『善吉ちゃん、生徒会長就任おめでとう。僕は心から祝っているよ』」
任命式を終えた善吉ちゃんを、そう労った。隣には大刀洗さんもいるから、下手なことは言えない。

「……ありがとう、ございます」
善吉ちゃんは訝しげな目で僕を見ている。まぁ、当たり前だろう。選挙前にあんなこと言った僕だからね。

「『括弧つけてもこの気持ちは嘘じゃないぜ。ほんと、おめでとう。で――頑張ってね』」
「?」
「『勿論、生徒会長の仕事もだけど、めだかちゃんについてもだから。タイミングを見計らいすぎて変なことにならないようにね』」
これは、優しい先輩としての忠告だよ。

そう告げると、善吉ちゃんは神妙な顔で頷いた。

「『あとそうそう――僕は諦めないぜ』」
「……何をですか」
善吉ちゃんは条件反射のように質問をする。

「『僕は好きな人は最後まで諦めない性質だからね――最後に幸せになって笑うのは、僕だ』」


精々無駄な努力を続けてね――そう笑えば、彼も不敵に笑う。
「負けねぇよ球磨川」

うん、それでいいよ。そうやって、誤解したままでいい。
最後に笑うのは、君だし、僕であればいい。僕も君を見習って、タイミングを計ってみるからさ。次は、ちゃんと善吉ちゃんに、好きっていうよ。







「結局〜〜〜〜〜現実を受け入れるの〜〜〜〜それとも受け入れないの〜〜〜〜〜〜〜〜?」
「『うーん、なんていうか中途半端に生きてみようかなぁって。いつも極端な生き方ばかりしてたからね』」
「ふぅ〜〜〜〜〜ん」
「『受け入れた上で、変えていくってことも重要なんじゃないかと思うんだよ』」
「へぇ〜〜〜〜〜〜大人になったね球磨川先輩〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「『……ありがとう大刀洗さん。君にそう言ってもらえると嬉しいね』」
「あんな風に〜〜〜〜宣戦布告しちゃって〜〜〜〜〜括弧つけてるよね〜〜〜〜〜〜」
「『あーはいはい』」
「でも〜〜〜〜格好いいからいいと思うよ〜〜〜〜いつか〜〜〜〜〜〜報われる時がくるよ〜〜〜〜いつだって、」


「諦めない奴だけが報われる。」



大刀洗さんはそう笑って、ゴロンと寝返りを打った。

「空想やバーチャルに〜〜〜〜〜〜〜囚われるほうが〜〜〜楽しかったのにねぇ〜〜〜〜〜〜〜」
「いいね〜〜〜〜〜〜〜〜挑戦者だね〜〜〜〜〜応援したくなっちゃうねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜」

「『どうせ負ける……とはもう思わないけど、敗色濃厚な試合ではあるかな』」
「〜〜〜〜〜〜♪」



そう――諦めない奴が報われる。必ずしも報われるわけじゃないけれど、諦めた奴は可能性が0%なんだ。っていうか、僕が諦めたら僕が潰した仮想世界の善吉ちゃんが、それこそほんとに、報われない。

だから――負けないよ善吉ちゃん。

君の気持ちに勝ってみせるから――そのときまで、勝負しようか。


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